惲 銘慶 中国品質万里行促進会 エコ養蜂業専門委員会主任委員
高規格・高品質で中国の スマート養蜂業の発展を促進

近年、中国養蜂業は新しい局面を切り開き、新しい道へと歩み出し、新しい発展段階を迎えている。そのなかで、中国品質万里行促進会エコ養蜂業専門委員会は主要な牽引役を果たしている。先日、「第5回中国養蜂業の高度な発展およびビジネス環境の最適化に関する国際フォーラム」が開催された際、本誌は中国品質万里行促進会エコ養蜂業専門委員会の主任委員である惲銘慶博士を訪ね、DX(デジタル技術による変革)で伝統養蜂業を活性化させ、貧困撲滅の戦いに打ち勝ち、カーボンニュートラルを推進する道のりについて伺った。

品質で収益を上げ、

基準の制定で空白を埋める

―― 中国品質万里行促進会エコ養蜂業専門委員会は設立されてから短期間で、国際化、系列化された一連の団体基準を定め、業界の空白を補填しました。なぜ基準の制定に多くの労力を費やしたのでしょうか。

惲銘慶 市場規範と高規格・高品質を推進させることは、中国品質万里行促進会の主要な職責です。促進会は1994年の設立以来、国家品質監督検査検疫総局の指導の下、品質検査部門、主流メディア、経済学者、優良企業、科学研究機関など多方面と力を合わせ、劣悪品を駆逐し優秀品を育て、市場を規範化するなどの分野で一定の成果を上げています。

中国品質万里行促進会エコ養蜂業専門委員会は2017年に設立されました。今年はまさに5年目の節目の年になります。専門委員会は設立後、中国のエコ養蜂業の高規格・高品質な成長を維持し、制度、システム、能力などの多くの分野でブレイクスルーとイノベーションを実現すべく努力してきました。同時に、「養蜂業名匠評価準則」、「高品質ハチミツ」、「エコ蜜源地通則」などの国際化、系列化した団体の基準の制定に着手していますが、その目的はわが国のハチミツ産業に規律をもたらすこと、養蜂農家に回り道をさせないこと、市場と消費者に利益をもたらすことにあります。

マクロの局面からミクロの局面へと見ていくと、わかりやすいでしょう。中国は養蜂大国で、年間生産量は50万トンと世界の生産量の三分の一を占めています。しかし、わが国は養蜂強国ではないということをはっきり認識しなければなりません。中国のハチミツ生産農家が苦労して収穫したハチミツは500グラムあたり20~30人民元(約400〜600円)にしかなりません。この価格は国際的な平均価格のわずか十分の一です。この数字には本当に心が痛くなります。

品質は産業に収益をもたらします。業界規格が実施された後、ハチミツ産業の製品規格、生産規格、安全規格、衛生基準は全て根拠を持つものとなりました。特許技術の認定と運用によって、ハチミツの品質が明らかに向上し、ブランド意識が樹立され、養蜂農家の収入は増加し、中国のハチミツ産業の国際的地位は向上しました。

毎年1回開かれる中国養蜂業の高度な発展に関する国際フォーラムは、大きな困難を乗り越え、オンラインやオフラインの形式で開催し続けています。ここでは、市場管理、品質規格、フィンテック、エコ環境、農林、観光、公共安全、ヘルスケア、情報化などの分野の国内外の団体、機関の力を十分に引き出し、全世界の養蜂業が伝統的な小規模農業生産から、IoT産業へと世代を超えた成長ができるよう後押ししています。

「両山」理論を実践し、

カーボンニュートラル実現に協力

―― 昨年、「2021ノーベル賞SDGsファンドモルガンサミット」に招待され、「ダブルカーボン目標の持続可能な経済成長」をテーマとするスピーチをされました。同時に「DXを活用したミツバチ産業でカーボンニュートラル産業の成長を推進する構想と提案プラン」を発表、国際社会で先鞭をつけました。養蜂と環境保護とはどのような関係にあるのでしょうか。

惲銘慶 今まさに中国品質万里行促進会エコ養蜂業専門委員会は、中国科学院環境研究機構や、クリーンエネルギーと環境保護分野の専門家とともに、総合的に利用できるイノベーション主導型プランの研究に力を入れています。

過去数十年間を振り返ると、改革の実施に大ナタを振るい、生産力をリリースしましたが、粗放な経済成長モデルは生態環境に喫緊に解決すべき問題をまだ残しています。いかに産業チェーンをアップグレードし、養蜂の環境効果を向上させるかが、エコ養蜂専門委員会が設立後に注目している重要課題の一つです。

専門委員会は設立後、陝西省延安市、四川省広安市、浙江省千島湖市、湖北省神農架林区、遼寧省葫蘆島市、広西チワン族自治区の都安ヤオ族自治県に、デジタル化エコ養蜂業モデル試験地区を建設、地方自治体のサポートの下、エコ養蜂業の振興プロセスを通して、「両山理論」(緑の山河こそ金山銀山に他ならない)を実践し、貧困撲滅、農村振興と一帯一路経済の発展を推進してきました。

養蜂は農産品の品種改良、病気予防と増産に役立ちます。ミツバチの受粉は農作物の病気対策、増産を促進し、特に土壌と植物の炭素固定能力を向上させることができる有効なプロセスなのです。度重なる実験と検証を経て、われわれは国際専門組織の「人工介入」や炭素固定能力などの要素分析と計算の結果に基づき、ミツバチ授粉は植物の生命力向上に有効であり、したがって炭素固定能力が高まるというエビデンスを得ました。よって、エコ養蜂は生物多様性を維持できるだけでなく、ミツバチの高規格産業化を推進し、カーボンニュートラル事業の重要なコンテンツになるでしょう。

中国品質万里行促進会エコ養蜂業専門委員会は養蜂の環境収益の分野を掘り下げることに注力しており、これがISO(国際標準化機構)に注目され、認められました。特に、「養蜂プロセスを運用し植物と土壌の炭素固定能力を迅速に引き上げる」という推測と論証について、国家環境部の上層部から注目され、支持されています。信任と支持は、われわれに業務の意義の重要性、責任の重さを深く認識させ、信念をさらに強めました。そして、「品質、環境、健康、発展」という指導思想に引き続き真摯に取り組み、美しい農村の建設、農村の振興の実現、「ダブルカーボン目標」の達成のため、自身の責任を引き受けています。

スマート農業の発展で、

貧困撲滅の戦いに勝つ

―― アジア金融協力協会金融包摂委員会の設立式典に出席された際、金融包摂(Financial Inclusion)の力を借りての「一帯一路」エコ養蜂業の発展を提案され、国内外の金融機関と農村振興やSDGsの関係者から大きな支持を得ました。これは伝統的な養蜂業にどんな影響を及ぼしますか。

惲銘慶 金融の力を借りて、養蜂業を発展させ、養蜂業の付加価値を高め続け、養蜂農家に「甘いハチミツ事業」の力を体感させることが、われわれ委員会がここ数年間進めてきた業務です。

以前、伝統的な人工飼育のプロセスでは、養蜂農家は非常に苦労が多かったのです。しかし、DXにより、養蜂農家は養蜂箱の温度、湿度、重量などの重要な情報をリモート追跡できるようになり、蜜源地の環境・気象観測などのビッグデータのサポートと組み合わせて、技術指導やソリューションなどの専門的サポートも得られています。養蜂産業はスマート農業の一コンテンツとなり、養蜂農家にミツバチの真の「甘さ」を体感してもらえます。

同時に、われわれは資源制約型貧困県の問題も軽視できません。14億人という人口に比して、わが国の有効利用できる耕作地は非常に限られています。一人当たりの農地は1.37ムー(約917平方メートル)しかなく、世界平均の約40%にも足りません。中国の農耕地資源は一人当たりの耕作地が少なく、優良な耕地が少なく、耕地の予備資源が少ないなど客観的にも限界があります。しかし、一部の資源制約型貧困県では高効率のスマート養蜂を推進しており、金融のサポートによって産業構造の調整を実現、IoTネットワークを構築して脱貧困の目標に到達しています。

一つのデータをご紹介しましょう。2020年のわずか1年間で、中国の延安市全体での養蜂業の生産額は1億元(約20億円)を突破し、「エコ、高品質、安全」な養蜂業の成長理念によって2000軒以上の貧困農家の脱貧困を実現しました。先日閉幕した第五回のフォーラムにおいて、延安分会場でおこなわれた「成熟アカシアハチミツ生産パイロット基地」と「高品質アカシアハチミツ基地」のライセンス授与式では、高品質・高規格養蜂が「甘い蜜」の生活をもたらし、貧困撲滅の戦いに打ち勝った現地農家の顔に浮かんだ笑顔を見ることができました。

 

―― 最近、中国共産党中央と中国国務院は「全国の統一的大市場建設の加速に関する意見」を公布しました。この国際的な意義はどこにあるとお考えですか。

惲銘慶 中国品質万里行促進会エコ養蜂業専門委員会はまさに統一的大市場について研究を進めているところです。統一的大市場を建設することの意義と内的要素を真剣に理解することで、的確な研究方向が定められ、その成果を社会に応用できるでしょう。

高品質・高規格なスマート養蜂業の発展は、国内の大循環を主体として、国内と国際の双循環が相互に促進する新しい成長モデルの一つの重要な構成部分を形成しています。新しい歴史段階と新しいスタートの上で、われわれ専門委員会は引き続き国際交流と提携を強化し、「共に創造、共に建設、ウインウインとシェア」のメカニズムを構築し、エコで健康的な蜂蜜事業を大きく成長させるべく推進していきます。

われわれは、全国の統一的大市場建設は絶対に閉鎖的ではなく、門を閉ざしておらず、一方通行なものではないこと、また広大で堅固な世界の大市場の一部であり、多国間主義を実行する取り組みであることを強調しています。中国が世界の中心にますます近づいている現在、われわれは中国の大市場をより良くする必要がありますが、これは実際には世界の大市場を良くするということなのです。

取材後記

業界基準を制定し、高基準・高品質で中国のスマート養蜂業の成長を促進する。金融包摂を導入し、農村振興と環境保護の健全な発展をサポートする。金融、科学技術、ヘルスケアなどの多方面を有機的に融合させ、養蜂業のビジネス環境を最適化する。中国の養蜂業を「大」から「強」へ、養蜂農家を苦しませない……人々は、中国品質万里行促進会エコ養蜂業専門委員会がさらなる「甘い生活」の創出を期待している。私たちはさらに積極的に環境保護+養蜂業がカーボンニュートラルとカーボン吸収源事業を推進していくイノベーティブな成長を探っていかなければならない。それと同時に、中国養蜂業がさらに国際社会とリンクしていくことを期待している。それは「一方通行」ではなく、世界の先進的養蜂の経験と技術を汲み取るよう努力する一方で、積極的に中国養蜂業の新しいモデルとロードマップを輸出し、多元的な動きによって人類運命共同体の構築に参画しなければならないのである。