中国のデジタル一線都市での暮らしとは

 

第8回国際スマートシティサミットがこのほど発表した「2019年都市デジタル発展指数報告」によれば、中国では杭州、上海、武漢、深圳、北京、鄭州、広州、南京、寧波、青島が際立ったデジタル化発展を遂げた上位10都市に並び、デジタル一線都市ベスト10を構成している。デジタル化は目下、都市の発展水準をおしはかる新たな指標になりつつある。


武漢に無人販売車登場

1クリックで不要品回収

新たに発表されたデジタル一線都市ベスト10のメンバーでは、杭州が首位に立った。多くのインターネット企業が集まることから、杭州は全国で最も早く地下鉄の「QRコードスキャン乗車」を実現した都市となり、デジタル化で全国の先頭を走り続けてきた。

杭州市民の楊屹さんはデジタル化の状況に深い感慨を覚えており、「杭州では宅配便や食品デリバリーはもう当たり前で、今はハウスキーピング、ロック解除、ネイルアート、家電メンテナンスといった暮らしの中の出張サービスが流行り始めている。オフィス近くの『蜂小ロッカー』はQRコードをスキャンしてロッカーを開け、中のものを取り出してロッカーを閉めると、携帯電話が自動的に決済を行うようになっていて、とても便利だ」と話した。「蜂小ロッカー」とは、コンビニの便利蜂公司が打ち出すスマート小売端末で、ビッグデータや都市IoT(モノのインターネット)に接続してからは、1分足らずの取り引きで市民にさまざまな便利さをもたらすようになった。

デジタル化発展の恩恵が人々の暮らしに及び、大衆が一番最初に利益を得ている。上海市民の米楽さんは、「スキャンして乗り物に乗る、バスのリアルタイム到着時間をチェックする、スキャンしてドアを開ける、スキャンしてメニューを注文する……上海では、暮らしの隅々までほとんど携帯電話で事は済み、とても便利になった。今は不要品回収もデジタル化されている。スキャンして回収容器を開け、不要品を放り込むと、システムが自動的に重さを量って回収し、微信(WeChat)のウォレットにポイントや買い取り金が送られる。このような高効率の不要品回収モデルは多くの若者に人気があり、速いリズムの都市の暮らしにぴったり合っている」と上海の新たな変化を並べながら、「携帯電話のバッテリーが十分で、微信と支付宝(アリペイ)さえインストールされていれば、基本的に上海のどこにでも行ける」と語った。

指先で軽くタッチすれば
なんでもできてしまう

同報告によると、「現在、全国では『一網速弁』(1つのサイトですばやく処理する)の公共サービスミニプログラム26種類が支付宝に接続し、接続率は90%を超える。国家政務サービスプラットフォーム、浙里弁、江蘇政務、四川政務サービス、ビン政通など……ネット公共サービスプラットフォームが政府の事務処理の効率を引き上げ、これまでのような煩雑なプロセスを簡素化し、市民に大きな便宜をもたらした」という。

楊さんは、「浙江省は『最多でも1回行くだけ』になる改革を実施し、杭州で労働者が住宅積立金を受け取る時には『浙里弁』アプリですべての手続きができる」と話した。騰訊(テンセント)研究院が発表した「デジタル中国指数報告(2019年)」の「デジタル公共サービス編」によると、利用者の間でモバイル公共サービスを利用する習慣が根付き、利用者が安定して増加しており、地級市(省と県の中間にある行政単位)362ヵ所が1万3781項目のサービスを提供し、1都市あたり平均38項目を提供していることになるという。

デジタル中国の一大戦略の下、各都市はデジタルを利用して公共サービスのイノベーション改革を推進し、社会の総合的ガバナンスを促進し、人々の暮らしに貢献する。北京市民の李利さんは、「今では、運転免許証の書き換えなどは『交管12123』の携帯電話用アプリで操作すればよく、わざわざ車両管理所まで行かなくていい。最近になって、車両管理所の入り口に自動健康診断機が設置してあることに気づいた。バックグラウンドにいる医師がリアルタイムで健康診断を行い、データをバックグラウンドシステムに直接送信してくれ、結果をプリントする必要もないし、病院に行く必要もない」と話した。

社会保険サービス、暮らしの中の各種料金支払い、出入国手続きサービス、教育サービスなどがインターネットと結びつき、「何時間も並んで、手続きはわずか数分」、「歩き回って足は棒のよう、問い合わせを続けて喉がからから」といった状況から、「最多でも1回行くだけ」、「1回も行く必要がない」、「指先で軽くタッチすれば完了」へ、デジタル化によるモデル転換が都市のガバナンス近代化を推進する新たなエンジンになっている。


QRコードで駐車場から車を出す重慶市民

「インターネット+社会サービス」
でより便利に

同報告は、「杭州、南京、青島、鄭州などの都市はデジタル化の面で北京、上海、広州、深圳をも上回り、都市の先進度、暮らしの便利さ、人々の幸福感などはいずれも水準が高い。全国デジタル化都市管理第2弾モデル都市の鄭州市は、地理情報システム(GIS)、ブロードバンドネットワーク、マルチメディアなど現代の情報技術(IT)を総合的に運用して、都市管理資源を統合し、鄭州デジタル化都市管理監督センターを設立し、市民の多くに注目・歓迎されており、政府と民衆が都市を共同管理するための有力なツールになっている」と伝えた。

これから、デジタル化は都市の各業界・各産業に深く浸透していくとみられる。2019年12月、国家発展改革委員会、教育部、民政部、商務部、文化・観光部、国家衛生健康委員会、国家体育総局の7当局が共同で「『インターネット+社会サービス』の発展促進に関する意見」を発表し、デジタル化モデル転換によって公共サービス資源の供給を拡大し、ネットワーク化融合によって公共サービスのバランス・包摂を実現し、スマート化イノベーションによって公共サービスの供給の質を引き上げ、多様化供給によって公共サービス市場の活力をかき立て、協同化措置によって公共サービスの発展環境と関連の保障措置を最適化することを打ち出した。今後、デジタル化、ネットワーク化、スマート化、多様化、協同化による発展モデルが、オンライン診療をするネット病院、デジタル図書館、バーチャル体育館、バーチャル老人ホームなどさまざまな分野で応用されるようになる見込みだ。