ベリーベスト法律事務所パートナー(中国弁護士)
日本の仮想通貨に関する法制度ガイド その18

今回は「不適正取引の防止のための取引審査体制の整備に関する規則」の要点を紹介します。この規則は総則、体制の整備、取引審査、不適正取引、協会報告などという計5章10条により構成されます。

規則の目的

この規則は、会員が行う仮想通貨の売買等の不適正取引を防止するための取引審査(以下、「取引審査」という。)に係る体制(以下「取引審査体制」という。)を整備するに当たり、社内規則の制定その他の必要な措置を定めることにより、取引審査体制を整備し、もって、仮想通貨市場の公正性、透明性を図るとともに、会員の利用者保護を図 ることを目的とします。

社内規則の制定

この規則の第2条によると、会員は、利用者による仮想通貨の売買等に対する管理に関して、次の各号に掲げる事項について規定した社内規則を定めなければなりません。

(1)不適正取引に該当する取引の類型に関する事項

(2)取引審査の業務を担当する部門並びにその権限及び責任に関する事項

(3)利用者の取引動向及び取引動機等の的確な把握に関する事項

(4)取引審査を行うに当たり参考とすべき情報に関する事項

(5)取引審査の対象となる利用者又は取引の抽出に関する事項

(6)利用者又は取引に対して行う取引審査に関する事項

(7)取引審査の結果に基づく措置に関する事項

(8)その他必要と認められる事項

取引審査体制の確保

この規則によると、会員は、第2条で定められた社内規則に基づき、適時、モニタリング(取引審査の対象となる仮想通貨、取引手法、取引形態、投資意向及び投資経験等に関する調査をいう。)を行い、利用者の売買動向及び売買動機等の的確な把握に努めなければなりません。会員は、役職員に対して、第2条で定められた社内規則の周知徹底を図るものとし、仮想通貨の市場及び仮想通貨の売買等の実態に応じて、定期的にこの規則で定められた社内規則の内容を検証の上、その内容を見直すこと等により、取引審査体制の実効性を確保しなければなりません。

協会報告

会員は、この規則で定められた取引審査を行った結果、当該利用者に係る取引が不適正取引のおそれがあると認識した場合には、その取引審査結果及び利用者に対して行った措置の内容について、速やかに協会に報告しなければなりません。会員は、この規則に基づく取引審査の結果、会員及び役職員による不適正取引が判明した場合には、その取引審査結果及び不適正取引の内容について、直ちに協会に報告しなければなりません。

ちなみに、会員は、不適正取引に関し、協会から説明又は報告を求められた場合には、正当な理由なく、これを拒否してはなりません。

次回へ続く