海の恵み――福建省海水温泉リゾート


金湯湾海水温泉リゾート

福建省には温泉が多い。

福州人は入浴を“洗湯”と言う。?州人の祖母は毎日夕方になると私を大声で呼び、浴槽を掃除するように言った。大きな木製の浴槽は、小さな孫の私にとってはちょっとしたプールであった。子どもの頃、福州や?州の温泉浴場には、大人に連れられて行ったことがある。濡れた床のタイルや滑りやすい浴槽、立ち込める湯けむり、ぼんやり見える素っ裸の人影、暗くて騒がしい浴場は、怖くて好きではなかった。

海に浸かってみると、海の暖かさと愛情、神秘と無限性を感じる。金湯湾海水温泉は、アモイから100㎞のところにある。このリゾート地は、福建省雲霄県の陳岱鎮にあり、観光地として有名な東山県に隣接している。青く美しい金湯湾に囲まれ、悠久の歴史を有する古い街並み。金湯湾の主は子どもの頃、裸足でこの地を駆け回り、蟹を捕まえたり、カキの殻をこじ開けたり、きれいな貝殻を拾って好きな女の子にネックレスを作ったりした。

?南人はヨーロッパの歴史文化の本をめくる時、いつも古代ローマ・古代ギリシャの水道橋遺跡のページで手を止め、窓の外に目をやる。そこには花崗岩でできた一つひとつのアーチ型の水道橋があり、命を支える水を運び、人々の渇いた心を潤していた。

大水道橋は東山人の誇りであった。歳月を費やした涙と汗と知恵の結晶であり、激しい海風や海鳴りに耐え抜いた雄壮な姿。少年時代に憧れた異国のギリシャ神話の夢の世界カプリの町を思わせる。その後、大水道橋は心の拠り所となり、やがて金湯湾の文化の象徴となった。

沈海高速道路を下り、常山料金所を出、遠くにぼんやり大水道橋が見えてくると、やがて金湯湾だ。青々とした山河、青い海と白い砂、中国の歴史的建造物である大水道橋。約100km2の海水温泉リゾートは、五つ星ホテルを軸に、放射線状に豪華な宿、?南の伝統的な小庭園、地中海風ヴィラなどが、湾に有効的に配置されている。

私が宿泊した温泉リゾートホテルの部屋は清潔で、ソフト面においても上品でユニークであり、設計者の独創性を感じる。入口を入ると4m四方のプライベートの中庭があり、青いタイルを敷き詰めた浴槽がある。浴槽の周りには緑が植えられ、壁に沿って植えられた竹が揺れている。

パンフレットに、「金湯湾海水温泉は“温泉クイーン”として知られ、1日の湯量は2000t以上、温度は最高65℃である。太いパイプで水深1000m以上の海底から引き込まれている。30種余りのミネラルおよび微量元素が含まれる、世界でも珍しいハイグレード複合型医療温泉」とある。

夕食は食欲旺盛であった。プリプリのロブスター、ハマグリ、サザエに、魚、蟹。すべて紅樹林で獲れた海の幸である。2日目の早朝、我々は待ちきれず温泉体験に回った。温泉は水温ごとに分けられ、徐々に水温を上げて、最も高温のヒノキ寝湯風呂に至る。ジャグジーでは疲れがとれて体が軽くなる。全身から湯気がたち、莫言の小説『透明な人参』のようである。

一番不思議だったのは、いつも悩まされていたアレルギー性鼻炎が突然治っていたことだ。海の恵みがこんなにも素晴らしいものだったとは!