『旅游法』施行もゴールデンウィークは混乱
抑止効果不足か、それとも法の執行が緩いのか

『旅游法』が10月1日に正式に施行され、「国慶節」ゴールデンウィークは新法に対する最初のテストとなった。だが、ゴールデンウィーク期間中、景勝地では押し寄せる人波の「爆発」や観光客の「積み残し」、観光客が強制的に買い物をさせられた挙句に罵倒されるなどの、「調和」にそぐわない事件が発生し、新法にとってははかばかしくない状況となった。これは新法の抑止効果が足りないせいなのか、それとも厳格に執行されなかったためなのだろうか。

 

新法施行も観光地は混乱

10月2日、四川省九寨溝風景区では許容数を超える人数が入園し、登山道が麻痺に陥って、4000名以上の観光客が立ち往生した。ゴールデンウィーク期間中、雲南省のシャングリラ風景区では観光客が強制的に買い物をさせられる事態が発生し、その後、観光客が迪慶チベット族自治州の観光局に抗議したところ、逆に執行官から罵倒された……。

2013年4月に旅游法が通過して以来、この法律は旅行業界の過度の期待を背負い、人びとはこの法律によって旅行にまつわる数々の混乱から逃れられることをずっと願っていた。だが実際には、旅游法の施行後の最初のゴールデンウィークに依然として多くの問題が暴き出されている。

九寨溝管理局などの部門はその後、観光客が立ち往生した問題について正式に謝罪するとともに、2日間の入場券を購入した観光客に対して全額を返金することを承諾した。迪慶チベット族自治州は「シャングリラでの混乱」に関わった旅行社に10万元(約160万4000円)の罰金と、1カ月の業務停止処分を科した。観光客を罵倒した執行官は迪慶チベット族自治州の旅游法執行分遣隊の職を解かれ、事件に関わったガイドは資格証を取り消された。だが、こうした処分に対しては依然として不満の声があり、これでは新法の抑止効果を示すには十分でないとしている。

ある業界人は、新法施行後最初のゴールデンウィークに起こったさまざまな混乱に対して最も厳格な処罰が下されず、もし施行後ただちに一罰百戒の措置を採ることができなければ、法律の抑止効果と執行の取り組みを大きく削ぐことになるとしている。

 

試される法律執行への取り組みの程度

中国旅游研究院の戴斌院長は、「今回のゴールデンウィークには一部で混乱があったとはいえ、観光市場全体としては比較的平穏であり、従来と比べれば旅游法の抑止力はやはり効果を及ぼしている」として、「旅游法は業界の秩序を管理し、サービスの品質を向上させるための一つの武器です。法律を貫徹するには一つの過程があり、十分な成果を得るまでには段階的な困難があるからといって、法律に対する信頼を失うことがあってはなりません。観光の混乱現象はかねてからのもので、旅游法の効力とゴールデンウィーク期間中の効果との関係については理性的に見るべきです」と語っている。

三亜市旅游協会の陳国江会長は、「新法施行後初のゴールデンウィークは、人びとが観光を取り巻く環境と観光市場のモラルに非常に注目しており、これこそが旅游法が及ぼしている効果だ」として、「観光の混乱現象は一部政府の管理監督部門と観光企業が旅游法をあまり重視していないことを説明しているに過ぎません。ある面では政府の管理監督が的を射ておらず、また別の面では一部の旅行社がこれまでのやり方で新法の実施がどの程度のものなのか、抜け道があるのかどうかを見ようとした結果であって、正に政府の法律執行に対する取り組み度合いを試しているのです」と語っている。

 

個人観光客の時代になって直面する新たな課題

海南省旅游発展研究会の王健生会長は「今回のゴールデンウィークは、従来の観光ツアー客が大幅に減って、かつてないほど個人客が増えました。そのことが旅游法の施行によって中国の観光に起こった質的変化を反映しています」と語っている。

王健生会長は「従来の観光ツアーの時代は『保護』の時代でした。現在は個性化、多様化したレジャーの時代で、政府と観光企業いずれにとっても、質的変化は大きな課題であり、テストというべきです」として「従来の観光ツアーの時代には旅行社とガイドは保母が子どもをあやすようなサービスを顧客に提供してきました。ただ、個人客時代の到来に際して、政府と企業は果たしてその準備ができているでしょうか? 個人客時代の消費パターンに対して、それにふさわしいサービスをどうやって提供していくのか、これらはいずれも新たに直面している課題です」と語っている。

王健生会長は「2013年2月に中国国務院が公布した『国民観光レジャー概要』は国民の観光レジャーを取り巻く環境、インフラ建設、商品開発、サービスの質などの面でのタスクと対策を打ち出していますが、ゴールデンウィークに明らかになった観光の混乱現象から見ると、政府と企業の考え方は依然として大衆観光時代のサービス提供方式と管理システムにとどまっています」と語っている。

戴斌院長は「旅游法では団体ツアー客に関する問題を重点的に解決していますが、個人客に対する関心が十分だとは言えません。個人客の権益をどうやって保障するかが、今後中国の観光産業が取り組むべき課題になるでしょう」としている。