ChatGPTの新たな課題にいかに対応すべきか

対話型AI(人工知能)のChatGPT(チャット・ジーピーティー)がこのほど、一夜にしてSNS上の話題をさらい、それに関する議論が巻き起こっている。

ChatGPTがもたらす

革命とは

次のAI革命の主役になると見られているChatGPTのユーザーはリリースからわずか約2カ月で、世界で1億人を突破した。

教育の分野においても、ChatGPTは革命をもたらすことになりそうだ。米国を見ると、ノーザンミシガン大学のある学生が、ChatGPTを使って哲学課の小論文を書いて提出し、クラス最高得点を獲得して教授を驚かせた。

またある調査では、米国の大学生89%がChatGPTを使って「宿題をしている」、53%が「論文を書いている」、48%が「テストの解答をしている」と答えている。

SNSでは、各種業界の人々がChatGPTの使用体験エピソードを紹介している。例えば、それを使って、学生は論文を書いているほか、個人メディアのブロガーは記事の広告文を書き、プログラマーはプログラミングをしている。さらに、業界の分析報告をまとめたり、翻訳をしたり、小説を書いたりするのに使用している人もいる。

ChatGPTにログインし、入力スペースに具体的な質問を入力すると、自然な言葉遣いで答えてくれる。実在する著名な文献を引用してくれることもあり、その文章は非常に知的だ。

 

ChatGPTの登場を

どのように受け止めるか

ChatGPTが幅広い分野で活用されるようになっているのは明白だ。では、私たちはChatGPTの登場をどのように受け止める必要があるのだろうか。

復旦大学コンピューター科学技術学院の彭鑫副院長は、「ChatGPTはスマートサポーター、または賢い秘書と見なすことができる。それは、分析したり、既存の知識をまとめたりすることを非常に得意としており、人と機械の会話というスタイルで、テキストやコンテンツを生成してくれる。顔認識といった既存の分析判別型AIと異なり、ChatGPTは生成型AIで、ビッグデータや高度な計算能力をベースとしたディープラーニング技術が新たな高みにまで発展したことを示している」との見方を示した。

華東師範大学メタバース・数智人実験室の首席専門家を務めるメタバース・バーチャルリアリティ聯合研究院の趙星院長は、「ChatGPTは、次々と発せられる質問に答えることができ、インターネットと人間のインタラクティブのスタイルに変革をもたらしたということができるだろう。インターネット上の人と人の交流から、本当の意味で人と機械のインタラクティブへと発展したと感じる」との見方を示した。

 

「カンニング神器」として

流行する可能性

ChatGPTはサプライズをもたらしている一方で、教育界の多くの関係者の心配の種ともなっているようだ。それを使って論文を書いたり、プログラミングをしたり、メールを送信したり、オンライン上での試験に解答したりと、「カンニング神器」として流行する可能性があるからで、欧米の有名大学が次々と「禁止令」を発表している。

さまざまな学問の世界の人々も、ChatGPTが登場したことで、現有の学術信頼体系が混乱するのではと懸念している。ChatGPTを利用して作成された学術論文について、現時点で学術誌「サイエンス」や「ネイチャー」、「セル」、「ランセット」などは、編集ルールをアップデートしている。

その主な内容をまとめると、「どんな作者であっても、発表する作品の責任を負わなければならず、AIツールにそれをすることはできないため、研究論文の著者名にどんなAIツールも記すことはできない」となっている。

彭副院長は、AIで絵画を生成することを例に挙げ、「AIは聡明なサポーターであるが、現時点ではサポーターにとどまっている。人間とロボットの役割分担は少しずつ変化しているが、たくさんの複雑な任務において、最終的な決定や責任は人間が負わなければならない。また、AIのいわゆる『創造力』にも限界がある」と説明する。

現時点で、技術が発展するにつれて、AIは様々な長所を取り入れて、違和感のないスタイルで加工、集約し、イラストや画像を生成して、コンテストで賞を受賞することができるようにまでになっている。普通の人では、それがAIの生成した作品であるかは判別できないため、「創作」されたということができるかもしれない。

 

AIの突きつけられる課題

華東師範大学の課程と教学研究所の楊暁哲准教授は、「AIは歴史上の知識や経験に基づいてしか、回答を生成することができないというのも非常に重要な点だ。専門的な分野の推論能力は備えていない、端的に言えば、新たな問題については、AIは今何が必要かを的確に判断することはできない」と話す。

例えば、ChatGPT自身、「すいません。2021年のAI言語モデルまでしか習得していないので、2023年のことは分かりません」と認めている。AIはますます賢くなっているが、それが人間に取って代わることは決してできない。

また、楊氏はAI医師を例に挙げ、「医療AIの技術がどれほど高くなっても、患者に寄り添う気遣いや医者と患者の関係に対する理解、処理といった面で人間の医師を超えることは決してできない」と語り、ChatGPTについて、「本当の意味でケースバイケースで活用し、人間の全面的な発展を促進するようにしなければならない。それにより、教育が変わり、何か行動することができれば、人とロボットの協同が、学校の発展における新たな形態となるだろう」との見方を示した。