黒岩祐治神奈川県知事を訪ねて
日本の外資誘致は「赤と黒」に分けるべきでない

「日本は外資を誘致するにあたって、どんな“色”かを考慮すべきでない。投資に“赤い投資”や“黒い投資”があるとは聞いたことがない」と黒岩祐治神奈川県知事は語り、「日本のメディアが中国の“赤い資本”が日本に投資をすることを憂慮している」ことに対して、否定的な見解を示した。

 

日中経済はWin-Win関係であるべき

―― 神奈川県は海外とのビジネスを重視し、アジアの中でも著しく成長している中国に特に注目しています。県内の企業と中国との交流の機会を増やすことを県は積極的に支持していますね。そこで、県としての今後の計画について教えてください。

黒岩 そうですね。アジアの国々との経済往来を強化するために、神奈川県では「産業振興センター」という公益法人を設立しました。中国の大連にも事務所があります。大連事務所では県内の企業が中国で事業を進めるにあたって、具体的なアドバイスや指導といった支援活動を行っています。今年の10月26日から30日にかけて、県では中国で「2011年中国投資貿易相談会」を開きましたが、これも県内の中小企業に中国でより多くのチャンスをつくってほしいからです。

最近、日中の経済関係は密接になってきています。大切なことは、一方的な支援・開発という関係ではなく、Win-Win関係(サービスを提供する側と利用する側双方にメリットがある関係)であるべきです。県内の企業が中国での投資と貿易を通して、経済利益を得ると同時に、中国現地の発展も促進しています。これは日中双方にとって有意義なことで、日中関係は真のWin-Win関係になっていくでしょう。

神奈川県内の企業の中国進出を後推しすることについて、現状では、県として検討し直すべき事がたくさんあります。企業に提供する中国市場に関する情報もまだまだ少ない。また、中国企業にとっても、神奈川県の投資環境や政策についての宣伝も不十分で、これらの方面を強化しなければなりません。

 

「観光産業」から「産業観光」へ

―― 神奈川県では「がんばろう!日本 元気かながわ再発見キャンペーン」を展開していますね。国土交通省は「観光立国」を推進していますが、神奈川県は今後も「観光立県」の道を歩むのでしょうか。

黒岩 そうですね。神奈川県の観光資源は豊富です。名山、名水、世界的に有名な温泉もあります。一つの県内にこれほどの観光資源が揃っているのは日本でもそう多くありません。どの観光地にも独特な魅力があります。様々なピーアル活動を通して、紹介したいと思います。

また、より多くの中国の方に神奈川県に来てもらうために、県の各観光地の中国語版の地図と旅行案内パンフレットを印刷しました。中国の方たちを心から歓迎しますよ。

「観光立県」の道を歩むのかということについては、それほどこだわる必要はないと考えています。以前はよく「観光産業」が話題になりましたが、この言葉の語順を変えて、今は「産業観光」を推進するようにしています。神奈川県の近代的な工場も観光資源として開発して、海外からの観光客の方に神奈川県のこうした企業を見学していたただく。さらに「産業観光」の概念と関連する内容を中国のメディアに紹介したいと思っています。今中国で流行っているブログで宣伝する予定です。

 

外国投資に「赤」や「黒」は存在しない

―― 日本の一部のメディアは中国企業の日本への投資に対して、「赤い資本が日本を買っていく」との報道がなされています。このことについてどう思われますか。

黒岩 日本は外資を誘致する時、どんな色なのか考えるべきでない。それに投資に「赤い資本」と「黒い資本」の違いがあるなど聞いたことがない。余計な心配ですよ。横浜港は神奈川県にありますが、横浜は日本で早くから開放された港の一つです。ですから、横浜もそうですが、神奈川県民は海外貿易や海外からの投資に非常に開放的です。同時に、神奈川県で投資しようとする中国の投資家にはこういう心配をしないでいただきたい。

国外の投資を誘致し外国と貿易することにより、神奈川県に経済的活力がさらに生まれますし、海外の投資家にとって利益になるばかりか、神奈川県にも利益になるので、Win-Win関係のモデルとして、良いことだと思います。

 

華僑の忍耐力と活力は創造力

―― 今年は辛亥革命100周年にあたります。当時、多くの日本人と華僑が孫文を支援し、その革命に協力しました。当時の横浜は華僑と華人が集まる場所でした。神奈川県の華僑華人について、どう思われますか。

黒岩 中国人は二つに分けられると思います。一つは中国本土に住んでいる人々で、もう一つは海外に住んでいる人々。神奈川県内に在住している華僑華人に限るのではなく、広い視野での華僑華人について話しましょう。

海外にいる華僑華人の素晴らしいところは、どこに行っても自分の伝統文化を引継いでいることです。非常に印象深かったことは、世界のどこに行っても華僑華人の中華料理が食べられることです。

マスコミの仕事で湾岸戦争の時にオマーンで働いたことがあります。オマーンはその当時戦争状態で、ほとんどの人が撤退していました。それで、食事をすることが大きな問題になりましたが、最後に中華レストランを見つけました。華僑華人の危険を顧みない精神に、私は深い感銘を受けました。我々日本人記者は中華レストランで食事をしてから、やっと普段の生活に戻れた気がしました。華僑華人の忍耐力と活力は創造力です。素晴らしいことです。