翁 道逵 ベリーベスト法律事務所パートナー(中国弁護士)
日本の暗号資産に関する法制度ガイド その29

一般社団法人日本暗号資産取引業協会(以下「認定協会」という)は、「定款施行規則」、「自主規制規則定義集」、「暗号資産取引業協会自主規制基本指針」、「監査規則」、「会員における倫理コードの保有及び遵守に関する規則」という5つの規則のほかに、「意見公募手続の実施に関する規則」、「会員の資格及び届出に関する規則 」、「 入会金及び会費に関する規程」、「無登録業者等に係る情報等の報告に関する規則」、「 情報公開規程」などの規則を基本規則として追加しております。

今回は「暗号資産取引業協会自主規制基本指針」(以下「基本指針」という)の詳細を紹介します。

「基本指針」と経営管理

「基本指針」第3条によると、会員は、暗号資産取引業の健全かつ安定的な経営を行うために、次の各事項を経営管理の基本として定め、これら業務の実施のために必要な社内管理体制を整備しなければなりません。

(1)取り扱う暗号資産、取引(暗号資産取引業に該当しない暗号資産関連取引を含む。)の特性、ビジネスモデル、業務内容、経営規模等を勘案の上、会員が暗号資産取引業を行うことにより生じ得る財務及び経営上のリスクを定期的かつ網羅的に検証し、評価すること。

(2)前号に基づき検証・評価した財務及び経営上のリスクに適時かつ適切に対応 するための具体的な経営計画を定め、当該計画を遂行する上で必要な人的・物的資源を確保すること。

(3)前号に基づき策定した経営計画を遂行し、財務及び経営上のリスクを効果的 に低減するための体制を構築すること。

(4)リスクの再検証・再評価を通じて得られた経営課題を、経営計画の更新などの必要な措置を講じる などの方法により速やかに経営管理に反映すること。

(5)前各号の履行の状況について、内部統制部門が適切にモニタリング・検証し、 必要に応じて改善策を策定・実施するなど実効性ある内部統制を確保するために必要な体制を構築すること。

さらに、会員は、上述の社内管理体制が有効に機能しているかについて、営業部門及び内部統制部門から独立した内部監査部門(以下「内部監査部門」という。)をして、次の体制を整備しなければなりません。

(1)被監査部門におけるリスク管理状況等を把握の上、リスクの種類・程度に応 じて、効率的かつ実効性ある内部監査計画を策定し、定期的にこれを見直すこと。

(2)内部監査計画に基づいて効率的・実効性ある内部監査を実施すること。

(3)内部監査で指摘した重要な事項を、遅滞なく内部管理部門及び取締役会その他これに準ずる意思決定機関へ報告すること。

(4)指摘事項の改善状況を的確に把握すること。

「基本指針」と法令遵守

「基本指針」第4条によると、会員は、「基本指針」に基づく経営管理の一環として、財務及び経営上のリスクその他関連法令等に対応するためのコンプライアンス体制を構築するものとし、かかる体制を具体的に実践するための計画(コンプライアンス・プログラム)及び行動規範(倫理規程、コンプライアンス・マニュアル等)を策定しなければなりません。

次回は認定協会のほかの基本規則の詳細を紹介します。

(次回へ続く)