中国「観光デー」の定着で市民サービス

5月19日は、4回目の「中国観光デー」である。5月に入って旅行業界では全国各地で大々的なキャンペーンを繰り広げている。5月19日は、明末の徐霞客による旅行記『徐霞客游記』によると、彼の旅が始まった日である。中国社会科学院観光研究センターの戴学峰副主任によれば、徐霞客は布の服、草履、杖を身に付け一人で全国を漫遊したが、中国観光デーの意義は彼の一般市民の身分を重んじたものだという。果たして、この一般市民のための祝日は庶民の生活に定着するだろうか。

 

 

観光デーをさらなる優待日に

5月の連休期間には入場券、宿泊費などの価格が上昇するのに対し、優待、割引、キャンペーン、無料などが観光デーのシンボルである。

ネットで「中国観光デー」、「優待」をバイドゥーで検索すると、5月1日からの関連ニュースは781本にのぼり、5月19日には全国31の省・自治区で優待が実施されるということだった。江蘇省では239の優待が実施され、省全体で入場料の割引がある。浙江省内の風景区、公園などでは無料や割引などのほか、5月19日には300万人以上を対象とする「百城千景」キャンペーンを行う。上海では49の優待が実施され、市の観光協会によって49の名所の入場料の割引を行う。河北省は34の優待を行い、?台ではさらに無料で観光優待券を2万枚配布する。

これらは4年前の中国観光デー制定以来続いており、ネットでチケットを購入する人が増えている。北京の公務員張力正さんは5月初めの連休は家で過ごし、5月19日の休みと17、18日の週末を合わせて旅行に出るが、これは連休中の価格の高騰を避けてのことだという。張さんは中国観光デーができてから、ドライブクラブの友人たちとピークをはずした旅行をしている。

中国観光研究院の戴斌院長は、「今日中国の観光業はすでに大衆化の段階に入っており、一連の優待の実施は観光デー制定の趣旨と一致している」としている。

 

低い知名度、

普及のための努力

とはいえ、中国観光デーの知名度はそれほど高くない。北京市朝陽区の朝陽路付近で10人に聞いたところ、退職後の高齢者4人と地方からの出稼ぎの1人は中国観光デーのことを知らなかった。大学生2人はその存在は知っていたものの、何月何日かはっきり知らなかった。1人の中学生は近所の旅行社のPRで次の月曜日だと知ったと答え、ビジネスマン2人は観光デーに関する情報に関心を持っていた。

北京交通大学観光の発展と計画研究センターの王衍用主任は、「市民は中国観光デーをよく理解しておらず、旅行業界、関連部門によるPRやキャンペーンによってさらに普及をはかる必要がある」と指摘する。戴斌院長も「市民の観光に対する意識の変化に伴って観光デーも普及していくだろう」と言う。

しかし、一般のネットユーザーは、中国観光デーは全国的なPR、キャンペーンの日ではあるが、法定の祝日ではないことが知名度が上がらない理由ではないかという解釈をしている。あるネットユーザーは2011年に定められた中国観光デーが2030年までの20年間で週末に当たるのは、2012年、2013年、2018年、2019年、2024年、2029年、2030年の7回だけだとし、会社員や学生は観光デーに旅行に行きにくく、優待を得られにくいと指摘している。また、中国観光デーに割引や無料になるのは多くが大規模ではない観光地である。

これに対して戴斌院長は、「さらに多くの公共施設の無料化、特に都市部の公園の割引や無料化、市民のニーズに応えた観光地の建設、経済的なホテルや観光地、LCC航空会社を発展させるべきで、積極的に有給休暇とフレキシブルな勤務制度を推進し、ピークをずらした旅行を実現すべきだ」と指摘している。

 

真に市民のための

サービスデーに

1979年、国連世界観光機関(UNWTO)は9月27日を世界観光デーと定めているし、一部の先進国では特定の日を自国の観光デーとしている。2001年5月19日、浙江省寧海徐霞旅游クラブが広く社会に向けて中国観光デーの制定を呼びかけ、2009年12月1日、国務院は『観光業の発展迅速化に関する意見』を提出、中国観光デー制定を求めた。中国観光デーは国務院常務会で2011年3月30日に決議され、2011年から毎年5月19日を中国観光デーと定めた。中国観光デーの誕生は民間の提唱から国家の認可を得たものであるとメディアは指摘した。

この10数年間、中国は観光大国へと成長し観光強国への歩みを進めた。先日閉幕した2014年世界観光旅行大会が発表したデータによると、2013年の中国の観光業の成長値は世界のGDPの9.5%を占め、世界のGDP成長に対する貢献度は3.1%に達し、1億以上の就職先を作り出した。この先の5年間、中国観光市場規模は2兆5000億ドル(253兆9750億円)に達し、出国人数は延べ5億人となる見込みだ。「観光デーの制定は産業のセレモニーとしての概念が存在しており、国家が毎日国旗を揚げるのと同じだ」と北京師範大学?江輝副教授は言う。

このセレモニーの背後で、一般の観光客は優待措置の常態化のほか、さらに安心して旅行できることに注目している。昨年、『観光法』が正式に施行され、旅行者、旅行業者、旅行主管部門に規則をもたらし、長期にわたって無秩序状態だった観光市場に規制を加えた。しかし、『観光法』施行7カ月が経過し、ある種の観光乱立、台頭の流れは否定できない状況である。このところ、通信アプリのポイントを香港旅行や雲南旅行などに交換できるサービスが多く提供されており、実質的には低価格、無料ツアーとなっている。

中国社会科学院観光研究センターの劉徳謙副主任は、「中国観光デーは各方面の観光意識と観光の価値に対する認識を喚起する」とし、「観光業の発展に経済的な利益はもちろん重要だが、それだけではなく、市民にサービスし、中国観光業が真に市民を満足させるサービス業となることがさらに重要であり、この点を成し遂げれば、市場が浄化され、混乱状態が沈静化することは必然の成り行きである」と指摘している。