中国人民銀行(中央銀行)が発表した統計によると、2022年、人民元建ての預金残高は前年比6兆5900億元(約129兆円)増の26兆2600億元(約509兆円)に達した。うち、住民預金残高は前年比7兆9400億元(約154兆円)増の17兆8400億元(約346兆円)に達した。
「必要以上の貯蓄」現象
2021年に2万人以上が回答したある調査によると、老後のための貯金が中国の若者(18歳から34歳まで)の間で日増しに重視されるようになっており、貯金率は2018年以来の最高を記録した。同世代の回答者の76%は、預金残高が増えた理由について、「緊急時対応のため」と答えた。
経済学界では、中国で現在、預金残高が急増している現象を、「必要以上の貯蓄」としている学者もいる。
中国人民大学の大学院常務副院長の陳彦斌氏は、「2022年に、住民の間で『必要以上の貯蓄』現象が発生したのは主に、住民の消費意欲が低下したのに伴って貯蓄が増えたから」との見方を示した。
具体的には、▽新型コロナウイルスの影響で、オフライン消費シーンがかなり制約された▽不動産市場の景気が悪くなった▽銀行の資産運用商品の収益が減少した……といった原因で、住民の不動産購入や資産運用商品への支出が減り、予算残高が増加したと分析している。
上の世代の人々が将来のために貯金をしていたのに対して、90後(1990年代生まれ)や00後(2000年代生まれ)の多くは、将来により上手くお金を使うために貯金していると言えるだろう。
「痛みを伴わない貯金」法
さらに、若者らは「痛みを伴わない貯金」法を編み出している。それは、目標を高くせずに、毎回少しずつ、小まめに貯金して、いつの間にかお金が貯まっているという方法だ。若者は、「痛みを伴わない貯金」法を、「365日貯金法」、「木魚貯金法」などとネーミングし、ある程度お金が貯まってから好きな物を買っている。
「貯金にもセレモニー感が必要」と話す医薬品業界で働く白雯欣さんは、今年の預金残高の目標を5万元としており、電子版の「貯金計画(2023)」を作成し、36回に分けて貯金する計画を行い、52週間の預金目標額を設定している。
自分の生活費をうまく活用するために、張小雨さんは実店舗で服を買うことはほとんどなく、日用品の多くはネットで購入し、すぐに必要としない物は割引になるのを待って購入するという。
今年の春節(旧正月、1月22日)前に、莫星さんは貯金5万元(約100万円)の目標を達成。春節期間中に、それを両親のブライダル写真撮影や人間ドックに当てたという。
そして、連休が終わると、預金残高はまた4桁に戻っていた。それでも、両親がとてもうれしそうなのを見て、「必要なものばかり。自分で貯めたお金を使ったので、とても達成感がある」と充実感を漂わせていた。
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