国内で唯一の格安航空会社の秘密

格安はサービスが悪いということではない

北京から春秋航空の新しいエアバスA-320で、上海に向かった。機内に入ると、他の飛行機と違うところが3つあった。1つは座席の間隔が狭い。2つめは春秋は水だけで、食事のサービスはない。ただし、必要なら買うことができる。3つめは無料の受託荷物と機内持込み手荷物は合計で15kg以内であること。

この3点のサービスの違いは旅客にどういう影響をあたえるであろうか。春秋航空の広報担当者の張武安氏は次のように語った。「春秋航空のサービスの本質は必要のないものを取り除きコストを下げて、旅客に還元することです。まだ飛行機に乗ったことのない70%以上の人々が乗れるように、飛行機が贅沢という考えを改めて、一般的な交通機関としての概念を普及させたいのです。

低コストを前提にして、旅客に期待以上のサービスを提供する努力をしています。『機内が騒がしい』ということに関しては、昨年の後半から機内での『ふれ売り』をやめました。今年は、ビジネスの旅客に『ビジネス・エコノミーシート』といって、少し広めの機内最前列の座席を設けました。これまでの航空会社のエコノミークラスの値段で、前列の座席、優先的に搭乗、食事のサービスなどといった『ビジネス・エコノミーシート』サービスを受けられます」。

安全がすべて

旅客が飛行機に乗る際の関心事は、やはり安全の問題だ。「低コストのビジネスを展開していますが、安全面で節約するということはなく、一貫して『安全がすべて』の理念を堅持しています。民営の航空会社は一回の事故でも許されません。そうでなければ、生き残ることはできません」と張氏は強調した。

「現在、春秋航空で保有している31機は、すべてエアバスA-320です。機体の平均寿命は2.9年です。400名以上の社員のなかで、外国籍のパイロットは飛行した翌日に自分のフライト品質データをみて、問題をさがしだし危険を予防することができます。

統計によれば、2011年、春秋航空は事故に至るまでのことは起こっていません。民航局が公布した2011年の国内の航空会社24社に対する『飛行事故兆候ランキング』では優秀な成績をおさめています。民航華東管理局が行った春秋航空への2011年安全審査では、100点がつけられました」。

なぜチケットが安いのか

春秋航空は国内で唯一の格安航空会社として発足してから7年が経過し、虹橋、浦東、石家庄、沈陽に支社がある。国際線と地区線が7航路、国内便は50余りの航路がある。

張氏は、春秋航空の利益の秘密は「2つの単一化、2つの高さ、2つの低さ」にあり、これらの基礎のうえに、国内の地方市場において、旅客サービスに自主的なマーケテイングを展開して、利益を出していると話した。

「2つの単一化」とは、機種と座席の単一化のことである。春秋航空で導入しているのは、エアバスA-320で、エコノミークラスの座席しかない。しかし、国内便の座席はビジネスとエコノミーに分かれている。機種と座席が1種類なので、ライセンス取得や人員の育成、航空資材の備蓄、フライト補修管理などのコストを抑えられる。「2つの高さ」とは、乗客率と飛行機の利用率が高いということである。春秋航空の座席は改装によって、国内の一般の旅客機より26席多く180席ある。現在のところ、平均して95%の座席が埋まり、国内航空業界でトップである。飛行機の利用率が高いというのは、春秋航空がポイント間の航路システムで、ダイヤを効率的に組んでいることを指している。アモイ、沈陽、ハルビン、青島、広州、海口、三亜などの航路では、毎日2~4便が飛行している。「二つの低さ」とは、経費や管理費を低く抑えていることだ。これには地上勤務と客室サービスの両方を含んでいる。無料手荷物の許容重量を軽減したり、さらには春秋国際旅行社でオンライン予約を拡大し、電話サービスセンターやチケットをネット販売することで、販売代理店に依存していない。

誰もが手頃な価格で飛行機に乗れるように

春秋航空は国内市場で利益をあげる一方で、遠くの空にも目を向けている。2010年7月28日、日本の茨城に就航してから、国際航路を増やし、高松、佐賀、そして香港、アモイ、タイのバンコクにも航路を開設している。

張氏によると、茨城、佐賀、高松などでの航路の開設前は、知名度が低く、中国の旅客でさえも知っている人はほとんどいなかった。しかし、就航してからは、知名度があがり交流や往来が増えている。ほぼ閉鎖される寸前の茨城空港は春秋航空の参入によって「最高の格安航空の飛行場」という名誉を受けた。日本のメデイアからも春秋航空は日本の飛行場の「救世主」と呼ばれ、春秋航空が日本に進出した2010年は、日本の格安航空元年と言える。

春秋航空は「誰でも手頃な価格で飛行機に乗れるように」の理念を掲げ、その実現に向けて、中国の格安航空の世界を切り拓くべく、さらに高く、さらに遠くへと飛ぶ。


春秋航空のユニークな「カゴのサービス」(撮影/?峰)