北側 一雄 公明党副代表・衆議院議員
早期の訪中で 良好な日中関係の構築を!

公明党副代表の北側一雄衆議院議員は日中友好議員連盟(会長は二階俊博衆議院議員)副会長を長年務めており、訪中経験も豊富だ。先ごろ、衆議院第一議員会館を訪問し、国際交流の重要性、アジア・太平洋地域の安全保障政策、アフターコロナのインバウンド政策、そして今後の日本と中国の関係構築などについて、北側一雄衆議院議員にお話を伺った。

 

 

中国のソフト・パワーをもっと世界に発信すべき

―― 副代表は日中友好議員連盟の副会長であり、これまでも超党派で訪中されていますが、経済の発展状況など、中国にどのような印象をお持ちですか。

北側 これまで中国には何度も訪問させていただいております。近年、目覚ましい経済発展を遂げていることは、行くたびに痛感しています。始めていった頃はまだ自転車が多かったですが、今とでは全然違います。

国会議員になってから中国を訪問する機会が増えました。特に国土交通大臣就任以降は何度も行っています。国土交通省の所管する範囲は幅が広くて、カウンターパートの大臣が大勢いらっしゃるんです(笑)。建設、運輸だけでなく、観光もあります。大臣と会うだけでも、相当な数の人と会わなければなりません。当時、外交の責任者であった国務委員の唐家璇さんや、女性の副総理だった呉儀さんとも何度もお会いし、意見交換をさせていただきました。

中国では北京だけでなく、いろんな都市を訪問しました。大臣を終えてからですが、日中友好議員連盟所属の各議員と大勢のメンバーを引率して中国の各都市を訪れています。私の場合は100人近い団体で、杭州などを訪問しました。

特に印象深かったのは、中国の要人の方々にも申し上げたのですが、中国はとにかく歴史がすさまじい、それはほかの国にはあり得ない悠久の歴史です。例えば兵馬俑(へいばよう)――古代中国で死者を埋葬する際に副葬された俑(よう:兵士や馬をかたどって土で作られた素焼きの像)――を現地で見させていただきましたが、中国の古代からの歴史と文化に大変驚かされました。それは世界にはないものだと痛感しました。ものすごいソフト・パワーだと思うのですが、そういうものを中国は世界にもっと発信をしていくべきだと思います。

 

中国との友好交流を積極的に推進

―― ご自身のホームページに尊敬する人物として、中国の周恩来元総理を挙げていますが、公明党は日本の政党の中でも、特に中国との関わりが深いと思います。なぜ日中友好路線を歩んでいるのですか。

北側 中国は日本と隣接している国であり、大きな国です。昔から日中間には交流があり、時には良くないこともありましたが、隣国同士で引っ越しができない関係です。

ですから、経済面はもちろんですが、東アジア地域を含む国際社会の平和と安定という観点から考えても、日中間の連携、交流は絶対必要です。そういう思いで、われわれの先輩の時代から、中国との友好交流を積極的に推進しています。

 

東アジア地域の平和と安定に協力し合いたい

―― 副代表は公明党における安全保障政策の第一人者といわれています。連日のように北朝鮮によるミサイル発射が報道され、日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増していますが、アジア・太平洋地域における安全保障政策について、どのようにお考えですか。

北側 北朝鮮のミサイル発射、核実験は、日本はもちろんのこと、東アジアの国々にとって脅威といわざるを得ない状況があります。これは明らかに国連安保理決議に違反をしており、さらには従来のさまざまな2国間での約束、協定にも違反することですから、やはり許されてはならないと思います。

それは中国にとっても同じだと思います。中国も北朝鮮と隣接している国ですから、この北朝鮮の問題は、東アジア地域が平和で安定した地域になるように、日中間でも協力し合っていきたいと思っております。

 

 

交流することによって相互理解は深まる

―― 副代表は都内で開催された中国の呉江浩駐日大使の着任レセプションに出席されるなど、中国との交流を積極的に深められています。交流の重要性について、特に若い人たちの交流の重要性についてどのようにお考えですか。

北側 欧米に比べてアジア地域では、日本もそうですが中国も人間関係――特に信頼関係をものすごく重視します。

そういう意味で、交流はとても大事なことです。日本から中国へ、中国から日本へ、いろんなレベルで交流をする。政治レベルだけではなく、経済はもちろん、教育・文化交流も必要です。いろんな局面で、民間交流も含めてこれまで続けてきたわけです。

これをこれからも引き続き進めていく中で、青少年交流は極めて重要だと考えています。いずれわれわれは去っていくわけですから(笑)、若い人たち同士が交流し合って、中国の若い人が、また日本の若い人がどう考えているのか、どのような印象を持っているのか、そういうことを直接話し合い、肌で感じていくことは、とても大事だと思います。

観念的ではなく、人と人との出会いの中で、しっかりと友情をはぐくんでいただきたいと思います。これからもぜひ、青少年交流には力を入れて行くべきです。

 

「観光」とは「国の光を観る」こと

―― NPO法人が毎年行っている調査結果によると、日本人と中国人のお互いの好感度は年々下がっています。両国間の往来が減ってきていることも一因として指摘されています。今、まさにコロナ禍が収束に向かう中で、今後また日本を訪れる外国人も増えてくると考えますが、観光立国担当大臣を務められたご経験から、アフターコロナのインバウンド政策に対してどのような期待をお持ちですか。

北側 「観光」という言葉は、中国の四書五経の一つ「易経」にある「観国之光」(国の光を観[み]る)が語源とされていますが、それは「国の文化、政治、風俗をよく観察すること」、「国の風光・文物を外部の人々に示すこと」という意味です。

先ほどの兵馬俑の話ではありませんが、中国を訪問して観光地を訪れ、感銘を受ける、感動する歴史や文化はたくさんあると思います。日本にもそうしたものが数多くあります。

ですが、単に観光地を訪れて、あぁ良かった、楽しかったというだけではなく、それぞれの歴史や文化、伝統を知ることは非常に大事だと思います。そういう名所・財産は両国とも豊富であり、観光は国民間の相互認識、相互理解の促進にとても有意義だと思います。

中国の文化は古来より、大陸から朝鮮半島を渡って日本に伝わって来ました。裏を返せば、中国ではすでになくなってしまった伝統文化や歴史的建造物が日本に残っている場合が各所にあります。ですから、そうした両国のアイデンティティーを理解していく上でも、観光交流はものすごく有意義だと思います。

メディアで取り上げられる政治的な事象だけでお互いの不信感を募らせるのではなく、ぜひともコロナ禍以前のように、日本からも中国へ、中国からも日本へ、多くの方々が往来して、相互理解が深まるよう期待しています。

 

 

様々な課題を乗り越えて安定した関係を構築

―― 今年は「日中平和友好条約」締結45周年ですが、友好ムードはあまり高まっていません。今後の日中関係の構築について、どのようにお考えですか。

北側 今申し上げたとおり、隣同士の国というのは、歴史的にも様々な課題があって当然だと思います。それを乗り越えて、安定した関係にしていくことがとても重要です。

政治レベルで言いますと、わが党も近々訪中団が行くと思いますし、私自身、冒頭ご紹介いただいた超党派の日中友好議員連盟の副会長を長年務めさせていただいておりますので、議連としてもできるだけ早く訪中ができるように努め、そこで要人の方々とお会いして、良好な日中関係構築のために、忌憚のない意見交換をさせていただきたいと思います。