上場の詐欺が常態化 監督管理も効果なし
軽罰では、ねつ造容認と同じこと

証券監督管理委員会が新株発行体制改革公開草案を公布して1カ月、正式な規則で株式のねつ造行為を厳罰化せよという市場の声が日々高まっている。監督管理を強化するとしても、市場ではねつ造に対する懲罰はまだ足りないというのが一般的認識である。特に、証券監督管理委員会が万福生科社の株式上場詐欺事件に対して下した処罰が軽すぎるとしている。平安証券はこの事件で3カ月の推薦資格停止、推薦人は罰金30万元(約487万円)にとどまった。ねつ造への軽い処罰は隔靴掻痒で効果がなく、安すぎる罰金は上場企業ねつ造の常態化を容認するだけである。証券犯罪に対する法律上の懲罰を強化することが必要である。

 

 

ねつ造は株式市場の病

緑大地ねつ造事件から今回の万福生科の詐欺事件まで、財務諸表の偽造から「病気を抱えて」の新株公開まで、ねつ造の風潮はこれまでに中国株式市場の各分野に浸透している。次々に発生するねつ造事件は、すでに投資者の利益を深く侵害しているし、A株市場が現在世界でも最もふるわない市場となっている原因の1つでもある。

「ねつ造は個別の案件ではない」と証券監督管理委員会の姚剛副主席は指摘する。「財務監査にかかわる900社近い企業のうち、監査終了した269社から任意で30社を抽出したが、すべて程度の差はあれ問題があった。これは現在の情報公開の質が憂うべきレベルであることを示している。財務監査の真実性という問題を解決しなければ、その他の分野の改革など話にならない」。

「30社の任意抽出された企業に多かれ少なかれ問題があったということは、残りの600以上の企業はどうなるのか。抽出した企業が100%近いねつ造を行っているという状況はお寒い限りだ」と、財経評論家の葉壇氏は言う。深刻なねつ造は万福生科や緑大地の比ではない。ある企業は少数の個人名義の銀行口座を調整し、企業の自己資金と個人の口座の間での振り替えを利用して、見せかけの収入を増やし、利益を水増ししていた。またある企業では、銀行の証書を偽造し、1300枚以上、累計金額14億元(約227億円)に達した。仲介機関がごまかすのは軽いほうで、多くの場合ねつ造に参与しており、企業にアドバイスする「達人」となっている。

 

制度の欠陥が不法行為を助長

長年、情報のねつ造と上場詐欺は中国の株式市場では頑固な病となっており、上場企業1社の行為ではなく、市場における一種の慣習的な行為となっている。各部分の「お世話」がなければ、このような「病気持ち」の企業が新株公開に成功できるはずがないからだ。

上場企業のねつ造行為はなぜ止まらないのか。武漢科技大学金融研究所董登新所長は以下のように分析している。第1に、A株の新株公開は許可制であるが、実際には公開前の審査は厳しくても公開後の管理監督は緩いため、一部の企業では、なんらかの方法で証券監督管理委員会の許可という関門を突破して、上場してしまえばしめたもの、というわけだ。第2に、一部の株式発行人と証券仲介機関に基本的な誠実さと法制意識が欠如していること。私利私欲のためだけに、往々にして合流し、ぐるになって悪事を働き、ねつ造パートナーとなって上場詐欺を働く。よって株式の発行人は巨額の利益を得て、仲介機関はそこから暴利をむさぼるという目的が達成できる。第3に、立法が遅れており、処罰が軽すぎる。証券犯罪を発生させないような十分な威嚇力がない。第4に、管理監督の努力不足で、投資者に権利保護意識が欠乏していること。第5に、A株投資者はひたすら利ざや目的の新株購入という悪習を特に好み、発行者や証券仲介にチャンスを与える。業績は関係なく、コストもかまわず盲目的に新株を購入しまくり、直接的にオンライン当選率を低くし、新株上場の初日の新株の値上がりを招く。第6に、中国企業の融資ルートが単一で、主に銀行貸付に頼っており、債券市場と場外市場が未発達の現状では企業は多様化させた分散投資ができない。よって、資源不足の新株公開が一本橋となり、一種の償還のいらない融資方式だと企業に認識されているのである。

 

本気でねつ造を処分すべき

「証券監督管理委員会の万福生科事件に対する処罰から見ると、明らかに市場の期待とは大きな隔たりがある」と、財経評論家の皮海洲氏は言う。「証券監督管理委員会が推薦機関である平安証券などの仲介機関に対する処罰を強化しても、上場詐欺事件の処罰は推薦機関など仲介機関に対して処罰を与えるだけでなく、ねつ造した企業に重い処罰を与えるということにその立脚点を置くべきである。もし上場詐欺の企業本体が軽い処罰で済んでしまったら、上場詐欺事件の処罰自体が竜頭蛇尾となってしまい、推薦機関に対する重い処罰も持つべき意義を失ってしまう」。

「市場の乱れには厳しい法律を用いる」と董登新所長は言う。証券犯罪が日増しにはびこっていることは、立法の遅れ、処罰が軽すぎることを意味する。中国の現行の証券法、刑法、民法の証券犯罪関連条項の修正が強く望まれており、肝心なことは法律による処罰を厳格化することである。よって、立法という側面から「破産して牢につながれる」という相応の懲罰条項を増やすべきであって、そのようにしてこそ法律に十分な抑止力を持たせることができるのである。

董登新所長は、「情報ねつ造と上場詐欺を完全に消滅させたいと思ったら、少なくとも、1つは登記制度を推進して新株公開前の行政審査と審査コストを軽減し、新株公開の効率を上げること、次に新株公開後の行政監督管理と市場監督下管理を強化し、証券犯罪を厳重に取り締まること、さらに多層的な資本市場の構築という3つの分野の改革が必要だ」と強調している。