メタバース産業に『3年行動計画』

現在「メタバース」はホットワードであり、関連企業が計画を急いでいる。最近、工業情報化部等5部門が発表した『メタバース産業イノベーション発展3年行動計画(2023-2025年)』(以下『行動計画』)によると、先進的メタバース技術と産業システムを構築し、政策レベルでメタバース産業の発展の方向性を示し、メタバース産業の発展を促進するとしている。

大きな可能性を秘めた分野

業界関係者は、ゲーム、SNS、産業がメタバースの3つの主要な応用分野であるとしている。

現在、多くの企業が商品としてVRヘッドマウントディスプレイを発売しており、ユーザーはそれを装着してゲームをしたり、オンラインでのバーチャルなコミュニケーションが可能になる。

ゲームやコミュニケーションツールによる仮想体験の追求とは異なり、産業用メタバースに対する要求はより明確である。問題の解決を主要な目的とするメタバースの活用は実質的価値を生む。

各地で産業用メタバースの発展計画が打ち出され、「メタバース」と「デジタルツイン」の融合が加速し、「メタバース+インダストリアルインターネット」の動きが形成されている。

一部の企業は、スマート鉱山、スマート港湾のためのインテリジェントソフトウェア及びインテリジェントハードウェアの開発に着手している。

工業情報化部科技司の責任者は、メタバースは人工知能、ブロックチェーン、5G、モノのインターネット、バーチャルリアリティ等の新世代ITの集大成であり、大きな可能性を秘めた未来の産業であると話す。

メタバース産業の発展は、デジタル経済の新たなシーン、新たな応用、新生態を大きく開き、経済の新たな原動力を育む。「特に、バーチャルとリアリティが融合し、相互に促進される産業メタバースの発展は、製造業のハイエンド化、インテリジェント化、エコ化を加速する新たな工業化建設の重要な力点のひとつです」。

「メタバース自体は技術ではなく、ひとつの理念、概念であり、5G、6G、人工知能、ビッグデータ等のニューテクノロジーを統合し、バーチャルとリアリティの融合に力点を置いています」と清華大学ニューメディア研究センターの瀋陽執行主任は話す。

メタバースは、さまざまなニューテクノロジーを統合して生まれた、バーチャルとリアリティを融合させた新たなインターネットアプリケーションである。

中国社会科学院数量経済技術経済研究所の左鵬飛副研究員は次のように話す。「メタバースは、仮想世界と現実世界を融合させる媒体であり、ソーシャルネットワーク、コンテンツ、ゲーム、オフィスワークに大きな変革のチャンスをもたらします。従来のデジタルテクノロジー企業も新興スタートアップ企業もみな、今後、そのチャンス掴みたいと願っています」。

開発と安全性の両面を考慮

メタバースは大きな可能性を秘めているが、同時に課題もある。左鵬飛氏は次のように指摘する。

「現在、中国のメタバース産業が直面している最大の課題は、技術的な問題です。特に、モバイル通信、ビッグデータ、人工知能等の基盤となるテクノロジーアーキテクチャのアップグレードが急務です。基礎情報技術の研究開発に注力し、関連企業が基礎研究及び技術革新を強化し、技術的成熟度を着実に高めていけるような支援が必要です」。

『行動計画』では、2025年までに、メタバース技術、産業、アプリケーション、ガバナンス等の分野でブレークスルーを達成し、デジタル経済の重要な成長極となり、世界的な影響力をもつエコ・ファースト企業もしくは専精特新企業(専門化・精密化・特徴化・斬新化という4つの優れた特徴を持つ企業)を3~5社養成し、産業発展集聚区を3~5カ所建設し、産業メタバースの初期の成果を達成し、代表的アプリを開発し、ベンチマークとなる生産ライン、工場、パークを創出するとしている。