10数億人の消費が拡大 膨大なニーズが噴出
中国内需の潜在力は十分に発揮されていない

 国家発展改革委員会の李朴民(リー・プーミン)報道官は先日、「中国内需の潜在力はまだ十分に発揮されていない」とした上で、今年も中国経済は引き続き安定かつ急速な発展を維持し、スタグフレーションあるいはハードランディングすることはないと述べた。

これより前の2011年末に開催された中央経済工作会議では、2012年は内需、特に消費ニーズの拡大に力を入れるとの方針が示されている。周囲を取り巻く環境がさらに悪化するという予想の下、輸出の減少はさらに顕著になり、投資も不動産規制と地方政府の投資圧縮によりさらに減速することから、消費が2012年の経済の目玉になると、業界関係者は指摘する。

 

中国内需の潜在力は膨大

 統計が示す通り、2011年の経済成長率は四半期ごとに減速傾向をみせており、市場は2012年の中国経済がスタグフレーションあるいはハードランディングするのではないかと懸念している。これに対し、李報道官は「中国経済にはスタグフレーションあるいはハードランディングの問題は存在しない」と強く否定した。

 李報道官は「有利な要素はたくさんある。経済の安定かつ急速な発展の維持という角度からみると、中国内需の潜在力はまだ十分に発揮されていない」と強調。このほか、工業化、都市化、農業の近代化の過程における消費の拡大、合理的な投資規模の維持はいずれも大きな余地があるとし、中国経済の今とこれからしばらく先の未来は安定かつ急速な成長を遂げる期間になる、と結論付けた。

 さらに、「中国内需の潜在力は膨大。10数億の中国人が今の生活水準を先進国並みに引き上げようとまい進しているのだ。この過程で噴出する内需の潜在力の大きさは計り知れない。この点を正確に認識することが今後の中国経済発展の潜在力を判断する上で重要な視点になる」と指摘した。

国務院発展研究センター・マクロ経済研究部の張立群(ジャン・リーチュン)研究員も「経済成長が雇用と収入の継続的かつ大幅な拡大をもたらすことに着目すべきだ。雇用と収入の急速な拡大は消費ニーズの潜在力を消費市場の拡大という事実に変えることができる。

消費がGDP(国内総生産)に占める割合は低いものの、消費の拡大速度は10%以上という高い数値を保っている。これまで、中国の消費はGDPの成長率に伴い、安定かつ急速な成長をみせてきたが、今後もこの傾向は続き、中国経済だけでなく世界経済にも重要な貢献を果たす」と解説した。

 

今年の内需は「安定しながら勢いよく」

 中国社会科学院が発表した研究報告は、2012年の中国経済の成長は内需拡大によるものとなり、外需のGDP成長率への貢献は明らかに下がると予想している。

 業界関係者は、今年の経済情勢からみて、欧州債務危機が世界経済復興の足かせになっていることで外需が落ち込み、中国の輸出が増加する余地は引き続き抑えられている、と指摘。また、不動産投資の減少が固定資産投資を減速させることで、投資の成長エンジンにブレーキがかかる恐れも浮上、これにより消費の経済成長への貢献度が一層顕著になる。

 張研究員は「世界経済の低迷とマクロコントロール政策の影響により、2012年の中国の輸出成長率と投資成長率はいずれも減少する」とみている。

 少し前に国家統計局が発表したデータによると、2011年の社会消費財成長率は17.1%。2010年より若干減少したが、17%と高水準を保っている。

 昨年の消費成長率の減少は住宅や自動車のニーズが落ち込み、家具や家電、関連製品の購入に影響がでたためで、自動車の消費が減少したのは周期的なものに過ぎず、自動車市場が低迷に向かうことを意味するものではない、と張研究員。

 「様々な要素が合わさって、中国の2012年の消費成長率は2011年より若干上昇する。『安定しながら勢いよく』の傾向は続くだろう」との見方を示した。

 

内需拡大には様々な措置が必要

 業界関係者は、消費が経済成長に貢献するには政策・措置と制度の実質的な推進が必要だとみているが、すぐにどうにかなるものではない。政府はおそらく、積極的な財政政策と適度な金融緩和で内需拡大を狙うだろう。国民生活やインフラへの投資増加により、消費の安定成長の維持を促す考えだ。

 著名な経済学者の厲以寧(リー・イーニン)氏は内需問題について、「内需の拡大には低所得層の収入を引き上げ、中低所得層の後顧の憂いを解決することが不可欠だ。より多くの低所得層を中所得層に転換させるよう尽力する。そうしなければ、中国経済の安定成長は望めない」との見方を示している。

 張研究員は「中央政府は内需拡大のために多くの部署を設立した。その上で、都市部と農村部の特に低所得層の収入の引き上げ、消費の拡大・拡張、都市部と農村部の市場流通システムの建設、監督管理とサービスの強化、商業詐欺や偽物の製造・販売行為の徹底取り締まりに励んでいる。このように様々な措置を講じてこそ、消費増加の基礎を固めることができるのだ」と話している。

 

(写真)辰年の春節(旧正月)を間近に控え、消費のピークを迎えた江蘇省南京市。市民たちは春節前の最後の休日を利用して春節用品の買い物に余念がない。(鐘山撮影、中国新聞社発)