「水増し」された重複統計で中央と地方の数字が一致せず
地方の虚偽報告がマクロ政策決定を誤らせる

最近、中央と地方の国内総生産値(GDP)統計の結果が続々と公表されているが、双方の数字はまたもや一致せず、専門家は、地方の統計には統計数字の重複と水増し現象があると指摘している。「水分」が混ざったGDP数値はマクロ政策決定を著しく妨げ、経済発展に悪影響をもたらしている。

 

合わない中央と地方のデータ

現在、青海省を除く全国30の省が2013年上半期の経済データを発表している。数値の高い順に21位までの省が発表したGDPデータの合計は25兆2823億6000万元(約395兆8700億円)で、国家統計局が発表した全国合計24兆8009億2000万元(約389兆7200億円)を上回っており、もし30省すべてのGDP数値を加えると、全国の総額を3兆1630億2000万元(約49兆5300億円)も超過している。

中央と地方のGDPが「衝突」するのはもはや珍しいことではない。1985年以降、国と地方が別々にGDPを算出するようになってから、地方の統計総額は一貫して国家統計を上回っている。例えば2009年には、各省のGDP合計は全国総額を2兆6800億元(約44兆7800億円)多く、2012年には5兆7600億元(約90兆1900億円)も多かった。

これについて、シティバンクの瀋明高グレーターチャイナエリア・チーフエコノミストは「データが一致しない理由は一部の地方政府が統計を重複させ『水増し』しているためだ」として「3兆元(約46兆9700億円)という差は基本的に過去の2%前後の正常な範囲内であり、国家統計局のデータも、地方の水増し部分をある程度是正したものだと言えます。国家統計局のデータは水増し分と統計の重複部分を搾り出したものです」としている。

統計に存在する「水増し」の問題に対して、国家統計局、監察部、司法部はかつて共同で国家統計検証を行い、一部の地方政府が企業の統計データに介入していた事実を暴露した。2012年の2月18日から、全国70万社に上る「三上」企業(主要業務の年間売上額が2000万元〈3億1300万円〉以上の工業企業、資本金、純資産、売上高などが一定規模以上の建設企業および年間売上高、従業員数等などが一定規模以上の貿易業、卸売業)と不動産開発経営企業はインターネットを通じて国家データセンターあるいは国家が認定した省レベルのデータセンターに直接統計データを送るようになっている。

 

なぜデータが一致しないのか

中央と地方のGDP統計データが一致しないのには技術的な理由のほか、地方政府の指導者が政治的業績を求めるために統計に介入するという要因もある。

専門家の説明によると、まず統計の方法や採用するデータの範囲が異なっている。国家レベルの統計サンプリングシステムは相対的に独立しており、比較的客観的だ。さらに、地方が算出するサンプルは生産段階の最終製品価格に基づいて計算され、商品が地域を越えて流通することで、ある地域での最終製品が別の地域では中間製品となり、そのためにGDPでも一部の地方のデータが全体を上回る状態を生むのであって、こうした差異は合理的な範囲内だ。

人為的な面で見ると、各地で役人の業績をGDPで評価することが主流になっていることが一部の地方政府や部門が改ざん、水増し、架空形状などの手段を講じてGDPを膨らまさざるを得ない状態を生んでいる。以前、ある地方の企業がその年度の生産がまだ始まってもいないのに、地元政府から課されたノルマのために、すでに生産高が確定していたと報道されたことがあった。他にも、現場の統計担当者は、「自分たちが本当のことを言う訳にも、言わない訳にもいかず、その数字が信頼に足るもので、実態に近いものだということを説明する理由を探して、できるだけ実態に近づけようとすることしかできないのだ」と漏らしている。

交通銀行の唐建偉上級アナリストは「政治業績に対する評価などの局部的な利益から出発することが、報告数字の誇張という衝動につながるのです」と語る。

 

改ざんをいかに解決するか

実際の状況にそぐわないGDPデータが表に出ることの悪影響は甚大だ。中国国際経済交流センターの王軍氏は「GDPデータは国家の経済政策策定の重要な参考指標です。もし地方のデータに水増しがあれば、経済政策決定の際に一定の障害となります。ある地域の経済成長の伸びが緩慢な場合、当然通貨政策を緩めるべきですが、統計データ上のGDPの成長率が高ければ政府の通貨緊縮政策を招くことになり、地方経済にとっては悪影響をもたらします」としている。

中国国際交流センターの徐洪才情報部部長は「『初めは僅かな差でも、終わりには大変な差となる』という諺がありますが、統計データが経済のファンダメンタルを反映できなければマクロ政策を誤ります」と語っている。

ある専門家は「もしマクロ政策を決定する層の人々がこの虚偽のデータを採用すれば、当然経済は安定的に回復するだろうと判断し、それに基づく経済政策もこの誤った判断を基準とすることで、誤った政策決定が生まれ、今後の経済発展に対する悪影響は甚大です」と指摘している。

統計データの改ざん問題をいかに解決するか? 徐洪才部長は「政策決定の際にはまず、さまざまな経済変数を総合的に考慮し、統計方法を改良することが必要です。その次には故意の改ざんに対して厳罰で臨むことです」と語っている。