医療ツーリズムの発展を模索する中国

あるメディアによると、韓国を訪れた外国人観光客の多くが美容整形して変貌し、帰国時にパスポートの写真と違ってしまうことが頻繁に起きているため、韓国の美容整形病院では患者に「整形証明書」を発行し始めたという。韓国法務省の統計によると、医療ツーリズムの形で韓国を訪れる外国人観光客は2011年の2545人が、2012年には1万5688人に、さらに昨年は2万5196人へと急増した。韓国以外でも同じアジアのタイ、インド、シンガポール、マレーシア、フィリピンは医療ツーリズムの目的地としてベスト5にランキングされている。中国の医療ツーリズム産業は明らかに立ち遅れている。しかし、4月初め、ボアオで開催された楽城国際医療ツーリズム先行区記者会見の席上、海南省は現時点では国内で唯一国務院の批准を受けている医療ツーリズムを主力とした第三次産業団地を建設し、新しい世界の保養地にすることを目指すとした。


三亜のビーチでマッサージを受けるロシア人観光客(『海南日報』より) 

 

海南省が

先行して基盤を提供

医療ツーリズムは観光ツアーと健康サービスを一体化した新型の観光である。データによると、世界の医療ツーリズムの利用客は2006年の延べ2000万人から2012年には延べ4000万人と増加しており、利用客1人当たりの消費額は一般の観光客の十数倍に上っている。

世界観光都市連合会の専門家委員会の魏小安主任は、医療ツーリズムの発展には、良好な自然環境の保養リゾート地であるだけではなく、先進的な医療レベルも兼ね備えていなければならないと指摘している。人びとが韓国に行って鼻を高くする理由は、韓国が美容整形の先進的システムを持っているからである。

海南省は良好な自然環境を有し、同時に豊富な中国医学、医薬、リー族の医薬、ミャオ族の医薬という資源に恵まれ、著名な医療機関も次々に進出している。また海南国際観光島建設は国家戦略へと昇格し、また海南省は医療ツーリズム発展のために重要な政策基盤を提供している。

現在、ボアオ楽城国際医療ツーリズム先行区の健康産業のモデルプロジェクトである「南北海生命養護センター」が着工しており、政府が1億6900万元(約27億7748万円)を投じて三亜市中医院に建設している国際友好中医リハビリ病院は8月に完成する。三亜健康国際中医保養保健センターの建設も計画されており、中国漢方による健康薬品ブランドの立ち上げも始まっている。

海南省観光委員会の陸志遠主任は、ボアオ楽城国際医療ツーリズム先行区の使命は、国内外に知られたレジャー保養地となることだとし、インフラ建設と同時に、医療コンサルタントチームを組織し、最先端の医療人材を育成し、医療ツーリズム産業の発展をインテリジェンスの面で支えると語った。

 

北京や上海でも

「客待ち」を改善

現在、世界の100以上の国と地域で医療ツーリズムを行っている。世界ハイドロセラピー健康サミットとスタンフォード研究機構が共同で発表した研究報告によると、2013年の世界の医療健康ツーリズム産業規模は4386億ドル(約45兆946億円)に達しており、世界の全観光業経済の14%を占めている。

この大きな将来性が北京、上海などを引きつけている。北京市通州区にある北京国際医療サービス区は世界に向けた最先端医療サービス区である。この中には介護施設、健康保養会館、高品質の住宅などが揃っている。このほか、病院付近には付き添いのためのホテルも建設されている。

しかし、清華大学病院管理研究院の劉庭芳教授は、現在、中国で医療ツーリズムを推進している地区には3つの問題があると指摘している。1つは、理念とサービスの立ち遅れ、医療機関の国際認証の立ち遅れであり、2つ目は医療ツーリズム従事者のマンパワー不足、特に外国語のできる医療事務人材の欠乏、3つ目は医療ツーリズム市場秩序の混乱であり、業界に規範が欠けていることである。

医療サービスのJIC国際認証のレベルは医療ツーリズムの利用客の重要な選択基準となっており、現在中国で認証を受けた医療機関はわずか20数院しかなく、外国人利用客が中国を医療ツーリズムの目的地とする条件が整っていない。

また、中国の医療ツーリズム業界の海外営業も不足しており、海外での業界団体のPR活動も足りない。中国の医療ツーリズムは依然として「客待ち」の段階である。

 

中国医学を「売り物」に発展

中華国際医療ツーリズム協会の賈笑芳理事長によると、韓国の美容整形、タイの歯科治療サービス、スイスのアンチエイジング、米国の腫瘍手術など各国にはそれぞれ特色があり、中国も「売り物」を持つべきであるという。

業界関係者は、中国は観光資源が非常に豊富で、医療水準も高く、費用も安めであり、さらに中国医学という伝統的な強みもあるので、その特色を売り物にして、国内の利用客を引き止め、海外の利用客を引き寄せることが必要だとしている。

三亜中医院は海南省で最も早く中国医学保養ツーリズムを始め、現在ではロシア、スウェーデン、イギリス、米国、イタリア、カザフスタンなどの国々からの利用客を受けて入れている。

利用客は一般に冬と春にチャーター機で中国入りし、2週間前後のツアー期間、毎日鍼灸、ヨモギ蒸しなどの中国医学の治療を受けるほか、日光浴をし、きれいな空気を吸って保養する。

三亜には中国医学の治療を受ける外国人観光客に対し、利用客の健康状態に合わせた治療の策定、飛行機のチケット、ビザ、ホテル、通訳の手配など一連のサービスを提供している専門の旅行社がある。

三亜中医院の陳小勇副院長によると、今年3月までに延べ3万人余の外国人観光客に中国医学の治療サービスを提供し、利用客1人当たりの医療消費金額は平均2万ドル前後だという。