翁 道逵 ベリーベスト法律事務所パートナー(中国弁護士)
日本の仮想通貨に関する法制度ガイド その15

今回は「利用者の管理及び説明に関する規則」の要点を紹介します。この規則は総則、口座開設手続き等、書面の交付等、説明事項、業務管理などという5章計27条により構成されます。

 

規則の目的

この規則は、会員が利用者と仮想通貨の売買等その他利用者保護を図る必要のある仮想通貨関連取引を行うにあたり、利用者の管理及び利用者への説明等の業務に関し遵守すべき事項を定めることを目的とします。

 

取引開始基準

この規則の第2条 によると、会員は、利用者との間で仮想通貨関連取引を開始するための基準を定め、当該基準に照らして利用者との取引の開始の可否を判断しなければならず、当該取引開始基準は、顧客の投資経験、顧客からの預り資産その他会員において必要と認める事項について定めなければなりません。

また、上記にかかわらず、会員は、特段の事情がない限り、未成年者を対象として証拠金取引を行ってはならず、会員は、法定代理人の許可なく、未成年者である利用者との間で仮想通貨関連取引を行ってはなりません。

ちなみに、会員は、取引を判断する能力に欠けると認められる利用者との間で仮想通貨関連取引を行ってはなりませんが、成年後見人など当該利用者の行為を代理する者の指示等に従い取引を行う場合を除きます。会員は、高齢者との間で仮想通貨関連取引を行う場合には、当該高齢者の取引に対する理解及び知識、判断力その他取引を適切に行うために確認を要する事項を確認の上、高齢者の能力に応じた取引を提供しなければなりません。

 

リスク等の説明

この規則によると、会員は、利用者との間で仮想通貨関連取引を開始するにあたって、次の各号に掲げる事項その他当該仮想通貨関連取引によって生じ得るリスクついて、あらかじめ利用者に説明しなければなりません。

(1) 仮想通貨は法定通貨ではないこと。

(2) 取引価格の変動により仮想通貨の価値が著しく減少する可能性があること。

(3) 仮想通貨の移転の仕組みの破たんその他の理由により無価値となる可能性があること。

(4) 需要又は供給の不足により売買が円滑に行えない場合があること。

(5) 国・地域における法令その他の規制により、当該国・地域において利用又は保有が制限されることがあること。

(6) 暗号技術を用いて移転を記録する仮想通貨の場合、暗号化されたデータを復号するための情報を喪失した場合には、他者に移転することができず、その価値が失われること、及び当該情報を他者に知られた場合には、利用者の意思に関わらず移転されるおそれがあること。

(7) 会員が倒産した場合には、利用者から預託された金銭及び仮想通貨が会員の倒産財団に組み込まれ、利用者財産の全部又は一部を利用者に対して返還できない可能性があること。

(8) 会員が盗難その他の理由により利用者から預託された仮想通貨を紛失し、利用者への補てんを行わなければならない事態が生じた場合、会員の財政が破たんし、利用者に十分な補てんを行うことができない可能性があること。

(9) 災害、公衆回線の通信障害、仮想通貨の価値移転記録の仕組みにおける記録処理の遅延その他会員の管理し得ない事情により生じた利用者の逸失利益について、会員はその責を負わないこと。

(10)価格変動により損失が生じるおそれがある場合にはその旨、及び価格変動を生じさせる主な要因。

さらに、この規則において、取引内容説明、苦情受付・紛争解決等に関する説明、禁止事項の説明なども詳細に規定されています。

(次回へ続く)