翁 道逵 ベリーベスト法律事務所パートナー(中国弁護士)
日本の仮想通貨に関する法制度ガイド その23

今回は「苦情処理及び紛争解決に関する規則」(以下「規則」という。)及びその細則の要点を紹介します。この規則は総則、苦情等への対応、苦情等の解決支援という3章計17条により構成され、その細則は計10条により構成されます。

規則の目的

この規則は、会員の行う仮想通貨関連取引に対する利用者等からの苦情及び紛争の解決及び処理に関し必要な事項を定め、その迅速かつ適正な解決を図ることにより、利用者等の利益の保護を図るとともに、業務の健全な発展に資することを目的とし、その細則は、「規則」第3章の施行に伴い、苦情及び紛争(それぞれ規則第2条において定義する「苦情」及び「紛争」をいい、併せて「苦情等」という。以下同じ。) の解決及び処理を行う業務の実施のために必要な事項を定めることを目的とします。

苦情等への対応

この規則の第4条によると、会員は、利用者から業務に関する苦情等の申出がなされた場合に対し、以下 の内容を含む苦情処理態勢を構築します。
(1) 苦情等に対し迅速かつ適切な処理、対応ができるよう、苦情等に係る担当部署及び処理手続の制定

(2) 利用者が簡便かつ容易に苦情等の申出ができるよう、苦情等窓口の充実化

(3) 苦情等の内容が経営に重大な影響を与え得る事案であれば内部監査部門や経営陣に報告する等、事案に応じ必要な関係者間で情報共有が図られる体制

(4) 苦情等申出を行った利用者に対し、対応状況についての説明等、適切なフォローアップがなされる態勢

(5) 苦情等の内容は、正確かつ適切に記録、保存されるとともに、蓄積と分析を行うことによって、勧誘態勢や事務処理態勢の改善、再発防止策の策定に十分活用される態勢

また、会員は、仮想通貨関連取引に係る業務の利用者から、協会に対して苦情解決の申出がなされ、協会から苦情の内容の通知を受けた場合、以下の対応を行います。

(1) 苦情に対する迅速な処理

(2) 協会から文書若しくは口頭による説明を求められ、又は資料の提出を求められた場合は、速やかな提出

(3) 苦情に対する処理結果について、協会への報告

さらに、会員は、仮想通貨交換業者が行った利用者の保護に欠ける行為に関する情報その他利用者の利益を保護するために必要な情報として以下のものを取得したときは、これを協会に報告します。

(1) 法第 63 条の 2 の登録を受けないで仮想通貨交換業を行っている者を知 ったときは、その者及び当該者が行う仮想通貨交換業に関する情報

(2) その他利用者の利益を保護するために協会が必要と認める情報

会員に対する苦情等の処理

その細則の第4条によると、事務局は、苦情等の申し出を受け付けたときは、当該申し出に係る会員に 苦情等の申し出の内容を口頭若しくは文書により連絡し、その迅速な処理を行うよう求め、また、当該申出人にもその旨連絡します。

前項の場合において、事務局は、規則の関係規定に基づき、当該会員に対し、文書若しくは口頭による説明又は資料の提出を求めることができます。事務局は、規則の関係規定に従い、当該苦情等の処理の結果に関し、当該会員に対し口頭での報告を求めるほか、調査票により文書での報告を求めることもできます。

事務局は、申し出を受け付けた苦情等で、法令等に抵触又は抵触のおそれの ある重大な苦情等と判断されるときは、当該苦情等の処理につき、理事会に諮るものとし、事務局は、前項の処理を行うに当たっては、当該会員から事情を聴取するものとします。      
                 
  (次回へ続く)