中国初の『観光法』成立で旅行客の権利を保護

4月25日、第12回全人代常務委員会第二次会議で『中国観光法』が成立した。これは中国初の観光に関する総合的な法律である。『観光法』は全10章111条から成り、総則、法律責任、付則を除くと、それぞれ観光客、観光企画と促進、観光業経営、観光サービス契約、旅行の安全、監督管理、トラブル処理などの内容に対しての規定が盛り込まれている。全人代財務経済委員会の尹中卿副主任委員、全人代常務委員会法律工作委員会経済法室の王超英主任、国家発展改革委員会社会発展司の王威司長、国家観光局の杜一力副局長がこの法律の基本原則、注目点、意義について解説してくれた。

 

 

総合立法モデルの採用

『観光法』は総合立法モデルを採用し、観光業の諸要素と観光活動の関連事項を整理、結合させて、政府が立案し各部門が担当する。すなわち、観光に関する分担と総合的な協力、市場の管理監督、苦情処理などの制度の構築であり、①促進(経済法)、②管理(行政法)、③民事(契約)という3つの分野の性質の異なる法律基準をカバーしている。

 

旅行客保護を強化

この法律は旅行客の権利の保障をメインとしているが、同時に一定程度、旅行客の権利そのものの保護を打ち出している。まず、各関係者の権利・利益のバランスを重視し、政府と観光業者、政府と旅行客、旅行客と観光業者、旅行客と観光業就業者、観光業者間の権利、義務と責任を整理して明確にした。次に、権利・利益の総体的なバランスの基礎の上に、旅行客が主体であることを打ち出し、政府の公共サービス、観光業営業規則、民事行為規範、観光業各関係者の安全保障義務、旅行トラブルなどの分野において、旅行客の権利・利益を守る規定を強化した。

旅行客について特に1章を設け、具体的な権利によって旅行客の保護を確定した。それは、1.自主的に選択する権利、2.実情を知る権利、3.厳格な実行を要求する権利、4.尊重される権利、5.救援や保護を請求する権利、6.特殊なグループが便宜・優待を得る権利の6つである。それを元に、政府の観光公共サービスに対する要求を明示し、観光公共サービスの情報を全面的に提供すること、観光インフラ建設の強化、公共資源である観光地の公益性の保証、観光地の安全やリスク情報を提供すること、安全管理と救援の義務を含む旅行客の基本的な需要を満たすことを強調している。また、観光業者とその就業者に対しては厳格な義務を規定している。1つ目は虚偽のPR、強制的な取引などに対する厳格な規定、2つ目はさらに厳格な説明と告知義務の明確化、3つ目は契約のさらに厳格な全面的な履行と責任引き受け義務の規定、4つ目はさらに厳格な安全保障義務の規定である。

 

観光のホットな問題に対応

この法律は、現在問題になっているツアー料金のダンピング、強制的ショッピング、オプショナルツアーへの強制参加、観光地の入場料などについても対応している。

観光市場の秩序問題に対して、『観光法』は民事関係を通じての調整という根本的政策を堅持しているだけでなく、現在の中国の一部旅行客は契約意識が低く、民事手段を通して権利を守る能力が不足しているなどの特徴を考慮し、行政手段でそれを補う応急措置をとっている。

観光業者がツアー料金をダンピングしてリベートによる収入を得ている問題について、この法律では特に「旅行サービス契約」の1章を設け、旅行契約の締結、履行から解除までの完全な規制を定め、旅行社、消費者など各関係者の権利と義務を整理して明確化した。

同時に、旅行社とその就業者が契約について内容の説明、告知、厳格な履行などの義務を負うことや、旅行客は無条件でキャンセル、払い戻しを受ける権利を定め、上記のような問題が発生する可能性を最大限に低下させた。

入場券価格の問題については、「値上げを厳格に抑制する」という基本原則を示し、観光地の入場券価格の公開性、公益性、適時性を強調した。例えば、公共資源を利用して建設された観光地の値上げ手続きには厳格な規定を設け、各関係者が関与するヒアリングを行うことを求めており、別途料金徴収項目の増加などの方法による、手口を変えた値上げを禁止している。