羅華慶:輝かしき文明 素晴らしき世界
敦煌研究院と平山郁夫シルクロード美術館が3度目の共同展「燦然と輝く記憶:メソポタミアからガンダーラまで——東方文明古国冶金術展」を開催

8月18日、敦煌研究院と平山郁夫シルクロード美術館による共同展「燦然と輝く記憶:メソポタミアからガンダーラまで——東方文明古国冶金術展」が敦煌研究院敦煌石窟文物保護研究陳列センター2階展示ホールで開幕した。

敦煌研究院と平山郁夫シルクロード美術館の麗しい友誼の歴史は、1970年代に遡る。

遥か古より、敦煌は常に東西文明の十字路であり、「砂漠のギャラリー」は人びとを魅了してきた。日本の国宝級画家である平山郁夫氏は、シルクロードの遺跡を視察する中で、敦煌が東西のシルクロード交流に果たしてきた重要な役割、さらには、敦煌がシルクロードの東端である日本の文化の淵源となっていることを知り、敦煌は平山郁夫氏の憧憬の地となったのである。

1979年9月19日、平山郁夫氏は美知子夫人を伴って、初めて敦煌莫高窟を訪れた。当時の敦煌文物研究所の所長であった常書鴻氏と李承仙夫人が「ガイド」を務めた。平山郁夫夫妻は李承仙夫人と共に陽関や南湖人民公社にも足を運び、当時の敦煌文物研究所の食堂で夕食会が催された。

40年後、国家指導者が敦煌研究院を訪れ、秘蔵の文物や研究成果の展示を視察するとともに、専門家、学者、文化部門関係者の代表と懇談を行い、「研究院には、今後も国内外の文化交流を図りながら、様々な形で展示会活動及び文化交流対話を推進していただきたい」と期待を寄せた。

敦煌研究院の羅華慶副院長は、「交流」と「対話」を自身の任務としてきた。

1983年7月28日、羅華慶氏は著名な学者である寧強氏と共に、列車で敦煌にやってきた。これまでの40年間、氏は党関連を除くほぼすべての部署を経験してきた。歴史の専門家として、必要とあればフロントの仕事も管理部門の仕事もこなした。「院が必要とするのであれば、どこで仕事をしても同じです」と話す。

当展示会の企画に携わった羅華慶副院長は、オープニングに駆け付けた平山郁夫先生の義理の娘である平山東子氏に感謝の思いを込めて、次のように語った。

「平山郁夫先生は平和を愛し、シルクロードの文化財の保護に生涯を捧げられました。それらの文化財の多くは国や地域の動乱によって世界に流出したり、盗み去られたものでした。先生は戦乱によってほしいままにされた、国の文化のルーツや記憶を宿した文化財を祖国に返還してこられました。アフガニスタン紛争の最中、平山郁夫先生は自身が保護した200点以上のアフガニスタンの文化財をアフガニスタン国立博物館に返還し、国際社会から高く評価されました」。

大型の国際展覧会の開催が困難になっている昨今、平山郁夫シルクロード美術館の所蔵品が再び敦煌でお披露目されることとなり、感慨もひとしおである。

羅華慶副院長は3度の展覧会を想起しながら語った。「莫高窟は東西文化の出会いと融合のモデルの地であり、平山郁夫先生のコレクションをシルクロードに迎えることは、われわれの共通の願いでした。2018年に開催された敦煌研究院と平山郁夫シルクロード美術館の共同展『平山郁夫のシルクロード世界——平山郁夫シルクロード美術館文化財展』は大盛況でした」。

「2018年9月に開催された、『第4回シルクロード(敦煌)国際文化博覧会・世界文化遺産保護と持続可能な観光発展に関する国際シンポジウム』には、日本から青柳正規前文化庁長官が出席し、平山郁夫シルクロード美術館の平山東子館長と共に、敦煌国際エキシビションセンターで趙声良院長と会談し、友好を深めるとともに、莫高窟でシルクロード古代ガラス展を開催することで合意し、両者は展覧会に向けて精力的に準備を進め、2021年8月、2度目の共同展となる『琉光溢彩——平山郁夫シルクロード美術館古代ガラス珍品展』が開催されました」。

「古代ガラス展の開催と並行して、われわれは平山郁夫シルクロード美術館及び株式会社黄山美術社と共に、次なる展示会を協議・企画し、最終的に平山郁夫先生が『玄奘三蔵のたどりし道』で収集した古代の金属器やシルクロードの古銭等の展示品からなる『燦然と輝く記憶:メソポタミアからガンダーラまで——東方文明古国冶金術展』の開催が決まり、3度目となる共同展が実現したのです。今回の内容は、これまでのシルクロード文物展を補足するもので、シルクロード文化の相貌と内実をより深くより包括的に明らかにするという意義を有しています」。

中国敦煌石窟保護研究基金会の副理事長も務める羅華慶氏は、展示によって文化が生き生きと大衆に伝わるよう心を砕いてきた。

「数千年の長きにわたるシルクロード文化は、その融合・発展の過程で、各地域、各民族の文化は絶えず他地域、他民族の文化を吸収・融合しながら独自の文化を形成してきました。文化的ルーツの共有こそが、今日のわれわれの協力・理解の基盤であり、敦煌研究院が各協力機関と共に展示活動を行う上での前提になっています。古代文明の煌めく光とも言うべき文化遺産を守ることは、われわれの果たすべき責任なのです」。 

当展覧会は黄山美術社、北京鑑鐘文化伝播有限公司、在中華人民共和国日本国大使館、中国敦煌石窟保護研究基金会、敦煌空港税関が協賛した。

羅華慶氏は語る。「人びとは、展示品は目にしても、そこにどれほどの心血が注がれているのかを知りません。平山郁夫シルクロード美術館のコレクションは、平山夫妻が40年の歳月をかけて収集したシルクロードの文化財であり、西はローマから東は日本まで、ヨーロッパ、西アジア、中央アジア、東アジアの37カ国・地域の、古代から現代までの絵画、彫刻、工芸品等1万点以上に及びます。当研究院との合同展では、常に選りすぐりの展示品を惜しみなく敦煌に届けてくださいました。今回の展示会では、221点の古金属器及び33枚のシルクロードの古銭を鑑賞することができます。敦煌空港税関は、展示会の開催期日に間に合うよう、展示会のためのグリーンゲートを開設し、文化財の迅速な通関のために、無担保手続きを手配してくださいました」。

羅華慶副院長は日常的に学芸員としての仕事に当たるが、それ以上に世界各地の提携パートナーとの交渉に力を入れる。莫高窟が決して職人の力だけでなく、シルクロードを行き来し莫高窟を恋い慕う人びと、莫高窟を保護し、大事にする人々によって支えられているのと同じである。

1994年、「敦煌石窟文物保護研究陳列センター」が日本政府の無償支援によって完成し、中日友好の象徴となっている。平山郁夫氏はさらに、東京芸術大学の学長として、敦煌研究院の若手の研究者や芸術家たちが東京芸術大学で学ぶ機会を提供し、全力で人材育成にも当たった。平山郁夫氏によって始められた東京芸術大学と敦煌研究院の人材交流及び共同研究プロジェクトは、今もなお続いている。

羅華慶副院長は語る。

「平山郁夫シルクロード美術館との3度にわたる共同展の開催は、私の学芸員人生における輝かしい記憶となりました。2022年現在、われわれは莫高窟の前に立ち、4000年前の文物と対面し、西アジアから地中海周辺地域、さらには、中央アジア、インド等に至る古代シルクロード沿線地域の、作り手たちの知恵、技、美意識、祈りが凝縮された宝物を目にし、信仰、そして融合によって色とりどりに輝く文明に触れることができるのです」。

平山郁夫氏も羅華慶氏も、40年間、私心なく一つのことを貫き通してきたのである。

 「山河は違えど風月は同じ空に通ずる。素晴らしき人の世に、来たれる縁を共に結ばん」。

(写真提供/敦煌研究院)