各業界にエンパワーメントする中国の国産ドローン

ローンといえば馴染みのある存在で、空撮はずっと前から日常生活に浸透している。空撮愛好家が用いる一般向けのドローンのほかに、各専門分野に応用されている産業向けドローンも密かに我々の生産と生活を変えている。

農林植物保護、緊急救助、文化財保護、電力点検など、技術の進歩と成果の実用化に伴いドローンの活躍の場が広がり続けており、各業界へのエンパワーメントが加速している。ドローンの能力とはどれほどのものなのか。

北京市八達嶺長城景勝地の「大疆機場2」

文化遺産保護での活躍

北京市延慶区にある八達嶺長城。吹きすさぶ北風の中で、2機の「大疆機場2」ドローンが昼夜にわたり南楼区間と北楼区間を見守っている。

5本のドローン総合巡回ルートは、景勝地の開放区間をほぼカバーしている。毎日10回の飛行任務を自動で遂行し、その映像をリアルタイムで管理センターに送信し、観光客によるマナー違反を迅速に発見し、それを阻止している。夜間になると、観光客が隠れて一夜を明かそうとした場合なども、ドローンの目「赤外線カメラ」からは逃れられない。

また同製品は2週間ごとに重点エリアの高精度3Dモデルを自動生成し、モデルの変化を比較することで山崩れや城壁の外側への移動などを速やかに発見でき、的確な検査と修復を便利にしている。

綿花畑でドローンを操作し枯葉剤を散布する様子

農業植物保護での活躍

綿花の収穫前には葉を枯らすという重要な作業がある。新疆維吾爾(ウイグル)自治区阿克蘇(アクス)地区温宿県で、三和植保公司の操縦者の朱鋭氏がコントローラーを持ち畑のほとりに立っていた。M-22植物保護ドローンが綿花畑の上空を飛び回り、枯葉剤を散布した。

朱氏は、「枯葉剤で葉を落とし、枝と綿花を留めることができ、収穫時に緑の葉が混入することで綿花の質が落ちることを回避できる。このM-22は我々と提携パートナーが共同開発したもので、1日で26.7-33.3ヘクタールの綿花畑の散布作業を遂行できる。クルミ、ナツメ、リンゴ、小麦、防風林などの農林作物のすべてが植物保護ドローンを使っている。農家の畑仕事がだいぶ楽になり、収益が上がった。増産率は10%以上で、農家の1ムー(約6.7アール)当たりのコストが30%以上下がった」と述べた。

ドローンの各業界での広範な応用には、技術イノベーションのしっかりした支えと切り離せない。

大疆機場を例にすると、ドローンは操縦者の手を離れた後、どのようにして飛行任務を遂行するのだろうか。ドローン大手の大疆創新科技有限公司の技術チームは「機場」をドローンの「家」と考え、離着陸プラットフォーム内のソフト・ハードウェア計画により、飛行計画の策定、飛行任務の自動遂行、データ採取、充電など一連の操作を実現できる。

大疆上級企業ストラテジーディレクターの張暁楠氏は、「完成品はシンプルに見えるが、その裏側には複雑な技術サポートがある。ユーザーの悩みを把握し、製品に磨きをかけ成熟させ市場から認められるまで、大疆機場は10年を費やした。今やその製品は第2世代まで更新され、体積が75%、重量が68%減少した。よりコンパクト、スマート、優秀になった。最大有効作業半径及び飛行時間がいずれも大幅に増え、さらに専門的な測量分野での応用を切り開いた」と述べた。

ドローンにとって、動力システムはその潜在能力を強く制約するものとなる。動力をさらに強くすることは可能だろうか。

翼竜シリーズドローンは近年、複数回の緊急救助任務において優れたパフォーマンスを見せている。その中で使われているZF850ターボジェットエンジンは中発天信(北京)航空エンジン科技公司が製造したものだ。

同社の関係責任者は、「技術チームはエンジン分野に数十年携わってきた。2018年以降に既存の技術をベースに改造・アップグレードし、制御システムを改良し、エンジンの寿命を大幅に伸ばしその性能を高めた。これによりドローンは力強い心臓を持つようになった」と述べた。

自動車と同様、新エネルギー車やハイブリッド技術もドローン分野で応用されている。

ハイブリッド複合翼ドローン

ハイブリッド複合翼ドローン

重慶交通大学グリーン航空技術研究院の陳全龍副院長は、「完全電動ドローンは操作しやすく、安定性が高いが、航続距離が短い。それに対し、完全燃料ドローンは制御への反応と感度が鈍い。ハイブリッドドローンは2種の動力のドローンが持つ優位性を兼ね備えている。飛行中に2種の動力のスムーズな切り替えを実現するのは容易ではない。当院は長年にわたる研究開発を経て、ハイブリッド複合翼ドローンを独自に研究開発し、テスト飛行を行った。最大離陸標高は3000mで、25kgのペイロードを搭載し数百km飛行できる。最高速度は150km/hで、世界の先端レベルに達している」と説明した。

科学研究成果の持続的な産出が集積し、産業チェーンの深い蓄積となった。中国科学院ドローン応用・コントロール研究センターの譚翔執行事務局長は、「国内のドローン技術のレベルが持続的に上がり、複数の代表的な企業が誕生するとともに、研究開発、生産、販売、サービスを一体化した整った産業チェーンが形成され、国際市場で高い競争力を持っている。ドローン産業は新材料、マイクロエレクトロニクス、通信、ナビ・測位、画像認識・処理、人工知能などの新技術分野を融合させており、高い科学技術力と産業付加価値を持つもので、国家経済・民生及び国家安全に関わる新興産業であり、さらに航空産業の先端分野を狙い、産業のディスコース・パワーを高めるための重要な足がかりと突破口でもある」と述べた。