「西方人物絵画400年―東京富士美術館蔵精品展」 50年以上にわたる名士たちの物語

上海の宝龍美術館で開催中の「西方人物絵画400年」展には、東京富士美術館が所蔵する30000点の貴重なコレクションの中から、選りすぐりの57点が出展されている。その陰には、50年以上にわたる名士の物語があった。

「西方人物絵画400年」展 展示会場

 

東京富士美術館は池田大作氏によって設立

日本では、高度経済成長期に多くの西洋絵画の名作が収集されてきたが、400年~500年の西洋美術の歴史を体系的かつ完全に展示できるのは、東京富士美術館をおいて他にはない。それを可能にしたものは何だったのか。それには、まず、創立者の池田大作氏について語る必要がある。

池田大作氏は著名な思想家、作家、写真家として知られ、創価学会インターナショナル会長として、世界の恒久平和に尽力している。池田氏は1968年に「中日国交正常化提言」を発表し、1972年に中日の国交が正常化すると、周恩来総理は、民衆の中から立ち上がった団体である創価学会との間に交流のパイプをつくるよう指示した。

1974年12月5日、病身の周総理は、池田大作氏と北京の305病院で会見を行い、これが一期一会の出会いとなった。

1975年春、池田氏が創立した創価大学は、氏自らが保証人となって、戦後初となる中国からの国費留学生6人を受け入れた。

東京富士美術館は、池田氏が指し示した「世界を語り、世界と交流し、芸術と文化を通して世界平和に貢献する美術館」をモットーとして、1983年にオープンした。

東京富士美術館外観

 

ルーブル美術館絵画部長がコレクションに貢献

東京富士美術館は、長年にわたって、文化交流という高邁な夢を実現すべく、1985年の「中国敦煌展」、1991年の「中国陶瓷器展」、1994年の「現代中国巨匠書画展」、1996年の「北京·故宮名宝展」、2008年の「大三国志展」、2016年の「漢字三千年展」と、中国文化を紹介する数々の展示会を開催してきた。

「漢字三千年展」・オープニングセレモニー(2016年)

池田氏は、ナチスの手からルーブル美術館のコレクションを守ったことで知られる、フランスの美術史家でルーブル美術館絵画部長であったルネ・ユイグ氏と何度も会見し、二人は対談集も出版している。

ルネ・ユイグ氏と東京富士美術館の館長を中心とするスタッフがチームを組み、世界各地から作品を収集し、同館のコレクションは今日の規模に至り、ルネッサンスから20世紀モダニズムまで、西洋絵画の500年の歴史を辿ることのできる、日本で唯一の美術館になったのである。

 

中日文化交流を担う黄山美術社

本展示会の成功の陰には、ある中国人による周到な準備があった。その人こそ、株式会社黄山美術社の陳建中社長である。

陳建中氏は中国・安徽省の出身で、1991年に日本に留学し、その後、文化交流事業に携わったことを機に、文物・美術展の企画・運営に従事するようになった。

黄山美術社の陳建中社長

氏は祖国を胸中に抱き、中日文化交流の促進を旨として黄山美術社を創立し、「中国歴代王朝展」、「中国の世界遺産油絵巡回展」、「大三国志展」、「アフガニスタン国家博物館珍宝展」、「漢字三千年展」、「平山郁夫シルクロード文物展」、「地上の天宮北京故宮博物院展」等、多くの展示会を企画・運営し、成功に導いてきた。中でも、「大三国志展」及び「地上の天宮―北京故宮博物院展」の来場者は、100万人を超えた。

平山郁夫シルクロード文物展・オープニングセレモニー

来場者が100万人を超えた「大三国志展」

2006年、中国友好和平発展基金会と黄山美術社は共同で「海外文物回帰保護基金会」を創設し、明・清王朝時代の名家の絵画及び斉白石、呉昌碩、黄賓虹、黄胄、林風眠、傅抱石、程十発など近現代の絵画の巨匠の作品を日本から祖国に回帰させることに成功した。これに鑑み、中国人民対外友好協会から陳建中氏に「平和発展貢献賞」が贈られた。

さらに、2017年には「中華之光―伝播中華文化年度人物」を受賞している。

陳建中氏(左から二人目) 2017年度「中華之光―伝播中華文化年度人物」授賞式

陳建中氏は次にように語った。「文化交流は双方向であるべきです。近年、黄山美術社は中日両国の豊富な資源を統合し、中国で数多くの大型展示会を企画・運営してきました。この度の『西方人物絵画400年』展は、中日文化交流を深化させるものであり、本展示会が、ますます盛んな上海の国際文化芸術交流に貢献できることを願っています」。