里見隆治 参議院議員
日本と中国が協力して 共通課題の解決に取り組むべき

公明党の里見隆治参議院議員は現在、経済産業・内閣府・復興大臣政務官として国政に奔走する中、「愛知から日本の未来をひらく」との信条を持ち、地元で開催される中国関連のイベントにも積極的に参加し、交流を深めている。このほど、参議院議員会館を訪問し、中日経済の在り方、国際間交流と青少年交流の重要性、そして今後の中日関係の構築について伺った。

課題に対する国際的な

ルールづくりと行動を

―― 米中関係が緊張を増す中、日本が直面する世界経済環境は厳しさを増しています。日本は米国との協調を進めていますが、今後の日中経済のあり方について、どのようにお考えですか。

里見 私は1995年に中国・深圳を訪問しました。友人が現地の日系企業で働いていたこともあり、初めての中国訪問でした。深圳は、当時から経済特区として非常に先進的な取り組みをしている地域でしたので、今の中国の経済発展を予期させるような胎動を目の当たりにして大変な刺激を受けたことを覚えています。

それから20年後、国会議員になる前、トヨタ自動車に出向中の2014年に出張で北京、上海、蘇州を訪問しました。深圳では経済発展の胎動が見られましたが、各都市でも日中の経済の関りが深化していると感じました。

現在、米中間で先端技術の競争、国際社会間で懸念事項での意見の対立がさまざま見られます。日本、米国そして中国を含め、国際社会全体にかかわる問題ですから、引き続き関連の動向を注視していく必要があると思います。

中国は日本にとって最大の貿易相手国です。中国に進出する日系企業や駐在する日本人社員も極めて多く、中国との経済関係について、日本全体の国益に資するような形で対話と実務協力を適切な形で進めていく必要があると考えています。日本と中国はお互いにかけがいのない存在として、課題に対する国際的なルールづくり、そしてそれを守っていく行動様式が求められていると思います。

 

建設的かつ安定的な

日中経済関係を構築

―― 近年、国際的なエネルギー情勢が大きく変動する中で、気候変動対策は世界共通の課題となっています。持続可能な経済回復を達成していくために、日本と中国、アジアなどで国際協力を進める必要性について、どのようにお考えですか。

 里見 中国との経済関係は、2022年11月にタイ・バンコクで開催された岸田総理と習近平国家主席との日中首脳会談において岸田総理から言及がありました通り、透明・予見可能かつ公平なビジネス環境の確保と、環境・省エネを含むグリーン経済や医療・介護・ヘルスケアなどの共通の課題を抱える分野において協力をしていくことが重要だと考えます。

私も昨年8月に経済産業大臣政務官を拝命し、中国を含むアジアとの経済的な連携・協力にコミットしています。9月にはタイでAPEC中小企業担当大臣会合にも参加しましたし、カンボジアが議長を務めたASEAN+3のエネルギー大臣会合を通じて、日中を含むアジアの経済連携・協力を進めていくことを確認し合いました。

気候変動については、「第16回日中省エネルギー・環境総合フォーラム」が2月11日に開かれ、日中双方の企業間でマッチングイベントを開催するなど、省エネ環境分野における日中協力に向けた取り組みが双方の努力により精力的に進められています。今後の国際経済秩序の行く末を見ながら、建設的かつ安定的な日中経済関係の構築に向けて、一層取り組みを強化していきたいと考えています。

 

中部圏・北陸圏を含む

広域的な観光基盤を整備

―― 愛知県には中部国際空港があり、世界に誇れる産業や観光の名所も多く、多くの中国人が訪れています。愛知の魅力について、アフターコロナの観光政策について、どのようにお考えですか。

 里見 愛知県はこれまで何十年にもわたって、中国・江蘇省、広東省との交流事業を進めています。

私の住む岡崎市は、NHK大河ドラマ「どうする家康」の徳川家康の生誕地として有名で、中国の呼和浩特(フフホト)市と友好都市交流をしています。呼和浩特はモンゴル語で「青い城」と言う意味で、都市全体が緑に覆われていることが由来だそうです。実は、岡崎市も非常に緑豊かな都市で、岡崎公園は岡崎城を中心とした歴史公園であり、「日本さくら名所100選」にも選ばれています。さらに愛知には日本有数の名城・名古屋城や国宝・犬山城もあります。城というのは、戦国時代は戦いの拠点でしたが、現代では平和のシンボルとして、人が集う拠点、観光拠点になっています。

また、インバウンドを推進するための「昇龍道」プロジェクトがあります。中部国際空港に降り立ったのちに、愛知県から三重県、岐阜県、そして北陸に向かって昇り龍のように北上していく観光の広域的取り組みです。

日本にはそれぞれに特徴のある魅力的な地域が多いですから、北陸に行けばスキーも楽しめますし、岐阜の山間地では旧来の歴史を感じるような古民家の集落があり、愛知県には近代的な産業都市があります。

多くの海外の皆さまに中部国際空港をご利用いただいて、中部圏・北陸圏を含めて広域的にお楽しみいただくための観光基盤を整えていきたいです。

コロナ禍によって来日観光客数は激減しましたが、アフターコロナにおいては、ビジネスであれ観光であれ、さまざまな目的で来客数が大きく回復することを大いに期待しています。

両国の未来を担う

若い世代の交流は重要

―― 今年は「日中平和友好条約」締結45周年です。国際間の交流、とくに青少年交流の重要性について、どのようにお考えですか。

 里見 日中両国は1972年の国交正常化、そして1978年の平和友好条約締結以来、経済、文化、そして人的交流など、幅広い分野で着実に関係を発展させてきました。様々な可能性・課題がありますが、国と国との関係は人と人との関係が基本になりますので、特にこれから両国の未来を担う若い世代の交流は大変重要だと思っています。

昨年11月、岸田総理と習近平国家主席との首脳会談の際にも、青少年を含む国民交流をともに再活性化させていくことで一致しました。

青少年交流の重要性は、自身の経験から実感しています。1985年、大阪の関西創価高校在学中に中日友好協会の訪問代表団の皆様を歓迎する式典に参加しました。先輩世代から、困難な時代を経て日中国正常化に向けてどのような努力をされ、現在までつなげてこられたのかという思いをお聞きし、高校生だった私も先人の苦労があって今があるのだと認識しましたので、青少年を含む国民交流が非常に大事だという事を私自身実感しています。

昨年12月に中国駐名古屋総領事館と愛知県日中友好協会、岐阜日中文化交流協会との共催で「中日青少年漫画コンクール2022」が開催され私も参加いたしました。このコンクールのテーマは、日中国交正常化50周年記念と第19回杭州アジア競技大会でした。アジア競技大会は4年に一度開催されるアジア最大のスポーツの祭典ですが、2026年には愛知・名古屋で第20回大会が開催される予定です。若い世代が文化・スポーツで連携していくことはとても大事だと思います。

私は厚生労働省勤務の時代、日本で就労するために来られる外国人の支援をしていました。2009年、インドネシア、フィリピン、その後ベトナムから看護師・介護士を受け入れる事業が始まり、その担当室長となりした。実はそのプログラムが始まる以前に、中国から看護師の候補生を受け入れ、日本語を学び、看護師国家試験に合格するというプログラムがあり、参考にしました。

日本で生活する上で、日本語の習得が働きやすく生活しやすい環境づくりに大きな影響があることを身にしみて感じましたので、2019年に「日本語教育推進法」が議員立法で成立しましたが、私もその提出、成立に向けて活動しました。外国の皆さんが来日に際して、まず母国で日本語を学習しやすい環境づくり、そして日本に来てからも日本語を習得しやすい社会づくりに取り組んでいます。こうした動きの原点となったのが、中国からの技能実習生や看護師の受け入れでしたので、中国とのご縁を感じています。

 

若い世代につなげて

友好的に交流を進める

―― ここ数年、新型コロナの感染拡大やウクライナ危機など、世界情勢はこれまで経験してこなかったリスクに直面しています。今後の中日関係の構築について、どのようにお考えですか。

里見 先日、公明党の山口那津男代表、そして私も都内で開かれた中国の孔鉉佑駐日大使の離任レセプションに出席しました。その際、日中関係について、山口代表は「公明党は国交正常化以来、一貫して友好的に中国との交流を続けてきた。これからも若い世代につなげて交流を進めていく」と挨拶されていました。私もまったく同じ気持ちです。

様々な課題や可能性がありますが、日本も中国も地域及び世界の平和と繁栄に対しては、それぞれが非常に存在感のある国として大きな責任を担っていると思います。したがって日本と中国との関係も、双方がお互いの考えを述べ合い、また責任ある行動もそれぞれに行いつつ、しっかり対話を重ねていくことが大事だと考えています。

気候変動、エネルギー、環境問題などの課題については、国を超えて取り組むべき課題ですので、共通の課題については協力・連携して対処していかなければならないと思います。