経済回復がキーワード 産業の融合が加速
観光業発展に新たな4つの流れ

中国の観光業界にとって、2013年は間違いなく歴史的な一年だった。鳥インフルエンザ、四川省地震、大気汚染など、業界にとって不利な数々の要因に見舞われた一方で、『国民旅游休暇綱領』の公布、『旅游法』の実施、休暇計画の調整などが行われた。どの新施策も人びとの生活と密接不可分であり、今後の中国観光業の発展に大きく寄与するであろう。業界関係者は、13年の観光業界が変化を求めたのに対し、14年は経済回復がキーワードになり、産業の融合という趨勢がさらに際立ってくるであろうと分析している。14年は中国観光業発展にとって4つの大きな流れが見られるであろう。

 

 

「スマート観光」で

素晴らしい旅行体験を

2013年11月6日、国家旅游局はウェブサイトで「美しき中国の旅-スマート観光」を14年の国内観光のアピールテーマとすると発表し、スマートサービス、スマート管理、スマート営業に力を入れ、観光資源と観光商品の開発・統合を促進し、観光業を情報化による現代型サービス業へ転換すると強調した。

年が明けるや江蘇省、天津、広東省、江西省などが続々と「スマート観光年」関連の活動を開始した。消費者はより多くの媒体や新しいツールを通して観光商品の情報を得ることができる。インターネット、携帯電話でホテルや航空チケット、各種チケットの予約、旅のオーダーメイドができる。観光スポットは、より多元化・個性化されたサービスを提供し、バーチャルシステムによって観光客はより包括的な観光体験ができる。

米国ペンシルバニア州のあるリゾートでは、リストバンドシステムを導入している。このリストバンドを身に着ければ、鍵なしでも部屋のドアを開けることができ、現金や銀行カードを持たなくても買い物ができる。将来、中国の多くの観光地でもこういった体験ができるようになるだろう。

 

「文明観光」を

いっそう奨励

2013年は、海外での一連の中国人観光客の心ない行為が国内でも物議をかもし、“文明的観光”がメディアで注目された。昨年7月には、中国人の海外観光客のモラル向上のためのテレビ電話会議の設置、国家旅游局による『中国人海外旅行文明行為指南』の制定、文明観光定義書の発令などによって「文明的観光、理性的消費」を訴えた。合わせて、「文明観光覚醒運動」を発動し、社会全体で海外旅行の悪習是正運動を開始した。

中国旅游研究院が発表した『中国旅游経済白書』によると、13年の観光経済は安定しており、国内の観光客の延べ人数は33億人に達する見通しだ。国家旅游局の邵琪偉局長は、14年全国観光事業会議で、「13年の中国の海外観光客の延べ人数は、およそ9730万人で、14年は1億人を突破するであろう」と述べた。

この膨大な数の海外旅行客は、国際観光消費に大きく貢献し、中国を強くイメージさせる現象となった。中国社会科学院旅游研究センターの戴学鋒副主任は、「中国は文明古国として、儒家の説く5つの徳(穏やか・素直・恭しい・質素・謙遜)を取り戻さなければなりません」と指摘する。

13年末、中共中央事務局は『社会主義の核心的価値観の育成と実践に関する見解』を発表し、文明的観光の宣伝教育、規範・社会監督の強化、国民の意識の向上をうたっている。

 

「高齢者向け」が

新たな市場に

『中国高齢者事業開発報告書(2013)』によると、2012年末時点の高齢者人口は1億9400万人で、前年比891万人増で総人口の14.3%を占めている。高齢者の単独世帯の増加、高齢者概念の変化、高齢者の経済力の向上に伴って、海外旅行に出かける高齢者が次第に増えている。

全国高齢者観光業開発促進シンポジウムが公表したデータによると、2010年の中国の高齢者消費額は10兆元(約16兆9000億円)で、20年には33兆元(約55兆8000億円)、30年には86兆元(145兆5000億円)に達するとしている。

しかし、まだ高齢者向けの旅行商品は特色やアピール性に欠け、多くは見かけ倒しで高齢者の要求を満たしていない。13年末、「凱撒旅游」は海南島リゾートカードを打ち出し、中高年層をターゲットに、海南島での休暇・療養商品を大きくリードした。業界関係者は、「この試みは高齢者向け旅行商品の刷新であり、高齢者のニーズにより適っている」と評価する。

「旅は若者にとっては学びの一部であるが、高齢者にとっては日常の一部である」とベーコンは言った。2014年は、高齢者向けが旅行商品の目玉となるであろう。

 

ニュータイプの

「アグリツーリズム」が好評

2013年末、中央都市化事業会議と中央農村事業会議は、アグリツーリズム発展に向けての方向性を示した。「大自然の中に都市を。美しい山河を都市住民に。文化を伝承し、歴史、地域の特色、民族的特性を留めた美しい都市を開発する。自然を護り自然に従い、『人と大自然は一体である』との理念を体現し、現存する風景を残し都市を自然の中に融合させ、山河が望め、郷愁を覚える都市建設をする」。「強い中国には強い農村が、美しい中国には美しい農村が、豊かな中国には豊かな農村が必要である」。

国際レジャー産業協会の朱至珍副主席は、「郷愁を覚える」がアグリツーリズム差別化のポイントになると指摘している。「中国のアグリツーリズムの現状を概観すると、多くの地域で明らかに、問題があります」と話す。

そして、「この現状を変えるには、地域文化の特色と『美しき郷愁』を資源統合の大筋にしなければなりません。『郷愁』がアグリツーリズムの最も重要な文化体験です。文化が欠落した旅に魂はありません。そこを大事にすれば、質が低い、まとまりがない、規模が小さいものから、新しく、まとまりのある、大きなものに変えることができ、商品の刷新、業態の多元化、さらには産業の融合を実現することができます」と語る。

都市化の進展に伴い、「美しき郷愁」を標榜した新たなアグリツーリズムがブームとなりつつある。