翁 道逵 ベリーベスト法律事務所パートナー(中国弁護士)
日本の仮想通貨に関する法制度ガイドそ の21

今回は「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関する規則」の要点を紹介します。この規則は総則、リスク管理、利用者管理、取引時確認等、確認記録及び取引記録、疑わしい取引、業務態勢、体制などという計8章41条により構成されます。

法令等の遵守

この規則第3条によると、会員は、仮想通貨交換業務を行うに当たり、本規則のほか犯罪による収益の移転防止に関する法律(平成 19 年法律第 22 号)その他マネロン・テロ資金供与対策に係る法令諸規則を遵守しなければなりません。会員は、その業務を行うに当たり、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン(平成 30 年 2 月 6 日金融庁)記載の「対応が求められる事項」を実施するとともに、「対応が期待される事項」の実施に努めなければなりません。

リスクの特定

この規則の第4条 によると、会員は、以下のようにリスク管理を行う必要があります。
(1)会員は、リスク評価に当たり、取り扱う仮想通貨や取引形態、国・地域、利用者の属性等のリスクを包括的かつ具体的に検証し、自らが直面するマネロン・テロ資金供与リスクを特定しなければなりません。

(2)前項の包括的かつ具体的な検証に当たっては、国によるリスク評価の結果等を勘案しつつ、自らの営業地域の地理的特性や、事業環境・ 経営戦略のあり方等、自らの個別具体的な特性を考慮しなければなりません。

(3) 国・地域について検証を行うに当たっては、金融活動作業部会 (Financial Action Task Force on Money Laundering[FATF]) や内外の当局等から指摘を受けている国・地域も含め、包括的に、直接・間接の取引可能性を検証し、リスクを把握しなければなりません。

(4)新たに取り扱う仮想通貨や取引形態及び新たな技術を活用して行う取引その他新たな態様による取引を行う場合、当該仮想通貨等の利用者への提供前に分析を行い、マネロン・テロ資金供与リスクを検証しなければなりません。

(5)マネロン・テロ資金供与リスクについて、経営陣の主体的かつ積極的な関与の下、関係する全ての部門が連携・協働し、リスクの包括的かつ具体的な検証を行わなければなりません。

(6)会員自らの事業環境・経営戦略等の複雑性も踏まえて、取り扱う仮想通貨及び取引形態、国・地域、利用者の属性等に関し、リスクの把握の鍵となる主要な指標を特定し、当該指標についての定量的な分析を行うことで、自らにとって重要なリスクの高低及びその変化を適時・適切に把握することに努めなければなりません。

(7)一定量の疑わしい取引の届出がある場合、単に法令に従い届出等を行うにとどまらず、届出件数及び金額等の比較可能な定量情報を分析し、部門・拠点間等の比較等を行って、自らのリスクの検証の実効性の向上に努めなければなりません。

疑わしい取引管理

この規則によると、会員は、利用者の属性、取引時の状況その他会員の保有している具体的な情報を総合的に勘案した上で、疑わしい取引の該当性について適切に検討・判断し、法律に基づく義務を履行するほか、疑わしい取引の届出状況等を自らのリスク管理態勢の強化にも必要に応じ活用しなければなりません。

また、会員は、その業務内容に応じて、IT システムや、マニュアル等も活用しながら、疑わしい利用者や取引等を検知・監視・分析しなければならず、会員は、実際に疑わしい取引の届出を行った取引についてリスク低減措置の実効性を検証し、必要に応じて同種の類型に適用される低減措置を見直さなければなりません。

さらに、会員は、疑わしい取引の届出を複数回行うなど、疑わしい取引を契機にリスクが高いと判断した利用者について、当該リスクに見合った低減措置を適切に実施しなければなりません。
次回へ続く