日本の仮想通貨に関する法制度ガイド その20

今回は「証拠金取引に関する規則」の要点を紹介します。この規則は総則、証拠金、ロスカット取引、取引価格、態勢整備などという計5章18条により構成されます。

業務開始の届出

この規則第2条によると、会員は、証拠金取引を行う場合には、次の各号に掲げる書面を、あらかじめ協会に提出しなければなりません。

(1) 証拠金取引を開始する旨及び開始予定日、証拠金取引の対象となる仮想通貨(以下「対象仮想通貨」という。)又は対象仮想通貨の指数(以下「対象仮想通貨指数」という。)、証拠金率その他利用者との取引方法及び取引条件を記した書面

(2) 証拠金取引の業務方法を記した書面

(3) 証拠金取引により生ずるリスクの分析結果を記した書面

(4) 証拠金取引により生ずるリスクの管理方法を記した書面

(5) 対象仮想通貨の過去の価格変動及び取引量の推移に関する資料

(6) 参照又は準拠する仮想通貨の現物取引価格のデータソースに関する資料

(7) 証拠金率、ロスカット取引を実施する基準の決定に関する資料

(8) 証拠金取引に伴い利用者に交付する書面

(9) 証拠金取引に関する広告の写し

(10)その他協会が提出を求める書面又は資料

会員は、対象仮想通貨又は対象仮想通貨指数を追加する場合には、前項第3号から第10号までの書面を作成し、あらかじめ協会に提出しなければなりません。

当初証拠金及び追加証拠金

この規則の第6条 によると、会員は、証拠金取引を開始する場合には、利用者から、当初証拠金額を超える証拠金の預託を受けなければなりません。会員は、この規則による計算の結果、利用者の実預託額が維持証拠金額を下回ることを確認した場合には、速やかに次の各号のいずれかの措置を講じなければなりません。

(1) 利用者の保有する建玉の清算。この場合において、会員は、利用者に対して、建玉の清算の結果(清算額又は清算に要する仮想 通貨の数量、清算方法及び清算期限を含む。)を、書面又は電磁的方法により速やかに通知しなければなりません。

(2) 維持証拠金額と実預託額の差額以上の証拠金の追加徴求(以下、 追加される証拠金を「追加証拠金」という。)。この場合において、会員は、利用者に対して、追加証拠金を預託する必要がある旨及びその預託額並びに納付期限を、書面又は電磁的方法により、速やかに通知しなければなりません。

会員は、前項第2号に基づき通知した納付期限までに利用者から追加証拠金の預託が行われなかった場合には、速やかに当該利用者の保有する建玉を清算しなければなりません。この場合において、会員は、利用者に対して、建玉の清算の結果(清算額又は清算に要する仮想通貨の数量、清算方法及び清算期限を含む。)を、書面又は電磁的方法により速やかに通知しなければなりません。

ちなみに、 追加証拠金の納付期限は、原則として2銀行営業日以内としなければなりません。

誘導禁止

この規則によると、会員は、理由の如何を問わず、利用者の証拠金取引の注文を特定の方向に故意に仕向けてはなりません。会員は、利用者の証拠金取引の注文を特定の方向に仕向けることを目的として、利用者に有利な条件を提示し、証拠金取引を行わせてはなりません。

また、委託者による取引の関与も禁止され、会員は、証拠金取引に関し、他の者に取引価格若しくは注文又は約定数量の操作を依頼してはなりません。ただし、マーケットメイク方式取引により証拠金取引を行う場合であって、会員と契約関係にあるマーケットメイカーにより適正に取引価格が提示され、約定処理がされる場合を除きます。
次回へ続く