マスク氏の訪中が発するシグナルとは何か

米国の電気自動車(EV)大手テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は3年ぶりに中国を訪問した。今回の訪中は中国内外で広く注目を集めている。

 

中国はテスラの米国に次ぐ2番目の市場

海外では、「マスク氏の訪中は非常にタイミングがよかった。今のテスラにとって、以前にも増して中国を必要としている」との見方が一般的だ。

今や中国はテスラの米国に次ぐ2番目の市場で、上海工場の「ギガファクトリー」はテスラの世界最大の生産センターでもある。テスラにとって中国市場の重要性はもはや言うまでもない。

中国の秦剛国務委員兼外交部長と会談した際、マスク氏は「米中の利益は溶け合っており、結合双生児のようにお互いに離れることはできない」と独特のたとえを用いた。

またマスク氏は「テスラは『デカップリング、チェーン分断』に反対し、引き続き中国事業を開拓して、中国の発展チャンスを共有したいと考えている」と明確な態度を示した。

「デカップリング、チェーン分断」に反対する人が増え続けている。このほど行われた2023年グローバル貿易投資促進サミット開幕式では、多くの参加者が「デカップリング」はグローバル経済の発展に余計な負担を与えるだろうとの見方を示した。

ウォーレン・バフェット氏の古くからのパートナーでバークシャー・ハサウェイの副会長のチャーリー・マンガー氏は最近の株主総会で、「私たち(米国)がすべきことは中国と良い関係を築くことで、私たちは中国と多くの自由貿易を行う必要がある。これこそが私たちにとって共通の利益だ。これは私たちにより多くの安全と創造性をもたらすことができる。両国の間に衝突を作り出すすべての行為は愚かだ、愚かだ、愚かだ」と述べ、「stupid」(愚か)を3回連呼した。

多国籍企業は中国経済の見通しを楽観視

中国国際貿易促進委員会が5月30日に発表した「2023年第1四半期(1-3月)中国外資系企業ビジネス環境調査研究報告」によると、取材の対象となった外資系企業の8割以上が今年は対中投資の利益率が横ばいか上昇すると答え、9割以上が今後5年間の対中投資の利益率が横ばいか上昇すると答えた。また7割以上の企業が中国での産業チェーン配置は現状維持か現地化をさらに進めると答えた。

こうした事実とデータからわかるのは、多国籍企業が中国経済の見通しを引き続き楽観視していること、中国は引き続き世界の投資が集中する投資先であることだ。