桜宗佐 医療法人社団宗仁会理事長 SENSHIN CLINIC東京未来医療センター院長
老衰は再生医療で治る

向春の候、われわれは世界各国の一流デザイナーたちの作品が収集されている南青山PASONA SQUAREにおいて、イタリアで開催された女性の健康をテーマとするファッションショーから帰国したばかりの桜宗佐氏を待ち受けた。氏は日本医療法人社団宗仁会理事長にして、SENSHIN CLINIC東京未来医療センターの院長でもある。

十数時間に及ぶフライトであったにもかかわらず、氏は疲れた様子など微塵も見せず、ファッションショーの現場ではサインを求めるファンが群れを成したのもむべなるかなという、颯爽とした姿でわれわれの前に現れた。

中国とのつながり

実を言うと、桜宗佐氏は中国と実に深い関係があり、その血筋をさかのぼれば先祖は福建省漳州の人である。一族でみれば医療に従事すること80年にも及ぶ。父の代には大型総合病院の院長を務め、産婦人科分野で数多くの体外受精の症例を先駆的に手がけただけでなく、東京大学医学部に在籍して白血球免疫学理論を専攻し、癌の早期治療を専門とするクリニックを立ち上げた。体外受精のパイオニアと言っても過言ではない。

氏の兄弟は6人中5人が医学博士であり、それぞれ内科、消化器外科、耳鼻咽喉科、頭頸部外科、産婦人科などの各分野において活躍し、社会に多大なる貢献を果たした。医者の一族に生まれ落ちた桜宗佐氏も東京大学に進んだ俊英で、卒業後、わずか十年という短期間のうちに専門分野のクリニックを12施設にまで発展させた。医療の道を進むという困難を、一つまた一つと乗り越えることができた最大のモチベーションは、父の言葉——命は地球より重し——であった。

 

衆望の帰するところ——速効性

桜宗佐氏にしてみれば、医療とは最高のサービスである。可能な限り短い時間で患者の容態を好転させるために、氏はかつて35年もの長きにわたり、耳鼻咽喉科の第一線の臨床医として活躍し、若いころは一日平均400名もの患者の診療に当たってきた。年間では8万人から10万人、累計すれば臨床医として診療した患者はなんと180万人以上に上る。研ぎ澄まされた医術に裏打ちされた安全性と速効性、それは氏が舵を取るノアの方舟の最大の特徴にして最大の利点であると言えよう。実際、宗仁会グループに属する医療施設を訪れる患者の数は、東京の平均水準の2倍から3倍に達するという。

 

敢えて天下に先んずる

福建、いにしえは「閩」と称した。門構えのなかに虫、この虫の字は蛇を表している。まさに、「金鱗豈(あ)に是(こ)れ池中の物ならんや、一たび風雲に遇えば便(すなわ)ち竜と化す」というのがそれである。福建といえば古くから華僑の郷として著名な地である。一代また一代と、はるか遠く海を渡って新天地を切り拓き、そのたびに感動と涙の歴史を刻んできた。

桜宗佐氏は日本の一地方都市から東京へと進出し、そして全国へと足を伸ばした。また、耳鼻咽喉科から皮膚科、内科を経て、さらには理化学研究所・東京大学・千葉大学と癌ワクチンの共同研究開発において特許を取得した。こうしてみると、氏の歩んできた道のりには深い感慨を覚えざるを得ない。やはり氏の体内には「敢えて天下に先んずる」福建人の血が脈々と受け継がれているのである。

氏は2003年、東京にノエル銀座美容クリニックを設立し、2017年からグローバルに活躍の場を広げている。2017年からアジア市場の開拓に乗り出した。17年、シンガポールにJShangri-La Medical,Ltdを設立したのを皮切りに、19年には台湾にシャングリラ再生医療株式会社を、20年には韓国でShangrila Bio Co,Ltdを、さらに21年、タイにJSM-Thailandを、そして24年には中国でJSM-Chinaを設立し、今後はサウジアラビアにまで事業を拡大する予定だという。

人類最大の健康問題に挑む

いま、桜宗佐氏はグローバルな視点から見て最先端に立っている。それは人類最大の健康問題——老衰に挑んでいるゆえである。WHOが発表した調査結果によると、人類の健康と生命を脅かす最大の敵、それこそが老衰である。生物学的な観点からすれば、老衰とは各種の分子と細胞の損傷が時間の経過とともに蓄積された結果である。そうして身体能力と免疫力がしだいに低下すると、病を得て最後には死に至る危険が日を追って増加してゆく。

国際社会が抱える課題、たとえば環境汚染や産業形態の転換、少子高齢化問題などについて、日本は先進国として長きにわたり国を挙げて取り組んできた。その知識と経験においては一日の長があり、他国も日本に学ぶことで迂遠な対応を避けることができるであろう。そして、その日本で最も代表的、かつ世界的にも誉れ高い再生医療の専門家である桜宗佐氏は、アンチエイジングの研究と治療を生涯の使命と考えている。そんな氏が2022年10月1日、南青山にオープンしたのが、再生医療と女性特有の健康問題に最先端技術でアプローチする(FemTech)総合医療センター——SENSHIN CLINICである。

このSENSHIN CLINICは、すでにしてデジタルヘルスと再生医療の分野を牽引する強大な力になっていると同時に、日本医学界における「クリニックを中心とする総合医療サービスセンター」という斬新な概念を体現する先駆けでもある。

世界の名門校とともに

ここは最先端のテクノロジーで最新の体験を提供する、世界でも初めての新しい医療センターである。禅味にあふれた癒やしとくつろぎの空間に、婦人科・乳腺外科、美容皮膚科、鍼灸、整形外科の一流の医師たちが集結し、人生の様々なステージで直面する健康問題について救いの手を差し伸べてくれる。

桜宗佐氏の画期的な研究成果は、世界トップクラスの医療機関から次々に注目を集めた。タイで最も古い歴史を持つ高等教育機関マヒドン大学(Mahidol University)や、世界大学ランキング(Times Higher Education)で8年連続首位に輝くイギリスのオックスフォード大学、さらにはシンガポールのテマセクポリテクニック、韓国の全南大学などが氏に友好の手を差し伸べ、研究開発面での協力関係を結んでいる。

2023年4月、桜宗佐氏とリチャード・ヒデキ・カシンスキー氏など東京未来医療センターの多くの医師たちが理事を務めるIARO(国際抗老化再生医療推進機構)が、東京大学において国際学術交流会を開催した。世界各国の再生医療の専門家や研究者が一堂に会し、それぞれの研究成果や業界のニュースを共有した。中国整形美容協会会長の張斌氏も招聘に応じて参加し、秘書長の林梅蘭女史が代表して戦略的協力協定に署名した。

 

全自動幹細胞培養ロボットセンター

学究肌の専門家である桜宗佐氏は、誰よりも証拠と結果に重きを置く。人体の幹細胞とは際限なく増殖できる自己複製能と分化能を持った細胞であり、その想定される応用範囲はきわめて広い。しかし、新興の市場には混乱がつきもので、第三者による客観的な検査や認証もないままに、さまざまな業者が自社の製品は幹細胞の含有量が高いと随意に謳っていた。今年の5月、氏は日本、いや世界でも初めての全自動幹細胞培養ロボットセンターを設立するが、実は5年前から国立がん研究センターで臨床試験を進めていた。その研究成果は、6月19日に東京大学が主催するIARO研究会——世界各国から300名以上の研究者が駆けつける一大イベント——の席上で発表される予定である。

 

正真正銘のNMN

目下のところ、アンチエイジングに有効な物質として公認されているのがNMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)である。世にはこれを含むとする同類のサプリがあふれており、パッケージに表示される含有量もめざましい勢いで数値を増している。しかし、事実はどうなのだろうか?

アメリカの権威ある研究機関がアマゾンであつかわれている22のサプリについて成分分析をしたところ、パッケージの含有量と一致していたのはわずか3品だけで、さらに3品は明確な含有量不足、残りの16品に至っては含有量1%にも満たなかった。

一方、SENSHIN CLINICのNMNの原料はFDA(アメリカ食品医薬品局)の認証を受けた工場で生産され、日本の工場で再加工し、その純度は99%以上、日本の公的機関によって認証されており、医薬品として利用されている。そしていまもその製品は、アメリカのスタンフォード大学やタイのマヒドン大学など四つの国の一流研究機関において臨床治験がおこなわれているという。

 

どこよりも早く癌の発見を

癌はいわば生命と時間との競争である。いかに早期発見できるかにすべてがかかっている。発見が早ければ早いほど治癒の可能性はより高く、患者の肉体的負担と経済的負担はより軽い。しかし、癌の精密検査は往々にして各科に渡る協力体制が必要となり、そのぶん貴重な時間を消耗する。破天荒な改革者でもある桜宗佐氏は、今年の秋、南青山に日本初のAIによる癌の精密検査センターを設立する。そこの撮影装置は超低輻射タイプのもので、CTの放射線量を97%軽減し、さらには50を越えるAIソフトを使って様々な角度から検査する。これにより、どこよりも早くかつ精確に癌を発見することができ、それもたった2時間から2時間半ですぐ結果を知ることができるというのだから驚くほかない。今後、南青山はファッションと芸術の発信地であるだけでなく、AIによる高精度癌スクリーニングの発祥地にもなるであろう。

1971年、当時のアメリカ大統領ニクソンは「がん戦争」、すなわち、「いまこそわれわれの分裂した原子を、月にも到着できる世界の技術力を集結し、癌という恐るべき病に打ち勝つことに向けなければならない」と宣言した。しかし、歴史が示すとおり、人類にとって癌を絶滅させることは、月への第一歩を踏み出すよりもはるかに困難であった。そして、「命は地球より重し」を座右の銘に掲げる桜宗佐氏もまた、この究極の試練に立ち向かっている。

癌を患った人が最も恐れるのは何か、それは「癌が再発しました」あるいは「癌が転移しています」という医師の言葉である。SENSHIN CLINICと日本の理化学研究所(中国科学院に相当)が共同開発した免疫iNKT細胞がん治療は、患者の外周血細胞にもとづいて決定された癌ワクチンを患者の体内に注射し、体内のiNKT細胞を活性化させるというものである。これにより、伝統的な免疫療法では治療の術がなかった突然変異した癌細胞に作用して、癌の増殖、再発や転移を抑制する効果が期待できる。このワクチンは免疫記憶の機能を有しており、継続的に癌細胞を攻撃してくれるので、普通は年に2度打つだけでよく、基本的には誰に対しても効果がある。

2021年、医学・生化学・分子生物学等、ライフサイエンス分野における世界最高峰の学術誌『セル』(Cell)に、免疫iNKT細胞がん治療が老化細胞を排除する機能を持っているという学術報告が掲載された。すなわちアンチエイジングワクチンとして若返る効果があることを意味している。

 

業界の壁を打破して

世界に先駆ける

業界と業界のあいだには厳然たる壁が存在し、保守的な考え方が発展の余地を奪う。これは、あらゆるものがスマート化されてゆく現代において、日本のウィークポイントであると言ってよい。

目下、桜宗佐氏は、そうした業界の壁をブレークスルーして相互に利益をもたらす新たなエコロジーシステムの構築に注力している。

今年の秋には、世界初の声の再生治療や、植毛・育毛プログラムを提供する再生医療施設が、やはり桜宗佐氏の手によって青山に誕生する予定である。

 

老衰は再生医療で治る

「対症療法」の歩みが遅々として進まないなかにあって、桜宗佐氏はすでに「根本治療」という旗印を鮮明に打ち出し、世界の最前線を駆けている。人は往々にして老いには逆らえないと考えるものだが、桜宗佐氏はその観念を覆す——つまり、老いは一種の病であって、しかもそれは治療可能な病であることを示すために努力し続けている。

老い——それは人生という階段において誰も避けることはできない。その意味から言えば、桜宗佐氏が踏み出す一歩一歩は、地球上に生きるすべての人々にとっての福音であると言えよう。その小さな一歩は、人類における再生医療にとって、この上なく大きな一歩なのである。

インタビュー後記

「清らかな心、それが心本来の姿であり、聖人の心にわずかでも私欲がないのは、大河がこれを洗い流したかのようである」。SENSHIN CLINIC——そこに託されるのはこの「洗心」のほかに、もちろん時代のトップを走る「先進」の意味も含まれる。2022年11月、SENSHIN CLINICは、世界37カ国で発行されている富裕層向けのファッション雑誌『365ART』の表紙を飾った。そこにはJAPANESE MEDICAL CARE= ARTというコピーが付され、医学の美と禅の境地を完璧に融合させたSENSHIN CLINIC東京未来医療センターに惜しみない称賛が送られている。

インタビューを通じて、桜宗佐氏の全貌を描き出すのは実に難しいと感じた。それというのも、氏は医師であり学者であり、また思想家であり芸術家であり、さらには世界の趨勢を自ら作り出し、最先端で医療をリードする、そんな希有な人だからである。氏の成功が歩みを止めることは断じてあり得ない。次回、またインタビューできる日が来るのを心待ちにして擱筆することとする。