一つの処方箋で「万病」を治すことはできない
抑制政策で合理性を取り戻す不動産市場

終わったばかりの「国慶節」の長期休暇中も、各地の不動産市場の熱は収まらず、中国指数研究院が発表したレポートによると、全国100都市の9月の(新築)住宅平均価格の対前月比は8月より1.07%上昇した。専門家は「調整政策の相対的な安定、変わらない通貨政策の基調、土地市場の緩やかな上昇傾向、都市化進捗度合いの加速などの効果が相まった状況の下で、住宅価格は安定を保ちながら上昇する傾向にある。現状、不動産市場の調整は一定の成果を上げており、市場を長期にわたって抑制する効果的なメカニズムの研究、制定を急ぐべき」としている。

 

不動産市場の価格は引き続き上昇

中国指数研究院の黄瑜副院長は「北京を例にとると、全市の住宅取引量は9月末までですでに2012年通年の取引量を超過しています」として「『銀十(注)』のピーク時には不動産市場は引き続き加熱します」と語っている。

上海易居不動産研究院の楊旭副院長は「2012年の下半期以降、不動産市場は引き続き上向いており、2013年はすでに『価格高騰傾向』になっています」として「最近で言えば、土地市場がホットなことで、住宅価格上昇に対する人々の強気な見通しが明らかに増しています。該当するモニタリングデータによると、9月は全国十大都市(北京、上海、天津、重慶、瀋陽、広州、南京、武漢、成都、西安)の土地譲渡金額が8月より対前月比79%と大幅に上昇し、対前年9月比では199%と暴騰しています」と指摘している。

これに対して『中原地産市場研究』の張大偉ディレクターは「北京では下半期に、住宅の販売価格の上限を制限して土地の譲渡価格を競わせる土地と住宅がセットの物件を今後は毎年2万件程度供給する政策が執行されます。さらに第4四半期にはそれ以外の長期的な効果が期待できるメカニズムも徐々に導入される可能性があります。これが市場に与える影響は非常に大きく、徐々に住宅価格の上昇幅を抑制することが期待できます」と語っている。

 

抑制政策には一定の効果

アナリストは、不動産抑制政策は一定の効果を上げていると分析している。中国指数研究院が発表した最新の100都市の住宅価格指数レポートによると、2013年9月、全国100都市の(新築)住宅の平均価格は1㎡当たり1万554元(約16万9100円)で、対前月比1.07%上昇した。注意すべきは、その内79都市では対前月比が上昇したが、その他の21都市では対前月比が8月を下回ったことだ。

専門家は「農村人口のますます多くが都市へと流れ、住宅などに対するニーズが急増しています。とりわけ北京、上海、広東などの一線都市では教育、医療、雇用などの質の高いリソースが過度に集中しているため、人が多く土地が少ない、供給が需要に追いつかず、住宅価格の上昇を避けられないものにしています。ところが、統計上の手法や範囲の問題で、多くの三、四線都市の住宅価格データが発表されていないため、全国の不動産市場が押しなべて上昇しているという誤った印象になっています」としている。

中華全国工商聯合会不動産商会の聶梅生会長は「2013年の不動産市場はすでに市場志向の合理的な状態に戻っており、不動産業と実体経済、それに個人の平均収入は歩調を合わせて上昇しています。これは正常かつ合理的な局面で、経済のファンダメンタルズを逸脱した住宅価格上昇は正常ではありません」として「2013年は住宅価格の市場志向が一段と強まり、異なった都市で住宅価格の上昇と下落が同時に存在し、全体的には対前年上昇幅も鈍化して、住宅価格は合理性を取り戻し、市場化の効果が徐々に業界による介入に取って代わって来ています」と語っている。

 

抑制政策――

見せかけではなく明確なものに

一線都市と二、三線都市の価格上昇の勢いが分かれていること、特に北京、上海、広東などの都市の新築住宅価格の対前年上昇幅が比較的大きい現象について、専門家は「これは抑制政策に対する一線都市の強い『抵抗感』を暗示しており、従来の『画一的』な抑制も時とともに進歩することが必要です。1つの処方箋で万病を治そうとしてはならず、地域ごとに症状に応じた処方を施して、より厳格に執行するという前提で政策の適格性、柔軟性を強化するべきです」としている。

金融コメンテーターの馬光遠氏は「2013年は住宅価格全体の上昇は多少大きいと言えますが、今のところ市場全体の見通しは比較的安定しています」として「庶民が今、最も恐れているのは見せかけの抑制です。それは一面では行政にとっても不利に働き、別の一面では行政による抑制自体によって長期に渡って効果的なメカニズムの構築が遅れることです。見せかけの抑制は政策の信頼性を損なうだけでなく、不動産全体に対する正確な問題提起を損ないます。ですから、政策は必ず明確なものでなければなりません」と語っている。

専門家は「現在住宅価格の上昇ムードを加熱させている要素の内で、抑制政策は重要な役割を演じています。政府部門は意思疎通と協調を強化し、土地、金融、税収等の体制メカニズムから手を着け、不動産抑制にとって長期にわたって効果的なメカニズムの研究、制定にしっかりと取り組み、不動産市場に対する行政による抑制の色合いをさらに弱めて、市場の主導作用を強化するべきです」としている。

(注)銀十:「金九銀十」と称され、秋に入った9月、10月は人びとの消費心理が高まるとされ、各業界にとって年に一度のかきいれ時とされる。特に不動産業界では通常の月よりも多くの物件が取引される。