中国の旅行市場は 外資導入ブームを迎えるか

「外資投資旅行会社に対する営業許可」は、世間の注目を集めている。ある業界関係者は、「これは、旅行市場が外資導入ブームを迎えることを意味している。合弁旅行会社や合弁観光関連企業は今後増え続けるであろう」との見方を示した。

 
南昌西駅に着く親子の様子

外資に対する「規制緩和」を断行した北京旅行業

国家観光局はすでに2014年、「外商投資旅行社に対する業務許可」および「旅行社の海外経営資格に関する審査許可」について、省級人民政府観光行政主管部門に審査許可の権限をゆだねた。

北京市観光委員会は、外資旅行会社による経営について審査許可を行う権限を有することから、「外資投資旅行社による業務」は、昨年から実際に行われており、すでに複数の中外合弁旅行社が、経営登録を済ませている。

北京旅行社協会の鐘暉副会長は、「旅行会社は、競争が激しい業界にある。外資が参入すれば、旅行業界はさらに発展する見込みが大きい。業界は外資の参入を大いに歓迎すべきだ。外資が参入するからと言って、旅行業界全体の大きな趨勢が変わる訳ではない。旅行社の発展は、モバイル・インターネットの方向に接近している」と指摘している。

上海の旅行業も、前向きに外資導入を進めている。国務院が2013年に通達した「中国(上海)自由貿易試験区全体案」は、試験区内で登録を済ませている、条件を満たす中外合弁旅行社が、台湾地区を除く海外アウトバウンド旅行業務に携わることを認めている。

鐘副会長は、「北京市における外資に対する旅行業の『規制緩和』をきっかけに、国内企業は先進的な管理体制や資産運用方法の先例を積極的に学ぶことができる。それによって、旅行産業チェーン全体の融合が促進される」とコメントした。

北京観光学会の劉思敏・副事務局長は、「外資による旅行業参入は、すでにある程度の歴史があり、彼らは国内の旅行社とバランスを保って発展してきた。現在の状況を分析すると、外資による中国旅行市場への参入が、どれほどの波紋を呼ぶかは未知数だ。それに比べ、中国国民によるアウトバウンド旅行市場は、猛烈な勢いで伸びている。外資が中国市場に入り、中国人観光客を目的国まで送り出すことは、中国現地企業が実施する海外旅行ツアーと比べ、優位性を備えているとは言い難い」と話した。

 

外資の導入は旅行市場の発展に有利

鐘副会長は、外資による旅行業への参入の影響について、「上質な海外旅行やカスタムメイド旅行は、変化がつきものだ。また、在中外国企業や在中外国人の顧客源も変わりやすく、中外合弁旅行会社に流れていく可能性が高い」と指摘した。

観光業界での経験が豊かな決勝網の戴政CEOは、「外資が国内旅行業に参入する際、新会社の資金調達という点から見ると、資金プールがさらに大きくなるため、有利であると言えよう。どの業界においても、より多くの資本が入ってくることは、業界全体の発展にとって有益だ。次世代のオンライン旅行会社についても、たとえば同程網などは、このチャンスを利用して、ブレイクスルーを実現することが可能だ」との見方を示した。

北京市観光発展委員会の統計データによると、2014年北京市観光収入総額は、前年比8%増の4280億1000万元(約8兆5000億円)。観光関連産業への投資額(完成ベース)は、同1.2%増の614億9000万元(約1兆2000億円)、全社会固定資産投資額の8.1%を占めた。

北京市観光委員会の王粤・副委員長は、「消費全体のけん引役としての観光消費の役割は、極めて明らかになっており、投資分野での潜在力は、依然非常に大きい」と指摘した。

 
観光名所・河南省洛陽市にある龍門石窟の様子

ユニバーサルスタジオが2019年に竣工

注目を集めるテーマパーク「ユニバーサルスタジオ」の建設は、北京市通州区の2015年重点プロジェクト40項目のトップに名を連ねている。事業進行計画によると、ユニバーサルスタジオは今年10月に着工、2019年竣工の予定。

ユニバーサルスタジオは、計画敷地面積120ヘクタール、投資総額は200億元(約4000億円)を上回り、北京首寰文化旅遊投資有限公司と米ユニバーサル・パークス&リゾーツが共同で投資・建設する。完成すると、国内初のユニバーサルスタジオになると同時に、北京に建設される初の国際トップレベルの大型テーマパークとなる。ショッピングエリアとリゾートホテルも併設され、一大ユニバーサル・リゾートを形成する。

劉副事務局長は、「国内旅行市場は、決して資金が足りない訳ではなく、足りないのは優良なプロジェクトだ。外資導入によってもたらされる投資の多元化と外資の背後にある創造性や豊富な経験は、国内旅行市場の発展に有益に働くだろう。一方で、頻度が高い短距離旅行は絶えず発展し、一つの巨大市場の形成を意味している。もう一方で、中国人の旅行観が『休暇・レジャー』の方向にシフトしており、一部の娯楽・レジャーの性質を持つ投資プロジェクトが、観光客から注目されるようになっている」と語った。

消費者の立場から言えば、外資の参入が拡大することで将来の「価格戦」がより激しくなり、コスパが高い観光商品が市民の手に入りやすくなることを意味する。戴CEOは、「旅行商品は規格化製品であり、市場シェアを拡大するためには、値引きや各種優待を行うこと以外に方法はない。これにより、消費者にはさらなるメリットがもたらされる」と指摘した。