翁道逵 ベリーベスト法律事務所(中国弁護士)
日本の暗号資産に関する法制度ガイド その41

一般社団法人日本暗号資産取引業協会は、暗号資産に関する業務取り扱い関係の自主規則として、「暗号資産の取り扱いに関する規則・ガイドライン」、「暗号資産信用取引に関する規則・ガイドライン」、「暗号資産交換業に係る暗号資産関係情報の管理体制の整備に関する規則・ガイドライン」、「暗号資産交換業に係る財務管理に関する規則・ガイドライン」などの8つの規則・ガイドラインを規定しております。

 

今回は「暗号資産交換業に係る財務管理に関する規則・ガイドライン」の詳細を紹介します。

 

財務管理の原則

当該規則第3条によると、会員は、健全な財政状態の維持に努めなければなりません。会員は、財政状態が悪化した場合には、利用者財産の保護を最優先することとし、速やかに健全な財政状態を回復するための措置を講じなければなりません。

また、会員は、自らの財務上のリスク(市場リスク、取引先リスク及び基礎的リスクを総称していう。以下同じ。)を把握し、当該リスクを適切に管理しなければなりません。

さらに、暗号資産の管理を行う会員は、履行保証暗号資産の数量を本邦通貨に換算した金額以上の純資産を維持するとともに、当該純資産を維持していることを定期的に確認できる体制を確保しなければなりません。

 

市場リスクの管理

当該規則第6条によると、会員は、以下の措置その他これに準ずる方法により、市場リスクを適切に管理しなければなりません。

(1)財務健全性水準を考慮の上、暗号資産の自己売買業務(会員の自己勘定によ る取引に係る業務をいう。以下同じ。)に割り当てることのできる自己資産及び 取引限度額(以下「対象限度枠」という。)を設定すること。

(2)対象限度枠の設定に際しては、自己売買業務の特性(対象となる暗号資産の ボラティリティ、取引先の属性、取引量、取引頻度、ポジションの保有期間等) を踏まえて、当該業務の種類ごとに対象限度枠を設定するよう努めること。

(3)対象限度枠の範囲内で自己売買業務が日々適切に行われているかモニタリン グすること。

(4)対象限度枠については、自己売買の損益等自社の財務状況の変化等に応じ、 財務健全性水準を維持する観点から、適時見直す等必要な措置を講じること。

また、会員は、会員は、自らの財政状態及び財務上のリスクを適切に管理する責任者(以下「リスク管理責任者」をいう。)を定める必要があります。リスク管理責任者は、会員の財務の健全性に影響を生じさせる事象を検知した場合には、速やかに、これを関係部署及び取締役会その他これに準ずる意思決定機関に報告しなければならず、報告を受けた関係部署及び取締役会は、その原因を確認するとともに、会員の財務の健全性を回復するために必要な措置を速やかに講じなければなりません。

次回へ続く