宮﨑 政久 衆議院議員
日本と中国は課題解決に向けて共に歩むべき

宮﨑政久衆議院議員は長野県で生まれ、大学卒業後、司法試験に合格し、司法修習生として配属された沖縄の地で、「将来は沖縄で土に還る」と決めて弁護士をスタート。現在、20年近い弁護士の経験を活かし、「ハタラク」政治家として活躍している。先頃、衆議院議員会館を訪ね、中日経済の重要性やアフターコロナの観光政策、今後の中日関係の良好な構築などについて伺った。

地球規模の課題の解決に

向けて共に努力する

―― 対中国の経済交流には、日米連携の政策との統合性が問われていますが、中日米の関係において、中日経済の重要性をどのようにお考えですか。

宮﨑 日中経済の重要性は極めて高いと思っています。日本の主要貿易国であるアメリカとの経済連携を見た場合、基本的に自由貿易の論理に従っていますが、同様に、中国とも自由貿易を原則として、ともに経済の発展を果たしていければいいと考えています。

そのため、中国に対しては、不公正な市場環境にならないよう求めたいです。日本と中国では、政治経済体制が異なりますが、日本の立場から見ると、中国の国有企業に対する政府補助金等は、自由競争を損ねているように見えます。

そうした観点から、自由貿易の論理とどのように整合性を図るのか、各国間でどのように利害を調整していくのかは今後の課題だと思います。ただ、日本と米国ですら歴史的に貿易不均衡の問題が存在してきました。そのため、利害の調整には継続的に話合いを続けていく必要があります。

しかし、利害が一致できる課題もあります。気候変動など地球規模の課題です。短期的な視野に立てば、各国の利害は一致しない部分はあるかと思いますが、長期的な視野に立てば、我々人類がこれからもこの星で暮らしていくためには、必ず解決しなければならない課題です。そのためにも、各国と連携を図ることは重要です。もちろん、中国とも協力し合うことが重要だと思います。

こうした協力を進めて行くには経済連携とも大きく関連しています。自由貿易の枠組でどのように進めていくのか。地球規模の課題を解決するために、各国の利害の垣根を越えて、相互理解を深め、最終的に利害を一致しなければいけない課題だと考えています。

 

地域全体としての

安全保障を図る

―― 度重なる北朝鮮によるミサイル発射など、日本を取り巻く安全保障環境が不確実性を増している中、日本は日米安保体制を強化しようとしていますが、アジア・太平洋地域における安全保障政策について、どのようにお考えですか。

宮﨑 国土を守り、国民の生存を守ることは、国家の最大の使命です。現在、北朝鮮が過去に例を見ない頻度でミサイルを発射しています。中国も、軍事費を増大させて、各種装備の充実を図っています。

そうした安全保障環境において、日本も、自国を平和と独立を守るため防衛力を整備することは必要不可欠です。

他方、それが軍拡競争になっては意味がありません。外交や民間レベルでの相互交流による相互の信頼関係を構築して、地域の安定を図る必要があります。日本と北朝鮮との間では、そうした関係構築はなかなかできませんが、中国とは外交や民間レベルでの相互交流は可能です。そうした活動を通じて、中国との関係をより安定的にすることは可能です。

一方、ミサイルの発射を繰り返す北朝鮮に対しては、不測の事態に備え、抑止力を維持しないといけませんが、単に一国としてそなえるだけではなく、地域全体としての安全保障を図っていくことが必要です。

日本や中国に限らず、アメリカや韓国、オーストラリアなど関係各国と連携をし、地域の安全保障環境をより安定的にしていくよう努める必要があります。

 

観光の価値を再認識し

クオリティーを上げる

―― 長引くコロナ禍で日本の観光産業が打撃を受ける中、沖縄の文化を体験してもらい観光の魅力をPRするイベントが本年7月、中国の北京で開かれました。アフターコロナの観光政策について、どのような取り組みを考えていますか。

宮﨑 沖縄は、いい意味で中国から最も影響を受けている日本の地方都市です。沖縄県は、かつて琉球王国という国家を形成していました。琉球王国は、小さな島国でしたが、日本や中国という大国に対して決して卑下するのではなく、誇りと知恵を持って生き抜いてきたキングダム[王国]でした。その時代から続く中国との深い関係は現代でも続いています。

例えば、福建省との関係を見ると、1000年以上にわたって長い交流の歴史があり、福建には琉球の人たちのお墓がたくさんあります。今も祀っていただいていることに対して、我々は感謝しています。要するに、琉球王国の時代から、沖縄と中国の交流は、日本のほかのどの都道府県よりも深く、友好的だということです。

そのため、コロナ以前にも沖縄には中国から多くの観光客が来ていました。しかし、アフターコロナの観光政策については、コロナ前に戻せばいいというものではないと思います。バージョンアップすることが重要です。長引くコロナ禍の間、不要不急の外出を控えるなどの行動制限などから改めて移動する楽しさ、外食の喜びを学んだと思います。

観光の価値を再認識し、接客一つをとってもコロナ禍以前よりもクオリティーの高いものを提供する。そうした一つ一つを「バージョンアップ」することを目指すことにより、クオリティーの高い観光事業を提供できるようになるのではないかと思います。

 

平和的外交を進めて行く

努力を怠ってはならない

―― 2022年は中日国交正常化50周年の記念すべき年ですが、両国の友好ムードは高まっていません。その原因をどのようにお考えですか。

宮﨑 なかなか難しい問題ですが、政治的な面からより友好的な関係を構築していくことが、我々政治家に求められていると思います。例えば、軍事面について日本から見ると、中国の軍事費の増大等について不透明な点が多く、その結果、不安感を抱いくことに繋がっています。そうしたことが友好ムードの高まりを伸ばし切れない一つの要因になっているのかもしれません。

しかし、相互に連携していかなければならない課題等は多々ありますから、政治家、特に首脳同士がより交流を深めていくことが必要だと考えます。

今、両国の国民同士が反目し合うような具体的な事象が起きているわけではありません。まずは両国のトップがそれぞれの扉を開き、よりよい友好関係構築を目指すべきであり、そのための環境整備も必要です。

50年前、当時の田中角栄首相と周恩来総理は人民大会堂で盃を交わし合いました。田中首相は、「日中の国交が成立して、相互に繁栄していくことは、両国だけでなく、アジアや世界全体の平和や発展をもたらすことは間違いない」と述べ、周恩来総理は、「井戸を掘った人の恩を忘れてはいけない」と述べました。多くの日本国民もそう思っていたし、今もそう思っています。

我々は、その思いを忘れてはいけないし、継承していかなければなりません。あの当時の歴史の扉を開いた先人たちの労苦にならって、平和的外交を進めていく努力を重ねないといけないと考えています。

直面する課題可決に向けて

両国は知恵を出し合うべき

―― 中国と日本は交流の歴史も長く、一衣帯水の隣国です。今後、中国とどのように良好な関係を構築していくお考えですか。

宮﨑 日本も中国も、さまざまな課題を抱えています。両国に共通する課題もあります。こうした課題に対して、これまでの長い交流の歴史を踏まえて、互いの知恵を出し合って課題の解決に向け、それを通じて良好な関係を構築していくことが重要です。

例えば、少子高齢化の問題があります。これは日本が今、世界で一番進んでいる大問題ですが、中国もこれからどんどん少子高齢化が進みますね。中国の人口を踏まえると、日本とは規模が違います。

また、都市化がもたらす課題も多くあります。地方との格差や環境問題です。こうした課題をどのように解決しながら都市化を進めていくのかなども、両国に共通する課題だと思います。こうした共通の課題を抱える両国が、これから良好な関係を築く上で、課題解決に協力していくことが重要ではないかと考えています。

課題の解決に向けて、ともに知恵を出し合っていくことは、非常に古くて、そして、新しい友好の証になるのではないかと思います。