森田 実 政治評論家、森田総合研究所代表
日本にとって中国が大切な  隣国であることを認識すべし

中国と日本の国交が正常化してから50年の歳月が流れた。今年は節目の記念すべき年であるが、コロナ禍の影響もあり、両国の往来は途絶えたままだ。しかも、政治的に両国関係は決して良好とはいえない状況にあり、友好ムードは高まりを見せていない。そうした中、政治評論家として50年にわたって活躍する森田実氏に、国交正常化50周年の現状と今後の中日関係の在り方などについて伺った。

日中平和友好は日本国民が

平和に生きるための礎

―― 本年は中日国交正常化50周年です。50年前、多くの政治家や民間人の労苦により両国の新たな歴史の扉が開きました。50年たった今、両国の友好ムードはあまり高まっていません。50年前と現在の中日関係をどのように見ていますか。

森田 現在の日中関係は憂慮すべき状況にあると私は判断しています。

今年は、1972年の日中国交樹立から50年の節目の年であり、岸田文雄内閣総理大臣が率先して、日中国交樹立50年を祝うべきですが、この動きは、6月上旬現在、みられません。

1972年9月に日中国交樹立が実現した時、日本国民はあげてこの快挙を祝賀しました。しかし、50周年の2022年の今、国民世論は盛り上がっていません。日本の世論は米国政府が展開する「反中国世論工作」に操られ、日中友好の大切さを見失っているのです。

日本が平和に生きるためには、日中友好が必要です。日中平和友好は、日本国民が平和に生きていくための最大の礎です。日本国民は、米国政府の反中国宣伝と日本国内の反中国ナショナリズムに煽られて、日中友好の大切さを見失っているのです。私は、この状況は一日も早く克服し、日中友好の世論を高めなければならないと、決意しています。

 

日中国交樹立は

日本に繁栄をもたらした

―― 冷戦下において、自民党政権は、日米安保条約を結び、そして中日国交正常化を決断しました。本年6月1日、経団連などが「日中国交正常化50周年交流促進実行委員会」を発足させ、最高顧問に福田康夫元首相と二階俊博・自民党元幹事長が就任しました。中日関係において、この50年来の自民党の功績をどのように評価していますか。

森田 日本は第二次大戦前大きな過ちを犯し、軍国主義に走り、中国をはじめアジア諸国を侵略し、米国に戦争を仕掛け、そのあげく、敗戦を体験しました。第二次大戦終了とともに日本は米軍の占領下におかれました。

米国政府は米ソ冷戦構造下で、日本を米国に縛りつけておくため、日米安全保障条約の締結を強要しました。

しかし、日本は米国一国だけとの関係では生きていくことはできません。

1954年、日本政府はソ連邦政府との国交樹立を実現しました。この結果、日本は国際連合に加入することができ、国際社会の一員になることができました。

1972年に日中国交樹立を実現し、広大なアジア大陸である中国との平和友好関係を実現しました。この結果、日本経済は飛躍的に成長することができました。日中友好は日本に大きな繁栄をもたらしました。

日中平和友好関係の発展には、自由民主党、社会党、公明党など多くの政党の指導者が超党派で協力しました。

自由民主党の政治家で、日中友好のためにとくに活躍したのは、石橋湛山、高碕達之助、古井喜実、松村謙三、田中角栄、大平正芳、三木武夫、河野洋平、福田康夫、二階俊博らでした。

いま、反中国の姿勢を強めている米国バイデン政権の圧力を受けながら、十倉雅和経団連会長を委員長とする「日中国交正常化50周年交流促進実行委員会」が発足し、最高顧問に福田康夫元首相と二階俊博自民党元幹事長が就任したことは、大変良いことだと思います。福田康夫元首相と二階俊博元幹事長の勇気に、敬意を表します。

2022年9月29日の日中国交樹立50周年には日本国民の圧倒的多数が参加するよう、これから努力したいと思います。日本国民は本心では中国が好きです。日中平和友好を望んでいます。

 

米国政府は対中国政策を

改めるべき

―― 戦後国際政治の転換点となったニクソン米大統領の中国訪問から50年が経った今、米国の対中政策のキーワードは「協調」から「競争」へ、対立する関係に変化しており、50年前の中国との接触は失敗であったという声さえ聞かれます。米国の対中政策について、どのように見ていますか。

森田 米国政府は、世界平和を守ることにもっと熱心でなければならないと、私は思います。現在のバイデン政権の対中国政策は間違っています。米国は中国を友とし、世界平和のため、人類の繁栄のために中国と協力すべきです。しかし、バイデン政権は、平和を危うくする危険な政策をとっています。米国政府は対中国政策を改めるべきです。

米国政府は、50年前のニクソン、キッシンジャーの中国との友好政策に戻るべきです。

米国内で、50年前のニクソン、キッシンジャーの中国との友好を実現した政策を「過ちである」として、見直す動きがあるようですが、改めるべきです。

人類にとって最も大切なことは世界平和の実現です。米国政府は世界平和のため中国政府との友好関係を促進する政策をとるべきです。

バイデン政権は、直ちに反中国政策を停止し、友好政策に転換すべきです。米中両国政府が世界平和のために話し合えば、全人類が支持します。

 

日本はアジア諸国との

友好関係が必要不可欠

―― 日本の政界を見ますと、中日関係において様々な立場があるようですが、近年、各政党の発言を聞いていますと、もはや親中派はいなくなったとさえ感じます。今後の中日関係構築はどのようにあるべきだとお考えですか。

森田 2015年頃までは、指導的政治家、経済人、指導的官僚のなかに、中国政府が推進している「一帯一路」政策に協力する指導者がいましたが、今はいなくなりました。背景にあったのは、米国政府の強い圧力でした。

米国政府は、「自由で開かれたインド太平洋」政策を推進し、日本国内の「一帯一路」支持者を抑え込みました。いまは、与野党を含めて、政府は「自由で開かれたインド太平洋」路線一色になってしまっています。

日本は、米国と日米同盟を結んでいますが、米国一国だけと関係を結ぶことは、大変危険です。日本にとって、アジア諸国との友好関係は必要不可欠です。

アジア諸国から孤立した日本に生きる道はありません。経済も成り立ちません。

今こそ、日本国民は、米国一辺倒の生き方は非常に危険であることに、気付かなければなりません。

今こそ、日本国民は、日本にとって中国が大切な隣国であることを認識すべきです。