先端科学技術企業に絞り込み、構造調整のために誘致企業を選別
中国の外資導入がバージョンアップへ


10月19日、中国初の中国・ドイツ中小企業協力モデル地区が「中国・ドイツ企業の郷」として江蘇省太倉で看板を掲げた。
太倉に進出したドイツ資本の企業は既に180社を超え、プロジェクトの総投資額は15億米ドル(約1194億円)、
年間生産額は人民元300億元(約3797億円)を超えるという。(撮影/蒋振江、中国新聞社) 

中国商務部が10月19日に発表したデータによると、9月に全国で新たに承認、設立された外商投資企業は2248社で前年同月比6.4%減となった。また外資導入実績は金額ベースで前年同月比6.8%減の84億3000万米ドル(約6713億円。銀行、証券、保険分野のデータは含まず)にとどまり、4カ月連続で減少した。世界的な対外投資の低迷と国内のマクロ調整措置の影響を受けて、外資導入実績の全体規模の減少は予想の範囲内だと言えるだろう。外資導入のスピードは減速しているとはいえ、中国が導入する外資の構成と質はより適正化されてきている。先端科学技術企業の誘致に的を絞り、構造調整を狙いとして誘致企業を選別するという外資利用構造の「バージョンアップ」が図られ始めている。

外資導入の全体規模は減少

中国商務部のデータは、2012年の第1四半期から第3四半期までの間、全国で新たに承認、設立された外商投資企業数が前年同時期比11.7%減の1万8025社で、外資の実際利用金額は同じく3.8%減の834億2000万米ドル(約6兆6430億円)だと明らかにしている。

商務部研究院の金柏松研究員は本紙の取材に、「外資導入の全体規模の減少は国内外二つの原因に基づいている。国外的には、世界経済の減速が、発展した経済体の対外投資の活力欠乏を招き、資金の還流が突出していることである。データによるとEU27カ国が対中投資で実際に投下した外資金額は前年同期6.3%減の48億3000万米ドル(約3846億円)となっている。米国が対中投資で実際に投入した金額は同じく0.63%減の23億7000万米ドル(約1887億円)、日本の対中投資額は17.0%増の56億2000万米ドル(約4475億円)となっている」と述べている。

金柏松研究員は「ヨーロッパ債務危機と米国経済の疲弊により対中投資が減少し、日本は東日本大震災後の産業チェーンの連続性保持と円高圧力のために対中投資を増やしている。その他、外需の低迷が招いた輸出不振も製造業の外資導入を大幅に減らしている。国内的要因としては不動産購入制限政策によって不動産分野での外資の熱が冷めたこと以外に、中国が主体的に外資の構成を調整して中国に投資しようとする外資を『選別』し、外資導入から外資の選別導入に変わってきたことも外資誘致の全体的規模にある程度影響している」と分析している。

外資の質的構成を最適化

外資利用の全体規模は多少減少したとはいえ、商務部の瀋丹陽スポークスマンは「中国の利用外資の構成と質、水準には喜ばしい変化が生まれている。外資を利用する地域で言うと、中部地区の伸びが急速に増加している。第3四半期までに中部地区で実際に利用した外資は前年同時期比16.5%増の69億9000万米ドル(約5600億円)だ。外資を利用する産業構成の面ではサービス業が実際に利用した外資が前年比でわずかに増えている」と述べている。データによると、不動産の要素を除き、サービス業が実際に利用した外資金額は1.6%増加している。

金柏松研究員は「中西部地区には沿海地区に比べてより多くの投資のチャンスがあり、今後中西部が利用する外資は引き続き急速な増加傾向を保つだろう」と指摘する。他にも、サービス業分野や先端技術分野への外資誘致における国家の政策も誘致する外資の質の向上を促進している。金柏松研究員はまた「知的財産権保護への取り組みの向上、特許技術移転の保護、さらなる構造改革の推進、設備環境と管理監督環境の整備を通じて外商企業の中国への投資に対する意欲と信頼を増し、技術集約型の外資誘致を加速し、産業のレベルアップを促進するべきだ」と提案する。

中国国際貿易学会中国欧米研究センターの何偉文主任は「外資導入は正に構造的な調整期に入った。ローエンドの製造業外資の導入は多少減少し、現代的なサービス業における外資導入比率が増えている。輸出を目的とした外商企業の投資は減少し、中国の市場をターゲットとした投資が増加している」と述べている。これは中国が利用する外資の構成がすでに新たなバージョンにレベルアップしていることを示している。

中国に対する外資の信頼は依然旺盛

最近、在中国の米国商工会議所、EU商工会議所、日本貿易振興機構などが発表した調査報告は、回答した米国、EU、日本の企業の中でこの2年内に内陸地域への投資拡大を考えている企業がそれぞれ82%、63%。67%という高い割合に達していることを示している。回答した企業の圧倒的多数が中国市場に対して楽観的であり、信頼を寄せている。2012年5月に発表された『在中国EU商工会議所ビジネス動向調査2012』は、世界の経済成長の最大の貢献者として中国がEUの企業に対して持つ重要性の意味合いは、現状かつてないほどまで高まっているとしている。在中国米国商工会議所のテッド・ディーン会頭も最近「中国はすでに海外生産や輸出のための「世界の工場」ではなく、巨大な需要を持つ市場となっており、中国経済の外需依存から内需主導への転換は米国企業にとって新たなチャンスを提供するだろう」と語っている。

瀋丹陽スポークスマンは「外資企業は中国での長期的な発展に依然として十分な確信を持っており、中国が外資を導入するうえでの全体的な傾向は依然として積極的で健全な状況だ」と述べている。金柏松研究員は「世界経済の成長減速という背景の下でも中国経済発展の前途は良好で、外資は依然として中国市場を後戻りすることのない市場と見做している」と分析している。