中国人観光客をめぐって日韓が火花

2014年末、北京で開催されたアジア太平洋経済協力(APEC)非公式首脳会議で、安倍晋三首相は、中国の習近平国家主席と、念願の中日首脳会談を3年ぶりに実現させた。これにより、マイナス成長が続いている日本の経済を中国人観光客が支えてくれるようになるのではと、日本の観光業界は期待している。

もう一つの中国の隣国、韓国はその状況を黙って見ているわけにはいかない。「韓流」や美容整形旅行などの人気を背景に、韓国のインバウンド客のうち、中国人が半数を占めるようになっている。この「金の成る木」をめぐって、日本と韓国が今、火花を散らしている。

 
11月16日、李金早中国国家観光局局長と会談する太田昭宏国土交通相(左)

太田国交相が自ら観光PR

上海で2014年11月16日に開催されたアジア最大の国際観光博覧会「2014中国国際観光交易会」で、中国国家観光局の李金早局長は、日本の太田昭宏国土交通相と会談した。太田国交相は、日本の新幹線や観光を積極的にPRした。

太田国交相は、「中国市場は急速に成長している。これまで、日本を訪問する中国人観光客の主な目的地は東京や大阪などだったが、近年は北海道や神戸、奈良などの地域に広がっている」としている。

日本が11月17日に発表した2014年7~9月期の国内総生産(GDP)速報値は年率換算で1.6%減、2期連続のマイナス成長となった。アベノミクスが正念場を迎えている今、中国人観光客が日本の経済を支える形となっている。

 

韓国のインバウンド客半数が中国人

一方の韓国も中国人客の抱え込みに躍起だ。2014年7月、習主席が韓国を訪問した際、両国は15年を「中国観光年」、16年を「韓国観光年」とするとの共同声明を発表した。

産経新聞の報道によれば、これまで日本人観光客でにぎわっていたソウルで一番人気のショッピングスポット、明洞(ミョンドン)では現在、中国語での呼び込みばかりで、路上の看板にも中国語の文字が目立つようになっている。

韓国観光公社の発表によると、2014年1~9月に韓国を訪れた外国人のうち43.9%に当たる468万人が中国人で、国別最多だった。

中国の韓国旅行ブームには、ドラマなどの「韓流」人気が大きく影響している。「秋の童話」(2000年)や今年大ヒットした「星から来たあなた」などを見て、韓国ドラマに夢中になり、それが韓国旅行ブームにつながっている。

そのほか、「美容整形旅行」も中国人に大人気だ。韓国聯合ニュースの報道では、韓国保健福祉部が2014年10月15日に発表した資料によると、13年、美容整形外科を受診するために韓国を訪れた外国人は2万4075人で、このうち67.6%に当たる1万6282人が中国人と、最多だった。

産経新聞は、「韓国を訪れる中国人が増える反面、日本からの観光客は減っている。韓国は日本人客の減少分を穴埋めするため、中国人客の獲得に必死になっている。日本と韓国は観光戦争を繰り広げている」と指摘している。