~「日本のデジタル社会へ向けての課題と展望」その16~
「医療DXとその具体化について」

今回は日本型DXのうち行政DXの6回目として、厚生労働省管轄下の「医療DX」について述べる。

 動き出した医療業界DX

国をあげてデジタル社会を目指す中で、医療業界にもデジタル化・クラウド化が求められている。

〇医療情報のデジタル化とは?医療業界で進むデジタル改革

2021年9月のデジタル庁の設置に代表されるデジタル化政策は、医療業界にも及んでおり、厚生労働省も、医療機関がICT(情報通信技術)を活用することを推奨している。医療現場においても既に、検査や診断のための電子機器の活用をはじめ、院内の事務的な業務システム、会計システム等、デジタル化しているところは多くあるが、院内の閉じたシステム環境が主体で、医療機関同士、あるいは地域ぐるみの情報連携は未だ進んでいない。そこで、目下の課題は、「医療情報のクラウド化」である。医療クラウドは、プラットフォームや情報の共有に長けているからだ。現状の医療体制では、患者は各医療機関で受診するたびに、検査や診断を受け直すことが多いが、医療機関がクラウドによる情報共有を行うことで、同じ患者への重複する検査・診察問題の解決が期待される。

〇医療情報をデジタル化する上で重要な「33ガイドライン」

厚労省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」、経済産業省の「医療情報を受託管理する情報処理事業者における安全管理ガイドライン」、総務省の「クラウドサービス事業者が医療情報を取り扱う際の安全管理に関するガイドライン」、各々は、「誰に向けたガイドラインなのか」という点で根本的に異なる。具体的には、厚労省ガイドラインは、病院や診療所、薬局等の「医療機関」「介護事業体」向け、経産省と総務省のものは、そうした機関から情報システムの取り扱いについて委託を受ける「情報処理業者」向けである。

2020年からは「32ガイドライン」へ統合へ

上記の「3省3ガイドライン」において、経産省と総務省のガイドラインは、想定している対象業者が重複しうることは明らかで、2020年8月からは経産省と総務省の発表内容は統合され、「3省3ガイドライン」は新たに「3省2ガイドライン」になった。この結果、情報サービスを扱う事業者に対するガイドラインと、医療機関向けのガイドラインに、シンプルに分けられることになった。

医療業界のDX事例

〇医療業界といっても製薬や研究開発、医療機器メーカーなどさまざまなジャンルがあるが、我々医療を受ける側の視点で見ると、近年は病院における「医師」対「患者」のやり取りがDX導入によって変わりつつある。ここで、ユーザーにデジタルサービスに不慣れな高齢者層が多い医療業界では、DXをどのように普及させるかが大きな課題である。一例として、診療を効率化するAI問診は、有効である。今後、益々、医療DXの発展が期待される。

図1.Ubie株式会社が開発したAI搭載のWEB問診システム「AI問診ユビー」

プロフィール

1954年、福岡県生まれ。京都大学理学部(宇宙物理学科専攻)卒。日本アイ・ビー・エム株式会社、日立エンジニアリング株式会社、株式会社アスキー等を経て、株式会社インターネット総合研究所等を設立し、現職。96年、東京大学より工学博士号を取得。現在、SBI大学院大学学長、東京大学大学院数理科学研究科連携客員教授。