コスト高と低価格、加えて中国と米国の地質は違う?
米国シェール・ガスへの投資は無駄骨か

先日、中国石油化工股?有限公司(シノペック)は、米国第2の天然ガス生産会社大手チェサピーク・エナジー(Chesapeake Energy Corporation)が保有する、オクラホマ州北部ミシシッピのシェール・オイル、シェール・ガス資源の50%の権益買収を完了したと発表した。しかし、「現在、米国のガス価格は安く、シェール・ガス産出量の安定を保つために大量に資金を投入しても、その投資に見合う見返りを得るのは難しい」と専門家は話している。

  

国際オイル・ガス産業に徐々に参画

7月初め、中国・米国の両国は戦略的経済対話を行ったが、シェール・ガス領域において双方が協力を強化することが、今回の対話の主な成果の1つとなった。対話が終わって間もなく、シノペックは上記の買収を発表した。

中国企業で最も早く米国のシェール・ガスに投資をしたのは中国海洋石油総公司(中海油)である。中海油は16億5000万ドル(約1645億円)の資金を拠出して、2010年以来手がけてきた、米国のシェール・オイルとシェール・ガス事業の買収を終えた。

2012年2月までで、中国の石油会社が米国のシェール・ガスに投資した金額は38億5000万ドル(約3840億円)に達した。そして、今回のシノペックの新たな投資で、中国石油企業の米国でのシェール・ガスへの投資額は50億ドル(約5000億円)に達するだろうと予想されている。

「中国のエネルギーの対外依存度が大きくなるにつれ、中国は段階的に国際的オイル・ガス産業への参画が必要になっている。そして、それによって資源を確保し、国内のエネルギー供給と安全性を保障していく必要がある」。

中国石油大学の劉毅軍教授はこのように語り、「中国のシェール・ガス開発は、まだ着手したばかりで、関連システムの技術・管理経験・資源に対する知識と理解が不足しており、国内の石油会社は実践の中で経験を積んでいく必要がある」と述べた。

 

コスト高、価格安で企業の利益は少ない

劉氏は、「低レベルで運用されるガス価格が、米国のシェール・ガスへの投資企業の利潤を圧縮している」と指摘する。データによると、2012年、米国のシェール・ガス産出量は2300億?に達し、天然ガスの総産出量は7000億?に達した。しかし、2012年、米国ヘンリーハブ(Henry Hub)の天然ガスのスポット価格は平均千立方フィート当たり2.74米ドル(約273円)で、2011年比で31%下降した。

アナリストによると、「十分な天然ガスが米国経済の発展にチャンスをもたらした。低価格の天然ガスは工業原料として、米国の製造業にコストでの優位性をもたらし、大量の欧州企業の米国への投資を誘導し、米国に雇用機会を作り出した」。

環境保護の拡大も、シェール・ガスの生産コストを増やす。業界関係者は、こう指摘する。「シェール・ガス開発によって表沙汰になった環境汚染と水資源不足の問題が日増しに深刻化していることから、米国政府はシェール・ガス産業に対して、取り締まりを徐々に強化しており、これが、企業の運営コストをさらに上げることになるだろう」。

 

場所に応じた措置で資金を有効に使う

専門家によると、「目下、米国のシェール・ガス産業が直面する問題点は、以下の2点だ。1つは、低迷するガス価格が米国経済の運営に多くの利点をもたらしてきたので、政府は天然ガス価格を上昇させる内在的な原動力を高めてこなかった。もう1つは、シェール・ガス産出量を安定的に増加させるためには、シェール・ガス産業領域への追加的な投資の必要性が差し迫っている。それには、米国政府や在米のシェール・ガス投資企業が、外資誘致を利用した資金源を追求し、『圏銭(上場企業が投資家の利益を顧みず株式発行などの手段により資本調達をすること)』を通して投資のリスクを減らすことも除外しない」、とのことだ。

さらに深刻な問題は、米国から持ちかえった経験が中国の地質状況に適切であるとは限らないことだ。中国石油大学の王尚旭教授は、「米国は地質的条件がよい。しかし、中国の地質は非常に複雑なうえ、技術や設備も不十分であり、事前に調査資金を大量に投入する必要がある」と考える。

専門家は、「シェール・ガス投資では、肝心なところで資金を使う必要がある。中国国内でいえば、シェール・ガス資源に対して、まだ、資金と技術投入の必要が差し迫っているというはっきりとした認識がないことが問題だ」と指摘している。