中国人海外観光客、購買力は世界一

このほど行われた世界観光都市連盟(WTCF)の2014年北京香山観光サミットで発表された「中国公民の出境(都市)観光消費市場調査報告」によると、中国人観光客の海外での一人あたり平均消費額は2万元(約35万8000円)に迫り、このうち一日平均5万元(約89万4000円)以上を消費する人が2%に上った。中国の海外観光客の購買力は今は世界一だ。それでは、中国人観光客はなぜこれほど熱心に海外で買い物をするのだろうか。

インターネットのサイトに次のような統計が発表された。2013年に中国から海外へ出かけた観光客はのべ9819万人に上り、海外での観光消費額は1287億ドル(約14兆1280億円)に達した。だが総人口約13億6000万人におけるパスポート保有率は5%足らずの約6800万人に過ぎない。つまり、一部の人が年に何回も海外へ出かけているということだ。別の統計では、13年の大陸部観光客の海外旅行における項目別消費額をみると、多い方から順に、ショッピング、交通、その他、宿泊、食事、娯楽、観光地の入場料となっていた。

中国の海外観光客の購買力は今は世界一だが、中国人観光客はなぜこれほど熱心に海外で買い物をするのだろうか。買い物で人気なのはどのエリアか。中国人は海外で何を買うのを好むのか。これらの問いの答を探してみよう。

ぜいたく品消費は世界の半分

統計によると、13年の中国のぜいたく品消費額は1020億ドル(約11兆1970億円)に上り、世界のぜいたく品の約半分を消費したことになり、中国人は世界のぜいたく品市場で一番のお得意さまだ。ぜいたく品の海外での価格は国内価格よりも安いため、海外旅行が普及するにつれて、海外でぜいたく品を買うというのが一部の人々の間で旅行の主要目的になっていった。中国ぜいたく品市場研究機構品質研究院が発表した「中国ぜいたく品報告」によると、中国人の海外でのぜいたく品消費額は11年が500億ドル(約5兆4887億円)だったが、13年は740億ドル(約8兆1233億円)に増加し、国内での消費額の280億ドル(約3兆737億円)を大幅に上回った。

現在、中国公民の海外旅行先は米国、タイ、日本、フランス、英国、イタリア、韓国、マレーシア、香港地区、台湾地区などに集中している。為替レート、税還付政策、産地といった要因の影響により、同じブランドの商品でも地域が違えば価格に大きな差が生じることもある。そこでどこの国・地域に行けばより安くぜいたく品を手に入れられるか、その攻略法がネットで次々に発表されるようになった。あるネットユーザーは世界四大ぜいたく品消費エリア(韓国、香港地区、英国、フランス)における価格の比較をうち出した。たとえばフランスの有名ブランドのルイ・ヴィトンの場合、地元フランスで買うのが一番お得で、フランス以外では、欧州連合(EU)、米国、香港地区、韓国の順に価格が上昇していく。一部のカバン製品はフランスで買うのと韓国で買うのとで、1万元(約17万9000円)以上の開きが出るという。ネットユーザーの「黄小土豆」さんが「(海外で)ヴィトンのバッグを買えば、往復の航空券代分が浮くことになる。ぜひ買わなくちゃ」と言うのももっともだとうなずける。


中国観光客に向けて宣伝する日本の観光機関(2014年5月28日、北京)。

日用品は気に入ったものを購入

賈さんが働く北京のネットワーク大手は、毎年一度、海外へ社内旅行に出かける。賈さんは今年7月、夫婦で日本へ10日間の旅行に出かけ、3箱分の買い物をした。「炊飯ジャーだけで3つ買った。前に日本で炊飯ジャーを買ったところ、家に来てご飯を食べた客のほとんどがおいしいといってほめてくれたからだ。3つではまだ足りないよ」と笑う。日本製炊飯ジャーは高くて、よいものだと5000元(約8万9400円)以上するが、品質がすばらしく、世界の同類製品の中でも優れているため、「お気に入り」に挙げる人は多い。海外ショッピングの達人はみな自分の買い物地図を持っており、フランスでぜいたく品、スイスで、腕時計、日本で電子製品、香港地区と澳門(マカオ)地区で粉ミルク、などと記されている。

海外ショッピングをする人の多くが、「毎年はっきりとした計画を立て、衝動買いはせず、下調べをしっかりして、3つ以上の選択肢を比較する。ぜいたく品は欧州に行くチャンスがあり、買ってもいいと思える価格で、すごく気に入ったものなら買う。使用頻度が高いのはやはり日用品」といったことを考えている。

改善される国内免税システム

中国免税品(集団)有限責任公司の新疆維吾爾(ウイグル)自治区霍爾果斯市で、8月下旬に新型免税店がオープンし、北西地域初の免税ショッピングセンターとなった。これまでの隔離された出入国エリアにある従来型の免税店と異なり、この新型免税店を利用できるのは出入国者に限らず、新型免税店を擁するパークを出入りするビジネス関係者、視察関係者、観光客、従業者も利用が可能で、対象が拡大し、買い物の頻度や限度額も引き上げられ、一人あたり一日8000元(約14万円)まで買い物することができ、その場で商品を受け取ることもできるようになった。

中国国旅海棠湾免税ショッピングセンターが9月1日に海南省三亜市でオープンし、単体の免税店としては世界最大規模のものになった。センターを運営する中国免税品(集団)有限責任公司によると、このセンターの商品価格は香港地区より安く、国内のその他の都市を最大で30%下回る。今後は中国の二線都市や三線都市の観光客を呼び込むことが予想されるという。

業界の専門家はこうした事例を踏まえ、「中国の免税ショッピングシステムは継続的に改善されており、今後はより多くの観光客を引きつけて国内での消費を促していく」との見方を示している。