高齢化したマンションに優しさを

三十数年となった日本の生活で感じるのは、日本社会は新しい物事に対して極めて敏感で、高い関心を示す社会だということだ。中国では「老齢社会」だが、日本では「高齢化社会」と呼ばれる。還暦を過ぎた私にとって、心理的には「高齢」に対する共感が「老齢」に対する共感を遥かに上回っている。

1980年代、私は『中国青年』誌に勤務していた。転職を試みたのだが、もう少しのところで『中国老年』誌に行きそびれた。日本に私費留学するチャンスを得たため、『中国老年』誌の「青年編集者」になり損ねたのだ。しかし、日本には今に至っても全国レベルの『日本老年』誌は発行されていない。

話は戻るが、新しい事物に名前をつけるのが好きな日本人は、最近「高齢化社会」だけでなく、築40〜50年たった老朽マンションに「高齢化マンション」という名前も付けた。以前、中国ではマンションの寿命は25年とされていたが、それに比べれば築40〜50年のマンションは確かに「高齢化マンション」となるだろう。

今、日本の「高齢化マンション」には新しい問題が出てきた。それは住民の中に認知症の高齢者が増えてきたことだ。大手マンション管理会社「大和ライフネクスト」の管理人に対するアンケートによると、回答者の約30%がマンション内に認知症の居住者がいると答えている。

興味深いことに、日本のマンション管理人は定年退職後に再就職した人が多く、セカンドステージでの活躍を期したものの、寄る年波には勝てず自身も認知症となってしまう人もいるという。「認知症の管理人」対「認知症の居住者」という局面となっているマンションもあるのだ。その場面を頭の中で想像してみると、何とも複雑な気持ちになる。

現在、「高齢化社会」の日本では「高齢化マンション」の認知症居住者への対応問題の解決に着手し始めたところだ。指定日以外にゴミ出しをした居住者に対し、管理人は「注意」のメモを貼るが、日本語の「注意」には厳しいイメージがあり、高齢の居住者はメモを見ると恐怖を感じてしまい、ゴミ出しをしなくなり部屋にゴミがあふれてしまうケースもある。そこで、管理人は、そのような高齢者に対して優しくゴミ出しの日を伝えたり、部屋までゴミを回収しにいく場合すらあるという。

これまで、日本のマンションの管理規約では、管理人は部屋の解錠はできなかったが、現在では居住者の立ち合いのもとで、管理人が部屋の解錠ができるとい

う新しい規約も作られている。一部の「高齢化マンション」では「認知症高齢者対応規則」も作られており、相談窓口を開設したり、緊急連絡用の電話を設置したり、さらに認知症高齢者の家族と直接連絡を取れるようにしているところもある。

高齢者の認知症の正式な病名は「アルツハイマー型認知症」だ。この認知症患者が増え続ける「高齢化社会」には、さらに温かさ、優しさが必要である。優しさがあれば具体的な施策を用いる上でも成果が期待できる。日本の「高齢化マンション」は今まさにそのような方向に動いているところだ。その努力のプロセスと得られた成果は日本だけのものにせず、人類運命共同体の共通財産としなければならない。