国外で買う方が安くて安心?
「国内で稼ぎ 国外で使う」中流層や富裕層

近年、海外旅行はレジャーの中で人気ナンバーワンになっており、長期休暇のたびに世界各地で中国人観光客がこぞって買い物をする姿を見かける。また富裕層による海外不動産の連帯購入や大量のぜいたく品購入はさらにエスカレートしている。世界四大会計事務所の一つであるKPMGが発表した2012年ぜいたく品調査研究報告によれば、アンケートに答えた中国人の7割以上が海外旅行でぜいたく品を購入したと回答している。専門家は、国内で稼いで国外で消費するという選択は、一面では新しい品物を求める心情を反映しており正常な現象であるが、半面では国内消費環境が整っていないことを示すものでもあるとしている。

海外で目立つ中国人の
派手な買い物
ここ数年、中国人海外旅行者が増えるにしたがって、その購買力もどんどん上昇している。ある観光客は「『買いあさり団体』はふつうでも少なくとも数十万元という派手な買い物をしている」と、昨年の海外旅行での経験を語っている。「まるで黒山の人だかりで、パリの有名ブランドショップの店頭は長蛇の列だったが、99%が中国人だった」。
ベインマネジメントコンサルティングが最近発表した『2012年中国ぜいたく品市場研究レポート』によると、中国人はすでに世界最大のぜいたく品消費グループとなっており、全世界のぜいたく品の約25%を購入している。KPMGが先日発表したアニュアルレポートによると、2008年には中国人アンケート回答者のうち海外旅行での買い物経験者は53%だったが、2012年には71%に増加した。同時に、中国人消費者の一流ブランドに対する認知度も上がり、69%の回答者が、知名度が高く流行している有名ブランド品のために高いお金を払うと答えている。
市場関係者によれば、海外ブランドは消費市場メカニズムが整っており、信頼度も高く、サービスも行き届いている。そのうえ、知名度の高い有名ブランドは、バーゲンなどの販促活動をしなくても中国の中流層、富裕層の商品の購買意欲を引きつけていると指摘している。
 
金持ちには
国内で消費させる
「同一ブランドについて言えば、国内と国外が同価格ではないことが、国外で買い物をする主な原因だ。海外での買い物は基本的には中流層、富裕層が中心なので、消費環境という要素を考慮に入れなければ、海外の価格のほうが安い」と清華大学経済管理学院の周立教授は言う。
さらに周立教授は、国内生産コストが優位にあるという前提では、価格差の主な原因は物流コストと税収コスト、すなわち貿易コストの2つだとし、「まさにこの2つの分野でのコストの差が、各地での価格差につながっている」と言う。また、拡大し続ける中流層、富裕層グループの消費力は強靭で、世界のブランドを求め、ぜいたく品に対する欲望が日増しに強くなっているとしている。
市場関係者は、人民元高が購買力アップの大きな要因だとし、また国外のブランド効果も中国人の海外でのぜいたく品消費の主な原因だと分析している。有名な海外ラグジュアリーブランドの範囲は広く、服、靴、帽子から化粧品、腕時計、バッグなど非常に多い。翻ってみると中国ブランドは悲惨な状況で、もともと多くない国産ブランドは知る人も少ない。中国大陸の一流ブランドである海鴎ブランドの1個168万元(約2485万円)の腕時計は2010年発売以来、2個しか売れていないという。
「現在、消費者が海外に流れるという現象は普遍化しており、このままいけば、消費の増加、内需拡大に不利に働く」と周立教授は言う。「消費環境をよくすること、ブランド戦略を強化することで中流層、富裕層に国内で消費するように誘導する必要がある。長い間、ぜいたく品の消費を奨励せず、提唱してこなかったことが消費の成長を遅らせてしまった。国内消費を促進し、内需を拡大し、経済発展モデルの転換に役立つように、高額所得層の持つお金を国内で使わせるよう努力すべきである」。
 
消費者を海外に
持っていかれないために
輸出指向型から消費駆動型へ、内需主導型経済発展モデルへの転換、これは中国の経済構造調整の重要な一環であり、また中国がブランド戦略を強化し、消費需要を作り出し、消費環境を改善するための動力でもある。専門家は、市場のパワーを活用してブランドを育成し、科学技術によって新しい消費需要を喚起し、法制度で消費環境を完備することで、消費者に安全に安心して消費してもらい、消費に関する悩みをなくして消費の楽しみを享受してもらうべきだと提案している。ある関係者は、中国の消費者にもっとよい消費環境を提供し、消費者をこれ以上海外に「持っていかれない」ようにすべきだと呼びかけている。
ある研究者は、市場の基本的役割を十分に活かして有名ブランドを育て、ブランドの価値を高めるべきだとし、市場競争の中で勝ち残ったものだけがその地位を確立し、その価値を示すことができ、中間層、富裕層にも認められると提言している。
経済アナリストである梁振鵬氏は、科学技術により新しい消費需要を創造することも一つの動きになりつつあると指摘している。例えばアップル社の独創的な製品は人々の消費習慣を変え、消費者はアップルを追いかけている。「偉大な企業は、消費需要にひたすら迎合することをせず、オリジナルの新製品で市場の需要を開拓した」。

周立教授は、「われわれは良好な消費環境を創造しなければならない」と言い、「政府はさらに大衆のためという発想で政策措置を打ち出し、法制度によって消費の体制と環境をさらに整え、消費者の合理的な需要の実現を保障すべきだ」と提言している。例えば、市場流通体制の分野で、各レベル・各業界の市場流通の法律法規を統一し、市場流通の建設を法制化の軌道に乗せるべきであり、統一された市場流通コントロール部門を設立することで、バラバラな管理、相互干渉という問題を解決できるとしている。