観光消費の集中という新たな課題

9月30日から、2012年の最長で最後の大型連休が始まる。

この大型連休には様々な新しい局面が見られそうだ。多くの省で期間中の入場料の引き下げや、高速道路の無料化などがあるからだ。中国社会科学院旅游研究センターの調査によると、75.12%の観光地が高速道路の無料化による交通渋滞を懸念している。このゴールデンウィークは明らかに観光消費が集中し、観光業界全体が今までにない問題に直面するであろう。

細かく見ていくと、大衆の絶え間ない旅行に対する要求の高まりと、観光サービスの供給不足が主な課題であることがわかる。しかも、この課題の中身が変化してきている。これまでのゴールデンウィークの旅行の不満や苦情というと、主にサービスの質に集中しており、質の悪さが引き起こしたもの、また、より多くは、サービス分野の悪弊が一気に噴出し、表面化したものであった。

ところが、人々の所得が増えるにつれて、ニーズも変化し、ゴールデンウィークの旅行の課題も変化している。観光業界が直面し、新たに挑戦しているものとは次の3つである。

第1に、“大規模”需要への挑戦である。過去には、ツアーと言うと“大規模”集中であったが、現在、人々の団体ツアーに対するニーズは変化しており、団体であっても団体行動はとらない。しかし、秩序は失わないというものである。いかに団体ツアーの形をとりながら、質も向上させていくかが1つ目の挑戦である。

第2に、新たな旅行ニーズへの挑戦である。人々のニーズは日々変化してきている。多くの人が“とりあえず観光地へ”という旅から、心地よさ、驚き、ストーリー性や希少価値を求めるようになっている。10数年のゴールデンウィークの経験を経て、多くの人はもはや、長期休暇旅行の質を下げたくないと思うようになった。人々は1年に何度もない長期休暇に、できるだけ満足のいくサービスを受けたいと願っている。しかし一方で、現在の旅行商品、サービス、業態はみな完全にはニーズに応えられていない。とは言え、旅行客の長期旅行に対する期待が高過ぎるのかもしれない。これが2つ目の課題である。

第3に、特色あるサービスへの挑戦である。今日、旅行のニーズは分化してきているが、予測は可能である。国慶節の長期休暇には、有名な観光地の高級ホテルでは質の高いサービスを要求される。大人数を接待しながら、如何に個別の客の異なった要求に応えられるか、如何に特色あるサービスが提供できるか。“大人数”と“個人”の両方を満足させることが、第3の挑戦である。

要するに、長期休暇における中国観光業の命題は、もはや、容量を拡大すれば解決できるという簡単なものではない。増大する観光客の数に合わせてサービスを行おうとしても、到底、大衆を満足させられるサービスは提供できない。

国慶節のゴールデンウィークの問題に対しては、サービス能力とそのレベル、業態の革新などを総合的に考えていかなければならない。それには、中国の観光業が、過去の工業化時代の大量供給からモデルチェンジして、より脱工業化時代のニーズに応えるサービス、工程、モデルを形作れるかどうかが正しい答えを導き出す唯一の道である。激増する観光客に対して中国の観光業界が一定の柔軟性と強靭さを発揮しつつ、新たな特性を生み出していけるかどうかが、この問題を解決する鍵となる。

そして、実は、この長期休暇では旅行者も試される。旅行者の能力は向上しているのか、資質は磨かれたのかが、この長期休暇に現れるであろう。

現在、中国の観光業界は、まさに新たな手段と方法を模索し学んでいるところである。旅行ツールの長短を賢く見直し、心のこもったサービスで顧客を満足させるために、体制・機構を整えることで、中国の観光業界はさらに力をつけ、より多くのニーズに応えられるようになるであろう。