外貨準備を大量の金に変えるのは非現実的

ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)が最近発表した各国中央銀行の金備蓄量によるとアメリカが8133.5トンで依然として世界で最も多い金備蓄量を持つ国となっており、全世界の26.49%を占めている。一方中国の金備蓄量は1054.1トンで世界第6位である。中国の備蓄量も決して少なくないとはいえ、外貨準備全体に占める割合はわずか1.6%に過ぎない。これに対し、アメリカの金備蓄量は外貨準備の74%を占め、ロシアやインドなどの新興国家でさえ5%以上である。業界のアナリストは、(BRICSのような)発展中の新経済国家は金の備蓄比率は多少多めが望ましいと指摘している。中国中央銀行がさらに多くの金の備蓄を保有することは大局の赴くところと言える。

各国の今年の金購買量は昨年の3

実際、米格付け会社スタンダード&プアーズがアメリカの国債を格下げする以前、欧米の債務危機の影響で米ドルとユーロに対する信用が下降し、世界各国の中央銀行は金の備蓄比率を徐々に引き上げ始めた。人々の注意を引くのは、各国が過去20年にわたって金を投売りした後、昨年からは外貨準備の多様化を実現し、米ドルに対する過度の依存を軽減するために再び金の購入側に回ったことだ。

WGCのデータによると、今年の各国政府による金の純粋購買量は203.5トンでほぼ昨年の3倍になっている。これはますますもって各国が金を紙幣価値の下落や世界経済の動揺に対する手段と見做していることの現れである。中国の外貨準備は依然世界一だが、金の備蓄量は世界平均に遠く及ばない。

中国金投資研究所の景乃権所長は人民日報の取材に対し、金の持つ重要な作用は危機の際の安定したパフォーマンス、財産の損失軽減、さらに外貨市場における為替リスクの回避にあると述べている。また、金融危機の勃発後は往々にして各国政府が債務危機に陥る可能性があるが、もしその国の政府に一定割合の金の備蓄があれば、備蓄した金を使って債務の償還もできる。それゆえに、金は国家の金融の安全を維持するために重要な意義を有する。アメリカの金備蓄量は8133.5トン、ドイツ3421.6トン、フランス2487.1トン、イタリアは2451.8トンであり、これらの国々が高いコストを惜しまずに金を備蓄しているのは明らかに金備蓄戦略の意義を重視しているからである。

金備蓄は国家の信用を支える

中国が保有している金の備蓄比率は確かに低過ぎ、多少引き上げる必要がある。しかし多くの専門家は、今はそのタイミングではなく、金価格が戻ってきたときに買い入れるべきだと考えている。外貨準備による金購入拡大について、外部には一貫して多くの意見がある。

外貨管理局は最近、「金、銀などの貴金属及び石油、鉄鉱石などの国際的な商品は価格変動が大きく、市場のキャパシティーにも限りがあり、取引とストレージコストが高い。また、中国の国民と企業は金、石油などに対する消費量が非常に多く、外貨準備がこれらの取引に直接、大規模に投入されると市場価格を押し上げ、かえって中国国民の消費活動と経済の発展に不利である」と答えている。

中国国際経済交流センター情報部の徐洪才副部長は本誌記者の取材にこのように述べている。「中国は金備蓄に対する態度を一貫して保留してきた。アメリカの金備蓄が多いのはアメリカの歴史がそうさせるのであって、外貨準備をすべて金に変えるのは現実的ではないし、不可能だ。だが、金には確かにリスク回避や投機といった効果もあり、結論としては多少多いくらいが適切だろう。市場で大量に買い付ける必要はない。金価格は既にかなり高く、今後さらに上がる可能性もあり採算に合わない。だから、購入は長期的な視点から考えるべきだ」。

多くの国々が金を買い入れる行動について、専門家は「金、銀は価値が下がることはなく、アメリカの8000トンの金備蓄はアメリカ国債の信用度を支えている。発展中の経済国は金の備蓄量をさらに増やす必要がある」と述べている。

民間と国家が共同で金を備蓄

中国は人民元の国際化の実現に努力しており、中央銀行の金保有量はいかなる角度から見ても少な過ぎるように見える。中国中央銀行がさらに多くの金を備蓄するのは大局の赴くところであり、問題はもし中国が大量の金購入に動けば、金の価格は必ず上昇し、購入コストを押し上げるという点にある。

景乃権氏は「今回の金融危機の中で、金の貨幣属性がはっきりと示された。金は経済が平穏な時には備蓄資産として貨幣化されないが、経済の衰退、危機或いは戦争時などには強い通貨として貨幣化される特徴がある」と述べている。

中国は金のこの二つの属性を十分利用し、動的、持続的かつ控えめなステップで外貨準備における金備蓄の割合を増加させ、国際的に見た備蓄構造を最適化し、金融体系のリスク対応能力を増すべきである」

景乃権氏はまた「金投資の種類を絶えず革新し、一般大衆にも金投資に参加させ、大衆を金の備蓄に誘導することが必要で、民間が保有する金と国家の金の備蓄を共同で行い、リスクや突発事件に対する国の対応能力を高めるべきだ」と提案している。

徐洪才氏は「貨幣体系が金本位制に戻る事はまずなく、米ドルが主導する国際通貨体系もまだ続くだろう。人民元の多元化は趨勢だが、短期間の内に米ドルの主導的地位が変わることも有り得ない。金で外貨準備を貯めこむことは必ず市場価格を押し上げるため、現時点で中央銀行がそうすることはまずあり得ず、一般大衆が少し多めに買うべきだ。理論上は金備蓄の割合は今より少し多いくらいが適当だ」と述べている。