翁 道逵 ベリーベスト法律事務所パートナー(中国弁護士)
日本の暗号資産に関する法制度ガイド その48

一般社団法人日本暗号資産取引業協会(以下「認定協会」という)は、暗号資産に関する反社会的勢力対応などの関係の自主規則として、「暗号資産交換業に係るマネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関する規則・ガイドライン」、「暗号資産交換業に係る反社会的勢力との関係遮断に関する規則」を規定しております。

今回は認定協会の「暗号資産交換業に係るマネー・ロ-ンダリング及びテロ資金供与対策に関する規則」(以下「マネー・ローンダリング規則」という)を紹介します。

法令等の遵守

「マネー・ローンダリング規則」第3条によると、会員は、暗号資産交換業務を行うに当たり、「マネー・ローンダリング規則」のほか犯罪による収益の移転防止に関する法律(平成19年法律第22号、以下「犯収法」という。)その他マネロン・テロ資金供与対策に係る法令諸規則を遵守しなければなりません。

また、会員は、その業務を行うに当たり、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン(平成30年2月6日金融庁、以下「マネロン・テロ資金供与対策ガイドライン」という。)記載の「対応が求められる事項」を実施するとともに、「対応が期待される事項」の実施に努めなければなりません。

体制整備

「マネー・ローンダリング規則」第 26 条によると、会員は、自らの業務の内容、業容に応じてシステム、マニュアル等により、疑わしい取引等を検出・監視・分析する体制を構築しなければなりません。会員は、役職員が発見した組織的犯罪等による暗号資産交換業務に係るサービスの濫用に関する事案について適切な報告が行われるよう、体制を整備しなければなりません。

また、会員は、取引の不正利用等を防止するため、必要に応じて適宜、取引時確認を実施するなど、取引の不正利用による被害防止のあり方について検討を行い、必要な措置を講じなければなりません。

さらに、会員は、捜査機関等から暗号資産交換業に係る取引が詐欺等の犯罪行為に利用された旨の情報の提供があったときその他の事情を勘案して、犯罪行為が行われた疑いがあると判断した場合には、以下の各号に掲げる措置を講じなければなりません。

(1) 犯罪行為に利用された疑いのある取引を速やかに停止するための措置

(2) 口座開設契約等を締結している者が当該契約を犯罪行為に利用していると疑われる場合には、当該者に対する資金の払出しを停止するための措置

(3) 当該取引と類似する他の取引につき、リスク評価の厳格化等が必要でないかを検討し、その結果をリスク管理体制へ反映させるための措置

ちなみに、会員は、「マネー・ローンダリング規則」のほか犯収法、マネロン・テロ資金供与対策ガイドラインその他マネロン・テロ資金供与対策に係る法令諸規則を遵守するために必要な措置の実施手順及び対応要領に関する規程を作成しなければなりません。