日本の華人ビジネスマンの見た自身、中国、世界

新型コロナウイルス感染症流行後にバンコクで開催された第16回世界華商大会は、すべての参加者が協力と発展について話し合うための非常に重要で多様なプラットフォームを作り出しただけでなく、経済のグローバル化の波の中で、すべての華人ビジネスマンに新たな視点と思考の次元を提供した。華人ビジネスマンにとって、歩みを止めないのは、時代に対応し、時代の最前線で勇敢に立ち向かうことであり、絶えず新たな思考と探求を行うのは、発展の歩みをより確実に、より速くすることである。

大会期間中、日本中華總商会に割り当てられたテーブルが、最も交流が盛んな「人気テーブル」のひとつになっていた。これは日本中華總商会の重要性と影響力を示している。そこで筆者は、日本中華總商会のキーパーソンや会員企業に取材し、在日華人ビジネスマンのビジネススタイルを探った。

 

キーワード1「壮大」

日本中華總商会の蕭敬如会長、日本中華總商会評議員会の厳浩会長。一人は現会長、もう一人は創立時の会長である。日本中華總商会発展の意思決定者として、彼らは常に「ガイド」「リーダー」の視点を示してきた。

蕭敬如会長は、長引いたコロナ禍後の交流復活に興奮と感動を覚えたという。特に、世界華商大会が将来再び日本で開催され、日本企業と華人企業が強力な連帯を結び、日本中華總商会の目的である国際化・グローバル化の推進に向けて協力し合うことへの期待を表明した。

厳浩会長は日本中華總商会の会長を3期務め、世界華商大会には第5回大会以来参加、12回の大会に自ら立ち会ってきた。彼は3つの「感想」を語ったが、それは世界華商大会における3つの変化でもあった。

第一に、日本中華總商会の影響力が増し、世界華商大会でますます重視されるようになってきたこと。

第二に、中国本土から参加するビジネスマンが年々増加しており、世界華商大会と中国の新時代がより深く結びついていること。

第三に、世界華商大会に参加する第二世代、第三世代の若い華人ビジネスマンが増え続けており、世界の華人ビジネス界の継承は有望であり、さらに「壮大」なパワーを持つだろうということである。

 

キーワード2 「融合」

日本中華總商会の徐志敏常務副会長の見解によると、華人ビジネスマンの重要な特徴は、居住国に根ざし、地域社会に貢献しながらも祖国(母国)を忘れないことである。彼らはそこから世界経済の統合、国際化、グローバル化を促進してきた。

華人ビジネスマンが発揮するパワーは世界でも稀有なものである。日本中華總商会の船津康次常務副会長は以下のように分析している。

かつては「老華僑」と「新華僑」の境界についてよく議論されたが、1980年代にネット社会が出現すると、新華僑はビジネスツールを駆使してグローバリゼーションと国際的な多様化を推進するようになった。今回の世界華商大会は、華人ビジネスマンの力を世界に再認識させ、華人ビジネスマンが高度に統合され関与する「アジアの時代」が到来したことを示している。

また、日本中華總商会評議員会の陳熹常務副会長は、「海外在住の華人ビジネスマンはその国で、一人で発展しているように見えるかもしれないが、実際には彼らのルーツの延長線上に橋を架けているのであり、新たなルートを拡大しているのだ」と述べた。このような民間からの融合、ビジネスの融合は、世界経済学の章を書き換えたのである。

スピーチの中に真実は現れ、真実には思考が含まれている。日本を含む世界の華人ビジネスマンのルーツ、発展、強さは、再現不可能な闘争の歴史であるが、常に地域社会、祖国(母国)、世界と密接に関わってきた。

3人の副会長は、華人ビジネスマンの発展の「秘訣」と影響力について同じ見解を持っている。すなわち、時代がいかに変化しても、「融」と「合」は常に世界の華人ビジネスマンの天性の強みであり、その役割と使命は変わらないということだ。

 

キーワード3「テクノロジー」

日本中華總商会には、異なる分野で独自の視点を持ちながら、同じ重要なテーマに取り組む人材が揃っている。日本福建経済文化促進会の方永義常務副会長とベース株式会社の中山克成社長は、華人企業の上場企業の代表として、ハイテク分野における華人企業の役割についてそれぞれの見解を語った。

半導体企業のトップである方永義常務副会長は、半導体は「工業の食糧」として、どの国でも重要な役割を果たしているとし、米中の駆け引きや「デカップリング」のリスクがあるなか、華人企業は半導体にさらに注力し、「潤滑油」としてより良い役割を果たす努力をすべきだと述べた。

中山克成社長は、世界的にIT人材が不足しているなかで、中国は優秀なIT人材を大量に輩出し、「IT人材プール」にさえなっていると指摘。華人ビジネスマンは特別な架け橋として、中国のIT人材と世界のIT企業や市場とのドッキングを促進し、より良い発展と提携の展望を実現できるとした。

また、日本徽商協会の黄平理事長は、新世代の華人ビジネスマンはハイテク分野での展開を強化しており、この流れに積極的に対応し、ハイテクをより世代を超え、国境を超えるものにするために新たな試みを敢行すべきだと提案した。

世界華商大会を通して、また在日華人企業を通して、より多くの中国のハイテク人材が、競争が激しい経済のグローバル化に加わっており、半導体、IT、AIなどのハイエンド産業を、悪質な弾圧の対象ではなく、世界が福を享受できる産業にすべく推進しているという確信と期待を抱いた。

 

キーワード4「ビジョン」

世界華商大会は、課題を持参し、ビジョンを持ち帰るものだというのが、参加者たち共通の心の声であろう。日本の華人ビジネスマンのビジョンは、他のすべての華人ビジネスマンと共通しているに違いない。

新潟中華総商会の王裕晋会長は、「私は学ぶ気持ちでここに来たので、自分だけでなく、息子や妻も帯同して来た。手遅れになる前に、次世代の華人ビジネスマンを育成することが重要で、うまく継承できれば、華人企業はさらに大きく成長できる」と述べた。

日本上海総商会の朱映山副会長は、「私たち上海出身者は今の中国の長江デルタ地域で最も開かれた経済発展の最前線に立ち、『国際化』には特別な感慨を持っており、改革の深化、開放の維持、『デカップリング』に対抗する強固なサプライチォーンを堅持し、ウィンウィンの提携により『脱リスク』に対抗することを成し遂げられる」と述べた。

吉林大学日本商工連合会の辛赤邑会長は、華人ビジネスマンには、「成長への内発的原動力」があり、この原動力は、地域、血縁、業界、学歴、商売の5つの縁から生まれ、この 「5つの縁」の結び付きと相互作用によって、新時代の華人ビジネスが形成された。逆に、華人ビジネスマンもまた、この「5つの縁」のなかで欠点を補い、得意分野を強化し、新たな発展の道を切り開くべきであると語った。

日本天津総商会の孟慶祥会長は、「華人ビジネスマンは、世界のあらゆるビジネスグループやビジネスコミュニティの中で最も知的であることは誰もが認めるところだろう。生き残る知恵があると言う人、発展する知恵があると言う人、革新する知恵があると言う人、またハイテクとネットワークの世界において華人ビジネスマンは唯一無二の知恵の旗印になったと言う人もいる。今年の世界華商大会のテーマのひとつは『華人ビジネスマンの偉大な知恵を結集する』であり、これは総括であるにとどまらず、新たな知恵を鼓舞するものであると信じている」と述べた。

旅行家国際株式会社の郭聯輝代表取締役は、「私の考えでは、華人ビジネスマンの世界での活躍には『3つの宝』がある。一つは『努力』、二つ目は『勇敢』、三つ目は『忍耐』であり、この3つの宝は華人ビジネスマンの 『家宝』として継承していかければならない」と語った。

大会期間中、筆者はアラブ首長国連邦(UAE)文教協会の会長であり、現地の観光業界の実力者である唐振剛氏とも再会した。彼は、中国の観光業がコロナ禍から抜け出せば、爆発的に成長するだろうと自信たっぷりに語った。世界の観光経済が回復しているのは中国の観光経済の力によるものだ。中国観光業がさらに海外進出することを期待したい。

中国人の海外滞在者、特に大波を乗り越えてきた華人ビジネスマンは、地に足をつけ、前を見据えて、心の中に常に祖国(母国)と外の統合された世界とのつながりを持っており、それはその言動の端々に反映されている。

グローバルな中国ビジネス界の重要な一翼を担う日本のビジネス界は、仁愛に満ち、情義を重んじ、実務的、革新的で、理想を掲げ、大局を語っている。このような「家風」を継承し続ける限り、私たちは必ずや、このような華人ビジネスマンがかけた架け橋を基礎として、中日両国のより広い「友好の道」と「提携の道」を築くことができ、また、世界に新時代の日本の華人ビジネスマンの力を認識させ、華人ビジネスマンと中国を再認識させることができるはずである。