内需の主導力発揮 外貨準備の活性化
中国はいかに「通貨戦争」の代償を免れるか

現今、世界の主要発達経済体の通貨政策が再び緩みだした。その目指すところは自国通貨の為替レートを下げて輸出を支援することだ。自国の利益を保護するため、アジアやラテンアメリカなどの国々は自国通貨の大幅な切り下げを防ぐ措置を取らざるを得ない。専門家は、「通貨戦争」による代償を免れるために中国は、経済成長モデルや金融の管理モデルを革新して、積極的に課題に取り組まなければならないと指摘している。

 

 ひっきりなしに紙幣増刷

通貨戦争とは通常、各国が自国通貨の価値と発行量をコントロールすることで他国と駆け引きをして自国の利益を最大化することを指す。今回の通貨戦争について曁南大学国際商学部の孫華妤教授は、「現在、各国が争って通貨政策を緩和し、自国通貨を切り下げようとしているやり方は通貨戦争と言ってよいでしょう。ただ、彼らの出発点は主として自国経済の振興であり、通貨戦争を仕掛けるためではありません」と指摘している。

今回の通貨戦争の源は2007年に米国がサブプライムローン危機に陥ったときにまで遡らなければならないが、それ以降、今に至るまで、米国は一貫して紙幣の増刷を続けるとともに量的緩和政策を拡大させて来ている。

米国以外に、日本の新首相も通貨政策のさらなる緩和などの措置を通じて自国経済のデフレからの脱却を図ることを再三表明している。米国、日本に追随して、欧州中央銀行やイングランド銀行などの西側の通貨政策決定者がより積極的な通貨政策によって経済を刺激することを次々に表明している。

しかしながら、国際通貨基金(IMF)のラガルド総裁は通貨戦争は根拠のないものだとしている。経済協力開発機構(OECD)のグリア事務総長も現状はいわゆる通貨戦争が勃発している訳ではないとしている。これについて孫華妤教授は「国際通貨基金が通貨戦争に否定的な態度を採るのは、彼らが発達経済体と政治上の利益を共有しているからで、それらの国々の経済を安定させることが彼らの利益に合致するからです。もし中国などが通貨戦争を引き起こせば、彼らは不当に非難するでしょう」と指摘している。

中国は「通貨戦争」には巻き込まれない

今回の通貨戦争で、誰が恩恵を受けるのか? 孫華妤教授は「最初に自国通貨を切り下げた国がメリットを得るでしょう。ただし、他国の市場に押し入り、その他の国の利益を損なうことは、皆が競って切り下げを行う事態を生みます。各国が何度も駆け引きを繰り返し、最後は誰の徳にもならないばかりか、国際貿易や投資、国際通貨体系を撹乱するだけです」と見ている。

中国は通貨戦争に巻き込まれるのか? 孫華妤教授は「中国が通貨戦争に加わることはあり得ません。中国は米国や日本などの通貨の量的緩和政策に反対すると同時に、中国のいかなるマクロ調整や通貨政策も、すべては自国経済に対してのものであって、人民元は国際基軸通貨ではありませんから、中国の政策が対外的な効果を生むことはありません」と語っている。

中国が通貨戦争に加わることはないとはいえ、他国通貨が量的緩和を競うことは中国に多くのマイナス影響をもたらす。孫華妤教授は、「通貨の過度の緩和は大量の安価な資本を振興経済体の市場に転移させ、より多くの国際的ホットマネーが中国に流入して、見せ掛けの金融資産バブルを大量に生み、外貨管理を難しくさせ、産業政策の調整管理を難しくさせます」と指摘している。

資本規制を強めホットマネーを防ぐ

通貨戦争による中国への被害を減らすために、専門家は経済成長モデルと金融の管理モデルを革新し、積極的に課題に取り組まなければならないと提起している。

孫華妤教授は「まず、資本に対する規制を強化して、ホットマネーの流入を防がねばなりません。その次に、自国資本の対外流出を奨励して、ホットマネーの流入に対抗するべきです。第3に通貨政策ではタイミングを測って基本利率を引き下げるべきで、そうすることで資本の流入が避けられるとともに、国内の実体経済の成長にも有利になります」と見ている。

これ以外にも、ある専門家は「対外貿易環境の悪化という傾向に直面して、中国は経済構造の調整を加速し、輸出への依存を減らし、内需の経済成長に対する貢献を引き上げること。外貨準備の面では多元的なアイディアに基づいた投資を行うことで外貨準備資産を活性化すること。輸入インフレを防ぐために資源関連企業の『海外進出』を奨励し、国外の資源関連企業との戦略提携を行うこと」と提案している。