本庄知史 立憲民主党副幹事長 衆議院議員
東アジアの平和と安定に中国も責任あるリーダーシップを発揮してもらいたい

本年は中日国交正常化50周年の記念すべき年だが、一昨年来のコロナ禍で、両国間の国民交流はほぼ途絶え、祝賀ムードも高まりを見せていないが、中国にとって日本は米国に次ぐ二番目の貿易相手国で、日本にとって中国は最大の貿易相手国として、経済関係を強化してきた。先頃、衆議院議員会館に立憲民主党副幹事長の本庄知史衆議院議員を訪ね、中日経済の重要性、東アジア地域の安全保障や今後の両国関係のあり方などについてお話を伺った。

 

ウインウインの関係拡大が

各国、世界にとって重要

―― 本年は中日国交正常化50周年の記念すべき年です。両国の経済関係はこの50年で大きく変化しました。中日経済の重要性についてどのようにお考えですか。

本庄 まずはこの50年、時にはいろんな困難もありましたが、日本と中国が平和裡に豊かさをともにできたことは、非常に意義があったと思います。

近年、特にこの10年、中国は飛躍的な発展を遂げ、今やGDP世界第2位の経済大国となり、日本と中国の経済関係は、切っても切れないものになっています。これをお互いにさらにメリットがあり、持続的な関係に育てていくことが一番大事なことです。

日本にとって、米国も極めて大事な国ですが、米国か中国かという二者択一ではなく、両国ともに大事です。さまざま複合的なウインウインの関係を拡大していくことが、各国にとっても、地域にとっても、世界にとっても重要です。

もちろん、政治的に個別の問題はさまざまありますが、大きな視点に立って、一つ一つの問題を乗り越え、両国の関係を発展させることが大切です。

 

中国が国際社会に果たす

役割は極めて大きい

―― 度重なる北朝鮮によるミサイル発射など、日本周辺の安全保障環境が厳しさを増す中、東アジア地域における安全保障政策についてどのようにお考えですか。

本庄 東アジアの安全保障環境は、非常に緊張感が高まっています。日米同盟がこの地域の平和と安定の礎であるとわれわれは位置づけてきました。それは今も変わっていません。誤解がないように申し上げますと、日本が軍事大国になるということではありません。日本と米国が同盟関係を堅持していくことが、この地域の平和と安定にとって重要だということです。

その上で、軍事面における中国の急拡大が、この地域のパワーバランスを大きく変えてきているのも事実です。中国自身も理解していると思いますが、「力による現状変更」の試みは、国際社会として受け入られません。この地域で緊張感を高めるような軍事的な行動は、各国が慎む必要があります。

北朝鮮の度重なるミサイル実験は看過できませんし、核実験もあってはならない。この点は中国も同じ問題意識を持っていると思いますので、日米中がしっかり情報共有しながら、北朝鮮の暴挙を止めていく。そして、北朝鮮が平和国家に転換していくために、日米中が力を合わせていくことが重要です。

いずれにしても、経済だけでなく、安全保障の面においても、中国が東アジアにおいて、さらに言えば、国際社会に果たしている役割は極めて大きいですから、世界の平和と安定、そして東アジアの平和と安定のために、責任あるリーダーシップを発揮してもらいたいと思います。

 

―― 安倍元総理の「台湾有事は日本有事」という発言がありましたが、どのように考えていますか。

本庄 これは日中双方にとって非常にデリケートな問題です。「四つの政治文書」、それから「一つの中国」が両国の長年の共通認識ですから、それを前提に申し上げます。

第一に、台湾有事を引き起こしてはいけない。第二に、万が一台湾有事が起きたとしても、それを日本有事にしてはいけないということです。

したがって、台湾有事イコール日本有事というのは、日本にとっては最も招いてはいけない事態ですし、そのことを殊更に日本の政治家が公言するのはいかがなものかと私は思っています。

 

環境分野や医療分野で

日中は共同で研究開発を

―― 近年、中国は科学技術立国を掲げ、経済成長を遂げて来ました。日本は科学技術の先進国だと思いますが、科学技術の振興と両国の協力についてどのようにお考えですか。

本庄 現在、経済、軍事と並んで科学技術の競争は、各国間で熾烈を極めています。しかし残念ながら、国の予算やマンパワーにおいて、日本は米国、中国に大きく後れを取っています。これは日本の大きな課題です。

防衛費を2倍になどという声も国内にありますが、私は人への投資、教育や科学技術への投資こそが、将来の日本の発展を大きく左右すると考えています。10年、20年、土地を耕すように、人を育て技術を生み育てる長期戦略を持つことが重要です。

日中の協力に関して言えば、例えば、気候変動問題をはじめとした地球環境の分野、さらには感染症など医療の分野といった人類共通の課題について、人材の交流や知見の共有ができればよいと考えています。

 

インバウンド政策において

両国政府は最大限の努力を

―― コロナ禍の長期化によって、日本の観光産業は大きな打撃を受けました。アフターコロナの観光政策について、何か秘策はありますか。

本庄 今はこれといった秘策は無いのが実情ではないでしょうか。ですが、まず、インバウンドをコロナ禍以前の水準に戻すことが必要です。これはコロナ禍が収束すれば可能だと思いますし、その時が出発点になります。

その次に、日中間の往来の格差を是正することです。これまでピーク時で、中国から約960万人が来日していますが、日本から中国へは二百数十万人に留まっています。これは、政治的な両国の関係が大きく影響しており、個人レベルでもお互いの好感度が年々下がっているという調査結果もあります。これをどうやって埋めていくかが、今後の大きな課題だと言えます。

日本政府が「観光立国」日本を掲げるのであれば、お隣の中国は大切なお客様ですから、ウインウインの関係を築けるように、両国政府がインバウンド政策において、政治的・外交的にも最大限の努力をしていくべきです。

 

民間レベルの往来を再開し

良好な国民感情を醸成

―― 2020年11月、枝野前代表は中国の孔鉉佑駐日大使と会見し、「立憲民主党は中国との関係を重視している。中国と共に引き続き政党間の交流を進め、理解と相互信頼を深め、両国と地域各国の新型コロナウイルス予防抑制と交流再開、経済回復のために共に努力したい」と表明しました。立憲民主党は今後、中国とどのように良好な関係を構築していくお考えですか。

本庄 日本政府、政党あるいは議員個人がそれぞれさまざまなルートで人間関係を構築していくことが大事で、立憲民主党としても、中国との友好交流を深めていくことは非常に重要です。

私自身は、特に地方政府の幹部や地方都市との交流も非常に重要だと考えていまして、岡田克也幹事長がそうでしたが、中国を訪問するときは、必ず北京プラスもう一つ地方都市に足を伸ばすのです。

国会議員になる前、秘書として、私もよく同行したのですが、例えば、万里の長城の最東端にある中朝国境の町、丹東まで行って、川を船で周遊したり、対岸の北朝鮮を眺めたりしたものです。

今から20年ほど前、中国・河南省の小さな町の小学校を視察したことがありました。そこは省都・鄭州からずっと南に下がった信陽市羅山県という田舎の小さな村だったのですが、みんな生き生きと勉強していて、日本の小学生も見習った方がいいなと感じたことを覚えています。

私は、首都や大都市だけではなく、こうした地方都市や農村を含めた日本と中国の幅広い交流を継続してくことが大事だと考えています。

政府間ではさまざまな問題が起きた時に、対話が途切れたりすることが往々にありますが、政党や個人間ではそうしたことは関係なく、水面下で交流を継続することができます。

先程お話ししましたが、コロナ禍の観光政策について、日本も結構厳しくしてきましたが、中国はさらに厳しく、日中間の観光交流が途絶えてまもなく3年を迎えます。そろそろ扉を開ける時期が来ているのではないでしょうか。

大切なことは、ただ単にインバウンドを復活させるとか、経済交流を再開するとかだけではなく、やはり両国周辺の平和な環境を維持すべく、政府間での対話を進めて行かなければなりませんし、民間レベルでの往来を再開させ、良好な国民感情を醸成していくことだと思います。