「三公消費」取り締まりと内需拡大は矛盾しない

中央政府が「八項規定」と「節約励行、浪費反対」の要求を出して以来、公金による飲み食いの風潮はかなり収束して来た。中国国家統計局の最新データは、2013年1月から2月の輸出と投資がそれぞれ23.6%、21.2%の成長を維持したものの、消費の伸びが鈍化し、中でも「限額以上企業」(ここでは高級飲食店)の飲食収入は3.3%も下がっているとしている。続けざまに実行される「八項規定」と「三公消費」(役人の公費による海外旅行、公用車の購入・維持費用、公費による交際支出)公開政策が高級消費のよりいっそうの減少を誘発し、消費全体の伸びに影響して、市場の需要不足を招くのではないかと心配する声もある。

  

高級飲食店の業績が下落

中国商務部の瀋丹陽スポークスマンは2月に行われた定例記者会見で「中央の八項規定と節約励行、浪費反対の要求が出されて以来、一部の高級飲食店の業績と高級白酒の売り上げは確かに大幅に減少している。サンプル調査の結果では高級飲食店の営業額は北京では約35%減少し、上海では20%以上、寧波市でも約30%減少している」と紹介している。

中国国家統計局が発表した最新のデータでは2013年1月から2月の消費物資小売総額は前年同時期より名目で12.3%伸びているが、その内、飲食業の収入の伸びは僅か8.4%で、高級飲食店の収入に至っては3.3%減少している。

中国国家発展改革委員会経済研究所の陳新年研究員は「集団的な消費は、実際は公金によるものです。一般的な消費の伸びはどれも相対的に安定しており、伸びの鈍化、特に高級な飲食消費のマイナス成長は公金による飲み食いが減って来ており、全体の消費に影響しています」と指摘している。

瀋丹陽スポークスマンは「高級飲食店の営業収入とそれに関連した消費は多少減少していますが、経済の継続的な成長を促進するという大きな目標の観点から見ると、奢侈、浪費に反対し消費を拡大するという目的は一致しており、相矛盾するものではありません」として、「勤倹節約を提唱し、浪費や無駄に反対することは長期的に見れば消費の拡大に影響しないばかりでなく、逆に節約と省資源という消費モデルを形成し、消費の持続的な成長を実現するのに有利です」と述べている。

三公消費は「有害な内需」

近年、度々の禁止にもかかわらず公金による飲み食いという現象が止まないばかりか、その傾向はますます度を加え増し、規模や範囲、程度は既に厳格な改善措置が必要な状態だ。学者の推計では全国の三公消費の総額は既に9000億元(約1兆4300億円)と、2012年の年間財政収入の10%に匹敵している。ますます巨大化する三公消費支出は政府のイメージを損ない、社会の風潮を害し、大衆の不満を招き、社会経済の発展にマイナスとなる。

清華大学経済管理学部の周立教授は「経済学的な角度から分析すると、公金による飲み食いを抑制することは消費と内需に一定の影響を及ぼす可能性があります」と語り、「政府による消費は既に社会的な消費を構成する重要な一部分となっており、それは世界的な傾向です。しかし、中国政府による消費は多くの金が高級な飲食、高級な酒やタバコ、高級茶葉などに注ぎ込まれています」と語っている。

専門家は、公金による飲み食いがもたらす内需は一種の奇形であり、持続不可能な経済現象だとしている。もし公共財政が役人によって自分自身の利益のために使われれば、社会の富を調整するという公共財政の機能は必然的に弱められ、それに伴って人々の生活を豊かにすることを促進する力が弱められ、経済全体の内から生まれる成長のパワーが失われ、社会を望ましい方向に発展させる活力も不足して、持続的な発展など論外だとしている。そのために、公金による飲み食いという「有害な内需」を抑制することは一時的には社会的な消費とトータルのニーズの成長に影響するかもしれないが、今後の社会経済が健全に発展するためには避けて通れない途だとしている。

住民の消費促進に有利

周立教授は「三公消費の抑制は政府による政治体制改革の重要な内容であるとともに、国の経済と人々の暮らしの充実を図るという公共政策に関わる問題で、政府予算の制約を通じて『三公』の公開などの措置を採り、三公消費を厳しく取り締まるべきだ」として、「三公消費には公共財政の特徴がよく現れているが、公共財政の重要な特徴とは、庶民のために使われなければならないということで、自分の裁量で過剰な金額を使うことではない」としている。

公共財政は国民から収受したものであり、国民のために使われなければならない。専門家は、政府が「収受」の段階で計画的な減税などの措置を講じ、企業や国民の負担を効果的に減じて国民の懐を豊かにすることを実現すれば、国民の消費促進に効果的だとしている。「投入」の段階では、公金による飲み食いの節約で生じた財政資金を民政分野に投入すれば、庶民の住宅問題、通院問題、就学問題、高齢者介護問題が解決でき、一般庶民の消費意欲と消費能力を強め、同時に消費を促進し、内需をリードさせることが出来る。そうした内需こそがバブルでない正真正銘の内需なのだ。

専門家の間では三公消費の「マイナス成長」実現は時代の流れであると考えるのが一般的だ。浙江大学公共政策研究学部の範柏乃副学部長は「三公消費を取り締まるには、大衆が参加した、長期的に有効なガバナンスのメカニズムを構築し、三公消費を費用の精算から完全に切り離して、すべての国民の監視の目にさらすことが必要です。それが、三公消費を真の意味で制度の『檻』に閉じ込めることになるのです」と指摘している。