「ダブル炭素」目標の下で仮想発電所にチャンス到来か

全国的に高い気温が続いており、電力の使用状況が再び注目されている。最近は仮想発電所がホットな概念になり、複数の上場企業がすでに展開を進めていることを明らかにした。

仮想発電所とは何か

仮想発電所は従来の発電所のような実体ある形は存在せず、複数の分散型エネルギーを統合し、電力資源を合理的に調整するものであり、実際には発電サイドに属してさえいない。

電力の専門家や業界関係者の見方を総合すると、仮想発電所は本質的にはスマートグリッドとユーザーサイドが結びつき、生み出された電力の需給バランスを調節する一種の新型メカニズムだ。

中央財経大学証券先物研究所の研究員で内蒙古(内モンゴル)銀行研究発展部のゼネラルマネージャーを務める楊海平氏は、「仮想発電所はデジタル化した手段を通じて各種の分散した調整可能な電力源と負荷を統合したもので、統一管理・調整を行なう特殊な発電所に相当し、同時に主体として電力市場に参入している」と説明した。

 

「ダブル炭素」目標の下

仮想発電所が誕生

「ダブル炭素(二酸化炭素(CO2)排出量ピークアウトとカーボンニュートラル)」の目標の下、中国の新エネルギー発電業界が急速に発展し、エネルギーモデル転換プロセスが加速して、新エネ発電産業は発展のチャンスを迎えている。

2021年には中国の再生可能エネルギーの発電容量が10億キロワットを突破し、水力発電と風力発電の発電容量はそれぞれ3億キロワットを突破した。

しかし従来のエネルギーによる発電と比較すると、新エネ発電にはランダム性、変動性といった特徴があり、大規模に新エネ送電を行なえば、電力システムが大きな挑戦に直面することになる。

浙江大学国際連合商学院デジタル経済・金融イノベーション研究センターの連席主任兼研究員の盤和林氏は、次のように説明する。

「エネルギー供給が不安定な状況の中、分散型エネルギーネットワークは電力網の送配電における『電力源、電力網、負荷、エネルギー貯蔵』に新たな要求をつきつけ、電力網が新たなエネルギー生産方式に対応することを求めている。電力網自体にも時間帯による発電量の違いという問題が存在することから、仮想発電所が機運に応じて誕生した。仮想発電所は電力を吸収して貯蔵し、電力を送り出して販売し、電力網の中で市場の需給に基づく方法でエネルギー資源のマッチングを行ない、電力網の送配電効率を高める」。

 

仮想発電所の概念が注目

複数の証券会社が研究報告書を発表し、仮想発電所の発展へのポテンシャルを高く評価している。

民生証券股份有限公司の指摘によると、仮想発電が管理システムを通じて川上と川下につながり、新エネの普及加速の大きな流れの中でエネルギーの統合と協調・最適化を実現することは、電力取引の重要な基礎だ。

華安証券股份有限公司の見方では、デジタル化は電力網の貯蔵能力を高める重要なサポートをするものであり、仮想発電所には広大な市場がある。仮想発電所はエネルギー貯蔵とともに、電力システムのスマート調整、効率最適化の重要な手段になるものと期待される。

中国国際金融股份有限公司の研究報告書によると、21年に仮想発電所市場における利益は約659億元(約1兆3500億円)に上った。

仮想発電所が浸透するにつれ、その負荷調整量の占める割合が30年は5%に達する見込みだ。試算では、中国の仮想発電所産業は理論的には30年に1320億元規模の市場を形成する可能性がある。

 

政策が持続的に充実

年初以来、仮想発電所は政策による多くのメリットを獲得した。

「第14次五カ年計画の現代エネルギーシステム計画」では、エネルギー貯蔵施設、仮想発電所、ユーザーが遮断可能な負荷などのフレキシブルな資源が補助サービスの分野に参入することを推進するとしている。

今年6月には、山西省が「仮想発電所建設・運営管理実施プラン」を通達し、仮想発電所のタイプ、技術の要求、市場参入、建設と市場参入のプロセスなどを明確にした。

「北京市第14次五カ年計画期間の電力発展計画」でも、北京市が仮想発電所建設の指導意見を打ち出し、デマンドレスポンス(需要応答)と負荷調整コントロールの技術プラットフォーム機能を整備し、市場運営ルールと支援政策を研究制定して、全市の各業界における電力ユーザーが仮想発電所建設に参加するよう誘導することが指摘された。

 

多くの上場企業が展開

前出の楊氏は、「現在、中国の仮想発電所の発展はまだ初期段階にあるが、『ダブル炭素』目標の下、デジタル化の流れに乗って、政策の力強いサポートと資本の注目を獲得し、これから急速発展の段階に入ることが予想される。仮想発電所は重要な発展チャンスを迎えており、すでに多くの上場企業がこの分野で展開を進めている」と述べた。

新エネルギー発電予測の分野を専門に手がける国能日新科技股份有限公司は、新たな成長の可能性を切り開きつつある。

天風証券股份有限公司の研究報告書によれば、国能日清は現在、「予測+電力取引/クラスター制御・クラスター調整//エネルギー貯蔵・エネルギー管理」の相互作用型の応用システムまたはプラットフォームへと徐々に移行している。

また電力取引の補助対策支援システム、仮想発電所スマート運営管理システム、分散型クラスター制御・クラスター調整、エネルギー貯蔵・スマートエネルギー管理システムを相次いで打ち出した。仮想発電所の分野では、すでに河北省と山東省の2カ所でプロジェクトを実施したという。

北京恒泰実達科技股份有限公司の関係者は取材に、「現在、中国国内で仮想発電所を展開する企業は、主に電力システムの傘下にある関連産業の企業、電力網企業が設立した各レベルの総合エネルギー企業および総合エネルギー業務や電力販売業務を手がける企業だ。今後は仮想発電所分野でエネルギーを統合する企業、プラットフォームと技術のサプライヤー、運営企業になることを目指す。仮想発電所の統合担当企業の運営能力は企業が将来にわたって持続的に収益の可能性を伸ばしていくためのカギになる」と述べた。