自力更生で食料安全保障を目指す中国

習近平総書記は3月6日午後、全国政協第13期第5回会議に参加している農業業界と社会福利・社会保障業界の委員とのグループ会議に出席した際、「食糧の安全は『国之大者』(党と国家の前途命運、中華民族の偉大な復興、人民の幸福と安寧、社会の長期的安定等に関わる、国家にとって大事なもの)。世の中のさまざまなことの中でも、食糧は最も大事だ。民は食をもって天となす」という簡潔ながらも重要な発言を行った。

食料の供給が十分なら安心して暮らせる

農業は国の基礎であり、基礎が強固であれば国も安定する。中国の社会が安定していて、国民が安心して暮らすことができている主な原因の一つは、食糧が十分にあり、その点で心配する必要はないからだ。

中国国家統計局の統計によると、2021年、中国全土の食糧総生産量は6億8285万トンと、前年比2.0%増の1336万トン増加し、年間生産量は過去最多を更新して、7年連続で6億5000万トン以上をキープした。

中国は世界の9%の耕地と、6%の淡水資源で、世界の5分の1の人口を養っている。中国人一人ひとりに確実に食糧を届けるというのは、決して容易なことではない。

中国人が食べるものは極力中国産にする

ただ、中国の食糧の安全は、枕を高くして安心して眠ることができるような状態でもないことははっきりと認識しておかなければならない。

税関総署の統計によると、2021年、中国の輸入食糧は累計で前年比18%増の1億6453万9000トンに達した。中国の食糧生産量の24%を占める数字で、これも過去最多を更新した。つまり、これは中国の食糧供給はギリギリバランスを取ることができている状態であるという警告だ。

食糧品種構造を見ると、米と小麦という主な穀物の生産量は全体的に安定して、バランスが取れていて、余裕があるほどだ。しかし、トウモロコシは生産と需要のバランスが取れておらず、大豆は大量に輸入しなければならないほど不足している。

食糧の安全は、実際には食物の安全につながる。例えば、「大豆の安全」は、「肉の安全」に関わっている。輸入大豆は主に、動物の飼料となり、世界の供給や価格が不安定になると、直接影響を受けるのは中国の国民の食卓に並ぶ肉や卵、乳製品となるからだ。

そのため、中国の国民が美味しいものをお腹いっぱい食べることができるようにするためには、構造を最適化し、穀物やトウモロコシを安定させ、大豆や植物油の生産を拡大して、中国人が食べる物は、できるだけ中国産にしなければならない。

誰が中国を養うのか――自力更生を実現すべき

課題は多いものの、中国には対応策がある。マクロ政策という観点で見ると、中国は現在、食糧安全をめぐって党と政府が同じ責任を担うという方針を全面的に実行しており、食糧安全責任制審査を厳格に行っている。

メゾスケールの戦略という観点で見ると、非常に厳格な耕地保護制度を実施して、約1億2000万ヘクタールの耕地を確保すると同時に、多くの措置を並行して実施して、種業界のテクノロジーの自立、自強、種源の独自のコントロールを実現している。

ミクロ主体という観点で見ると、中国は農民の食糧生産に対する積極性を守り、適度に経営規模を発展させ、農民が食糧を生産して利益を得られる状況を作っている。

将来に目を向けると、中国の国民は素晴らしい生活を期待しており、さらに多く、バラエティに富んだ食糧の下支えが必要となる。

食糧の安全という問題において、中国は警戒を緩めて油断することは決してあってはならず、「耕地は1億2000万ヘクタールもいらない。テクノロジーの水準を向上させさえすれば大丈夫」という間違った見方は避け、工業化により食糧生産が減るということは決してあってはならない。

世界は現在、世紀の感染症に加えて、100年に一度の変局を経験しており、世界の食糧供給チェーンリスクが依然として存在している。

中国のような大国が、食糧の安全を守るために、国際市場頼りになることはできない。

最悪の事態という「下限」を明確に設定し、常に危機意識をもった「ボトムライン思考」を抱き、平時でも、危難が起こることを心得て油断しないようにしなければならない。

「誰が中国を養うのか?」という質問の答えはただ一つだ。「中国は自力更生を実現し、自分で自分を養わなければならない」。